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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー エルキュールの初仕事 ー
46/138

44.雪解けのシャルロット



ーーー



「それじゃあエルちゃん、シャルロットをお願いねん?」



私、エルキュール=グラムバルクは漆黒の剣士セシルさんとアルビノの少女シャルロットちゃんと一緒に、町の出口で旅立つシャリア商会を見送ってました。

シャルロットちゃんが私達と共に残ると言い出した時はとても驚きました。



何故シャルロットちゃんが残る事になったかと言いますと…



ーーーーー

ーーー


「シャルも残る。」


「シャルロットぉ〜?アンタなぁに言ってんのかしらぁ?」

シャリアさんが酷く固まった表情で言いました。両目が見開いてます。怖いです。

「シャルね…アリシアちゃんをたすけたい…まもりたいの」

シャルロットちゃんが凄く真剣な表情で言いました。ですが身体は酷く震えてます。

「あのねぇ、壺から出たらマトモに人前を歩けないアンタが、ここに残ってどうすんのよ。どうやってあたし達に追い付くつもり?」

「がんばるもん…」

「口だけなら誰でも言えるのよ?エルちゃんもアリシアちゃんも、すぐにここを発つのよ?それともアンタ、ここで一人で暮らす気?」

「アリシアちゃんといっしょなら…できるんだもん」

「ダメよ、ワガママ言わないで姉ちゃんと一緒に来なさい!「やだ!」

「シャル…「シャルもうなにもできないのはやだもん!!」

「おねーちゃんだってアリシアちゃんだって、シャルが助けるんだもん!!」


……パンッ………と、乾いた音が鳴りました。


シャリアさんがシャルロットちゃんの頰を叩いた様です。私はハラハラとしたまま見守ってました。

しかし、シャルロットちゃんはそれでも泣きそうになりながら、最愛の姉を見詰め続けました。

………すると、シャリアさんは何も言わずに馬車の中へと乗り込みました。

シャルロットちゃんは地面に目線を落として震えています。

そんなシャルロットちゃんを、シェリーおばさまが優しく抱きしめました。


「偉かったねぇ、シャルロットちゃん。アンタが自分から言い出したのは、おばちゃん初めて見たよ。」

「………でもねぇ?お姉ちゃんの気持ちも考えてやんなさい?」

「………うん」

「それでもアンタが勢いだけじゃなくて、しっかり考えた末に残りたいなら…おばちゃんは応援したげるからね?」

「………うん」

「ほら、美人さんが台無しよ?今日はご飯食べたらもう休みなさい?」

「ありがとう…おばちゃん」





ーーーーー

ーーー





そんな訳で、今朝、改めてシャルロットちゃんが想いを告げると。

「本当に仕方ない子ねぇ。………まぁいいわ?残りたいなら好きにしなさい?…でもぉ、死んだりしたら………姉ちゃん皆ぶっ殺すから、自分の命にしっかりと責任を持ちなさいよ?」

………と、シャルロットちゃんを優しく抱きしめました。物騒な事を言いながら。



「それとぉ、エルちゃんエルちゃん?」

私が呼ばれました。手招きされたので近寄ってみますと、耳打ちされました。

「シャルロットの事、よろしくねん?………あの子、エルちゃんの事が特別嫌いなわけじゃ無いから、この際打ち解けちゃいなさいっ!」

「そうなんですか?………でも」

シャルロットちゃんは私にべーってしました。これで嫌われて無いんですか?


「それからこれ!アリシアちゃんへの報酬ねん?…後、オジサマから届いた武器を渡しておくわん。」

武器や報酬をポイポイと渡された私は慌てて受け取りました。

………結構ズッシリ重いのですが?

「腐蝕竜の素材って結構需要あるのよ?」

「ーーー回収して来たんですか!?」

「いつでもどこまでも流通がモットーのシャリア商会よん。」

商魂逞しいやら何やら…。


「セーシールーくーん?」

「なんだ?魔王シャリア

「誰が魔王よ!失礼しちゃうわ!」

「ふっ…我を通せる力を持った貴公には似合っ「いいから本題よん?」

「アッハイ…」

「とりあえず十日分の旅費を渡しておくから、足りなくなったら稼いでねん?後で請求してくれたらちゃんと支払うから、細かく帳簿を付けときなさい?」

「うむ、了解した。」

「それから…ーーー」




ーーーーーーー

ーーーーー



そしてお昼頃、今に至ります。

………私はシャルロットちゃんの手を引いてアリシアを休ませている宿へと向かいますが。

シャルロットちゃんはやはり私を拒絶して来ます。ーーー私が一体何をしたのでしょうか?

漆黒の剣士さんはとても静かに私達に着いて来ました。


………少し経って、私達はアリシアの待つ宿に到着しました。

私達が借りた部屋に戻ると、アリシアはスヤスヤと静かな寝息を立てて眠ってました。

どうやら今の所発作は起きてない様子です。

シャルロットちゃんも私も、アリシアの側へと寄り添いました。セシルさんは外で見張りをしてくれてます。



ーーー今のアリシアを見ていると、三年前までの自分を見ている様で、とても心がざわつきます。



…私の顔色が変わった事に気付いたのか、シャルロットちゃんが手を握ってくれました。

………シャリアさんが言う事もあながち嘘でも無いのかも知れませんね?

