表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー エルキュールの初仕事 ー
36/138

34.エルキュールの初仕事②



ーーーー私、エルキュール=グラムバルクの初めてのお仕事が始まりました。




最初のお仕事ですが…



「おいおい嬢ちゃん、あの狐目姉ちゃんなら一発で覚えちまうぞ?」

「………まぁいい、どうせ五日間だ、しっかりと働いて貰うぜ?嬢ちゃん。」


とか


「触るな!!」


怒鳴られたり…


「ちょっとこれ着てきてくれる?」


………渡されたのはビキニアーマーでした。………着ないといけないんですよね?……お仕事…ですから。



程なくして、私はビキニアーマーを着ましたが、素肌に直接水着の様に纏ってます。

金属は使用してないみたいですが、とにかくこれ恥ずかしいです無理です人前になんて出られません無理ですホント無理なんです何でピンクなんですか?無理です寒いんです今冬ですよ?許してくださいホント無理なんですぅぅぅ!!!



「エルキュールさーん?まだですかー?」



若いドワーフさんが私を呼びました



………ぐぎぎぃ………おじごどでずがら…いぎばずげど………




私はとにかく震えながら工房の扉から顔を覗かせました。ドワーフの皆さんが此方を見てます。

…………多分今の私の顔は、赤いやら青いやら半泣きやら…とにかく複雑な表情だと思います。


「おい嬢ちゃん、さっさと見せてくんねぇと調整出来ねぇだろ?」


工房の主人の…ゴルドーさんでしたか?…私を急かして呼びます。

あ、これ要するに鎧のモニターのお仕事なのですね?シャリアさんの嘘吐き、嫌いです。

………しかしまぁ早く終わらせないと、いつまでも着たままなので私は諦めました。半ばまろび出るように皆さんの前に出ると、ゴルドーさん以外のドワーフさん方はギョッとしてました。ひっ…とか言う声も聞こえて来ました。



………そう言えば、今まで驚く人が少なかったのですっかり忘れてましたけど………







私 の 胸 に は 星 蝕 者 に 穢 さ れ た 痕 が 残 っ て ま し た ね 。







黒く、ひずみの様に、歪なひび割れの様な傷痕が、星蝕者に汚染された証である事を物語ってます。

因みにゴルドーさんは坑道で既に確認して居たそうです。眉一つ動かしません。


別に他人に移るものではないのですが、あからさまに拒絶を示されると凄く心が痛みます。

………しかし、私の様子に気付いたのか、ゴルドーさんが言いました。


「オメェ等仕事仲間に何ビビってんだ?くだらねえ事くっちゃべって無いで仕事しろ仕事!」


ゴルドーさんの一括に工房内はシン…と静まり返りました。…すると少しして気恥ずかしい様な空気が漂い始めました。

私はおじさまに思わずキュンと来ました…。

やはりお父様みたいな渋い男性は不器用だけど優しさを秘めてるのですね?渋いおじさまは素敵です!抱かれても…おっと、それはアリシア専用ですが。


「あの、すみません…店長から引くなって聞いてたんですけど、いざ見るとやっぱりちょっと怖くて…」


丸い体型の親切そうなドワーフさん、アメスさん…でしたか?…が、私に気を遣ってくれました。


「あ、いえ…私はこの傷がどう言った物なのか余り知らないので…驚かせてしまってごめんなさい…」

「あん?嬢ちゃん、星蝕者について知らねぇのか?」

ゴルドーさんが言いました。私は素直に頷き返すと…。

「マジかよ、結構な常識なんだが、お嬢ちゃん箱入りかなんかか?今時の冒険者なら皆知ってるぜ?」

「あの…私は冒険者じゃ…」

「そうだったか?まぁいい、星蝕者ってのはなぁ…そもそもここ三百年位前から出始めたんだよ。」


………おじさまの話を纏めると、星蝕者とは、三百年内に目撃され始めた事。明らかに生命体を優先して攻撃を仕掛けて来る事。生物のみならず無機物も構わず削り取る様に食い荒らすとの事。見た目はどの個体も異形としか言えない事。倒すと必ずと言っていい程まるで空間その物を喰らう様に真っ黒な球体になって消滅してしまう事。

また、一部身体の部品等を落とす事も有るけれど、部位によっては衝撃に非常に弱く、まるでガラスの様に簡単に割れてしまう事。割れた部品は光の粒みたいに溶けて消える事。

でも残った部品にも様々な活用方がある事。そして…


「星蝕者は仲間を増やす為に生物に毒や呪いを撒く。嬢ちゃんも知ってるだろう?……奴等に毒を盛られたが最後、ガキを作ろうとすりゃ産まれたガキはみんな星蝕者になっちまう。」


