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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー首都を目指してー
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48.早朝の騒動

ーーー商隊の皆さんと別れてから一週間と一日。

本日、ついに鉱山の町『スルース』を旅立つ事となりました。


………しかし、私ことエルキュールは本日ドワーフのジーリさんと言う方がお話にいらっしゃると言う事で、宿泊所の入り口でソワソワと待っていました。

ーーー暫くすると、若いマッシュルームヘアの方がやって来ました。

…一体何のお話なのでしょうか?

ドキドキしながら言葉を待っていると、目の前まで歩み寄って来たジーリさんが、私の腰を引いてその口を開きました。


「やぁエルキュールさん。素敵な朝ね?この町でこんなに澄んだ空気が吸えるのはこの時間位な物だよ。…そう、まるでエルキュールさんの瞳の様にとても澄んだ綺麗な空気だわ。そうそう!それはそうと、ご飯はまだ?良かったらウチがご馳走するけど。好き嫌いは有る?無い?ウチはどんな物でもオーケー、基本エルキュールさんに合わせるから、何でも言ってちょうだい?とりあえずそこのお店に入りましょうか。さ、お手をどうぞ、お嬢さん?」





捲し立てられました。




ーーーいや、待ってください。

え?少しお話をして終わりなのでは?

ーーーと言いますか、私達はもうすぐ出立するので余り時間が取れないのですが…

「あの…ジーリさん?」

「あら、名前覚えてくれたんですね?嬉しいわ。ささ、こんな所で立ち話も何ですし、暖かいお店で今後のお話をしましょう?」

「いえ、あの…私達、もうすぐ出立するのですが…」

「ふふふ、照れなくってもいいじゃない。ウチ、初めて見た時からアナタの事が気になってたのよ。でもほら、エルキュールさんってどこか見ていて危なっかしい所が有るじゃないですか?だから様子見て、ウチに相応しいと感じたら想いを伝えようと「ジーリさん!!」


ーーーー空気が凍り付きました。

ジーリさんの瞳が冷たく感じ始めました。

「あの…私達、もうすぐ旅立つんです。………ですから、用件があるならここで言ってください…」

私が目を逸らしながら言うと、………溜め息が聞こえました。

………次にチッ…と、舌打ちが聞こえました。

「エルキュール=グラムバルクさん?………ウチの用件は、アナタなのよね。」

「………ですから、どういう」

「ヴォルフガング=フォン=グラムバルクの娘さん?…まだ分からないのかしら?」

………いつの間にか私はワイヤーの様な物で締め付けられていました。

「ぐぎっ!?…じい…り…ざん………これはどういう…?」

「前勇者様の娘さんが、どうしてこうなるのか想像も付かないのかしら?」

「ひぎっ!!」

私を締め付けるワイヤーは、段々ときつくなり、意識が遠のいて行きます。

「………ウチの得意魔法はね?認識阻害レコグニション・インヒビション。………ウチがドワーフ?汚らしい土精霊如きと一緒にされるなんて、反吐が出るわ。」

………この………ひとは………

「エルキュールさんを捕らえるのがウチの仕事なんだけど…。いい身体してるわよねぇ?ア・ナ・タ」

ひっ!!