…私は大丈夫だと伝えると、シャルロットちゃんの頭を撫でました。

シャルロットちゃんは少しビクッと震えたものの、意外にも素直に受け入れてくれました。


…私はシャルロットちゃんが何故あれ程までに私のことを嫌ってたのかが気になります。

単純に最愛の姉が私に異常なまでに執着してる事が気に入らないのでしょうけど。…後、アリシアの件でしょうか?

………ですが、根本的な事が他に有るなら、………私は受け止め切れるのでしょうか?


それでもきっと、本人が話してくれるまでは踏み込めません。私はそんな人間なのです。



ーーーーーーー

ーーーーー


「ふあぁぁ…。ん…おはよ、エルキュール、シャルちゃん………あれ?シャリアさん達、まだ行ってないの?」

呑気な声で聞くアリシアに水薬入りの水差しを差し出しながら、私は答えました。

「あのね?シャルロットちゃんは残ったの。アリシアが心配だからって」

「え?そうなんだ?シャルちゃん、大丈夫?」

「うん…シャルね、アリシアちゃんをまもるの。アリシアちゃんもシャルを頼って欲しいなぁ…」

そう言うシャルロットちゃんにアリシアは嬉しそうに答えました。

「うん!………駄肉よりは戦力になりそうだから、頼りにしてるよ!」

………私をチラッと見て来るんですが?え?私そんなに頼りないんですか?

シャルロットちゃんもちょっとドヤってますよ?

ですが空気を壊さないように私は口を噤みます。

ふふふ、ホロリと涙が零れました。




ーーー




私はりんごをうさぎさん型にしてアリシアに差し出します。

アリシアはそれを食べてます。………と、忘れる所でした。


「アリシア?これ、シャリアさんがあなたに報酬って。」

私はゴソゴソと服の下から取り出した報酬が入った袋を差し出しました。

「うん?あぁ、ありがとう。」

アリシアはそれを受け取ると、自分の荷物に混ぜ込みました。詳細は確認しないのでしょうか?

「セシルもシャルちゃんも一緒って事は、シャリアさんの仕事は継続中って事だよね?」

「えぇ、シャルロットちゃんはともかくセシルさんはシャリアさんの所を抜けてでも私達を守るつもりだったみたいよ?」

「ふーん。」

セシルさんの事はどうでも良いのでしょうか?それとも予想の範囲内だったのでしょうか?

「……ごめんね?エルキュール、私が一人で突っ走ったから迷惑掛けて…」

弱々しく言うアリシアの身体を包み込むように抱き締めて言いました。

「…大丈夫よアリシア、私が着いてるから、心配しないで?」

アリシアの耳元で囁く私に、アリシアはふにゃりと顔を弛めました。

「シャルもいるよ?忘れてないよね?」

「うん、シャルちゃんもおいで?この駄肉、抱き心地だけは最高だから。」

おいこら赤茶猫娘。だけとは何ですか、だけとは。

………しかしまぁシャルロットちゃんが来てくれるのは大歓迎です。

私がドキドキしながら片手を広げると…。

「………うん、……アリシアちゃんが言うなら…」

はい、天国ですか?かわいいアリシアと、かわいいシャルロットちゃんが私に抱っこされちゃってますよ?

二人共私の胸に顔を擦り付けてます。かわいいです。

アリシアはふにゃんふにゃんと甘える子猫の様に擦り付けてますが、シャルロットちゃんはと言うと………。

ビクビクと怯えてますが、それでも私に擦り付いてる様です。


「おかあさん…」


………おかあさん!?お姉ちゃんとかでは無く、おかあさん!?

私が十六歳で、シャルロットちゃんが十二歳だから、四歳差ですよ?おかあさんはちょっと老けて見られてるのかと、かなり落ち込みます。前世を合わせれば仕方ないですけど!!

………しかしながら複雑な気持ちですが、それを言う程無粋でも無いつもりですので、ここはグッと飲み込みました。

………しかしまぁ、シャルロットちゃんのお母様に容姿が似てるのですか。………それは確かに私を敬遠する理由になりますね。


「そんなに似てる?…私で良かったら甘えて良いのよ?私はシャルロットちゃんのお母様じゃないから…ね?」

私はシャルロットちゃんに囁いて撫でました。………すると

「………きいてたの?アリシアちゃんとのおはなし…」

シャルロットちゃんは驚いて両目を震わせてました。

「えっと、シャルロットちゃん達の目の前に居たのだけど、…気付いて無かったのね…」

シャルロットちゃんは複雑な表情をしてました。拒絶して突き飛ばそうとして来ました。

ですので、私は拒絶されようが構わずシャルロットちゃんの身体を包み込むように抱き締めました。背中を優しく優しーく撫でました。シャルロットちゃんに噛み付かれようが関係有りません。

アリシアには悪いですが、今はシャルロットちゃんにそうしてあげたかったのです。

………まぁアリシアは私の背中にしがみついてますが。


シャルロットちゃんはやがて諦めたのか、私の背中に両手を回しました。




「エルおねえちゃん…」



その言葉に、私は思わず顔を綻ばせました。





旅立てよ!!

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