「ねぇ、エルキュールさん…ぐちゃぐちゃに壊される前にウチに遊ばせてよ?いいでしょ?」

そう言って私の胸を揉み始めますが、最早意識が薄れて何も感じませ…


「面白い事をしているな。俺も混ぜてくれ。」



ーーー澄んだ空気の中で、凛と澄み切った声が聞こえたかと思うと、私の身体は解放されました。

ゲホッゲホッと大きく咽せてしまいましたが、顔を上げるとそこには…

私を護る様にジーリさんとの間に割って入るセシルさんが立ちはだかって居ました。





「ーーーーーーーッッッ!!!!ウチの!!!ウチの腕ぎゃぁぁがああああぁぁぁああああ!!!!」





悲痛な叫び声に目を向けると、ジーリさんの片腕の肘から先が無くなってました。

私はこの光景を見て、胃から込み上げる物が有りました。


「なんだ?自分のワイヤーだろう?自分の物を粗末に扱うなよ?」

「きさまきさまきさまきさまきさまぁ!!!」

「ほぉ?立派な語彙力だ。実に耳障りでいい。」

セシルさんは剣すら抜いてません。どうやらジーリさんのワイヤーを利用して腕を切った様ですが…。

「悪いな、エルキュール。見極める為に少し遅れた。それから首に絡んでいた糸を拝借した。」

んん?名前を初めて呼んでくれた気がします。………そして、私の首にワイヤーが掛かってたらしいです。

道理で苦しくて意識が遠のいた訳です。




「無視とはありがたいわね……死ね!!」




ジーリさんの声が聞こえた時には既にセシルさんの真上から、岩盤が降り注いで来ました。

そして降り注いだ岩盤は、セシルさんの身体を押し潰しました。




「ヒッ!?…いやああああああああああああああああ!!!」




私の悲痛な叫び声は周囲に木霊しましたが、側に寄って来たジーリさんが、ワイヤーで止血をしながら私の口に靴を捻じ込みました。

「お口はチャックよ?エルキュールさん?………あのクソったれが邪魔をしなきゃ、とっくに仲間達に引き渡せてたのに…クソっ!!クソッ!!」

ジーリさんは岩盤を靴の裏で蹴りますが、動く気配が有りません。

………私は声も出せずに泣き崩れました。

「クソッ!!…声が響き過ぎたわね?…ほら、行くよ、エルキュールさん。」

私の髪を引っ掴み、無理矢理立たせ様とするジーリさんでしたが、その前に私は靴を吐き捨て、ナイフを抜いて震える手でジーリさんに突き付けました。

以前、シャリアさんに狭い場所での護身用として持たされたナイフです。

一生懸命に睨み付けますが…

「はっ!そんなオモチャでどうする気なの?エルキュールさんって意外とお馬鹿だったのね?」

ジーリさんの顔は歪んでました。

構わずジリジリと近寄るジーリさんでしたが、予想外の事が起こりました。

ジーリさんの身体は真横に吹き飛び岩盤に叩き付けられました。


「無視とはありがたいな…。だが出来れば仲間の居所を滑らせて欲しかったのだが…」


セシルさんが蹴り飛ばした格好のままで言いました。

………私は囮にされた様なのですが、それでも助かりました。

「あっ…あの…セシルさん…」

「ふっ、殺しては居ない。以前、勇者に叱られたからな。」

…そうではないのですが、そうですか…。アリシアがそんな事を…。

「ありがとうございます…助けてくださって…」

私は心からのお礼を言いましたが、セシルさんは私を制止しました。


「自惚れるんじゃあねえぞガキ共!!」

岩盤に叩き付けられた筈のジーリさんが居ませんでした。

屋根の上に居ました。

「チッ、人が集まって来たわね…。ガキ共、この借りは高く付いたからな!皆纏めて殺して犯しまくってやるから覚悟しておきなさい!クソッ!!」

ジーリさんは捨て台詞を残してそのまま去って行きました。

切られた腕は周囲には在りませんでした。




ーーーどうやら助かったみたいです。




ーーーーーーー

ーーーーー




「エルキュール!!無事!?」

アリシアが今更のこのこやって来ました。私を護ると誓って下さった勇者様は何故助けに来てくれ無かったのでしょうか?

「エルおねえちゃん…ばちばちってしたかべ、こわせなかったの…ごめんなさい」

「結界が張られててね、宿場からは出られないし、セシルは飛び出して行くし…どうしようも無くって。でもエルキュールが外に居るって知ってたのに………くそっ!わたしはマヌケだよ!!」

………結界まで張ってたとは、本気度が予想と違い過ぎました。

しかし、それでも勇者モードが在るアリシアに打ち破れない結界を壊して入って来たセシルさんの実力が底知れません。

………んん?何かが引っ掛かります。

「アリシア嬢は病み上がりだ。本気が出せない以上仕方ない。………が、シャルロット、貴公はアレを使えば壊せたのではないか?」


………アレ?


「………つかうと、しんじゃうから………アリシアちゃんが………」

………シャルロットちゃんが使うとアリシアが死ぬアレ…!?

…………一体どの様な隠し球を持ってるのでしょうか?


「でも、聞きたい事は沢山有るけど、セシル!ありがとう!………エルキュールを護ってくれて…」

アリシアは悔しそうにお礼を言いましたが、それでも私が助かった事が嬉しいのでしょう。キチンとお礼を言いました。

「私も…助かりました、改めてありがとうございます、セシルさん。」

「シャルもうれしいよ!…ありがとうセシル…おにいちゃん」

私達にお礼を言われて、くるりときびすを返してセシルさんは言いました。


「………ふっ、騒ぎが大きくなった。…疾くこの場を離れるべきだろう。おなご達よ。」




「おなご達にこんなに囲まれるの、生まれて初めてなんだが?」

鼻血をぼたぼたと垂らしながら言うセシルさんは、やはり格好が付きません。



「………でも、アリシア?」

「うん?」

「セシルさんが結界を壊したのなら、そこから入れば良かったんじゃ…」

「ううん、セシルはね?」



「結界を無理矢理通り抜けて入ったんだよ。」



ーーーーー

ーーーーーーー

アホカッコいいセシルくんホルホル回

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