「それからヒトの身体は奴等の毒にゃ耐えられんのだろうな…。早けりゃ四、五年。永らえても十年程度で毒に喰われておっ死んじまうんだったか…」



ーーーー私はその話を酷く青い顔で聞いてました。

…おじさまは余計な事まで言ってしまったかと頭を掻いて顔を逸らしましたが………私にコーヒーを淹れてくれました。不器用な優しさです。

他の皆さんも、とても気まずそうな表情でした。…憫む視線すら感じます。


「悪ぃな、お嬢ちゃんは当人だっつーのに、辛ぇ事言っちまって。」


「…………いえ、………覚悟はしてますから…」


強がりです。分かってます。だからこそ私はこうして旅に出たのです。

家は…お母さんやお父様には凄く会いたいです。それでも私はこの短い命を全力で走り切りたいのです。



………そうです、原点に帰りなさい!エルキュール=グラムバルク!私は恥ずかしいからとやりたい事から逃げ出す気ですか?

シャリアさんの紹介なのですから、間違いなくここでの仕事は私にとって、大切な事の筈です!

気合いを入れ直した私はコーヒーを一気に飲んで、熱さで涙目になりながらも、おじさま達に向き直りました。



「おじさま!皆さん!私、頑張りますから!よろしくお願いします!」


おじさまも、皆さんも互いに顔を見合わせて苦笑していましたが、気を引き締めた様子でした。

「おう!じゃあ早速そいつの着心地を教えてくれや!」



忘れてました、私は今、恥鎧姿ビキニアーマーでした。



ーーーーーーー

ーーーーー




「ツギ、コレ…タノム」

そう言って背の高いドワーフの………ゴーレムさんでしたっけ?…彼が渡して来たのは水を紡いで出来たアクアコートだそうです。凄いカタコトですよー?


「はい…着替えて来ますね?」

「そいつは透けるから下に何か着て来いよ。」


おじさまがフォローをして下さるのでとても助かるのですが………流石にあれから八時間程でしょうか?

着替えては脱いで、着替えては脱いで…を繰り返していると、流石に疲れます。

しかもたまに触って確認等もされるので、恥ずかしかったり色々な気持ちで一杯一杯なのです。


鉄の鎧は重いのも有りますが、身体に食い込むので、動くと痛い…等、私も感想を述べましたが、正直体力も膂力も無さすぎて虫の息です。

それでも気力だけで何とか続けていると…


「おい嬢ちゃん、今日はこいつで終わりだ。帰ったら明日も早ぇからちゃんと飯食って寝ろよ?」

………と、ゴルドーおじさまからのお達しでした。

私がぱああっと表情を明るくしますが、他のドワーフさん方はチッ…とか、舌打ちをしてた様に聞こえました。

………んん?まだ私を弄り足りなかったのでしょうか?


「誰だ今舌打ちした野郎は!!………っと、嬢ちゃん、コイツをあの狐姉ちゃんに渡してやってくれ。………例の件って言や分かる。」


ふむふむ、私はおじさまから何やらスクロールを受け取りましたが、まずは着替えましょう。

因みにおじさまは皆さんと殴り合いを始めました。騒ぎが扉越しに聞こえて来ます。

…………ふふふ、ナカガイイデスネー



ーーーーー

ーーーーーーー




私はおじさま達に挨拶をすると、預かったスクロールを落とさないように胸元に入れました。シャリアさん流です。

………しかしまぁ、実に濃い一日でしたが、なんて言いますか………。



シャリアさんの嘘吐き!!



………まぁ勝手に飛び付いて色々と期待をして、縫製関係かと思ってロクに確認せずに来たのは私ですし、折角のお仕事なのですからしっかりと働きましょう。シャリアさんの嘘吐き。

そう自分に言い聞かせて、家路キャラバンに着きました。




「ーーーったく、あの女狐め、とんだ素人をよこしやがって…」

「でもどの女性の方も嫌がる仕事を引き受けてくれたんです、貴重ですよ?」

「だよなぁ、みーんな店長にビビるか、嫌がって引き受けてくれないもんなー。」

「そうだよね、ウチの鎧も検証してくれたし、あの子は貴重だよ。」

「ソモソモ、ナゼ、コウボウニイレタ?」


どうやら皆気になる様で、視線はゴルドーへと集中しました。ゴルドーは答えます。


「いやな?あの女狐にやり込められたのは確かなんだよ…」



『オイオイ!約束と違うだろ!?なんでオレっちが嬢ちゃんの面倒を見なきゃなんねぇんだ!?』

『あらぁ?確かにオジサマは言ったわよぉ?「満足するまでオレっちの実力を見せてやる」ってねん。』

『いや、確かに言ったがよぉ…そりゃ素材回収の話で『あたしまだまだ満足出来ないのよぉ』

『オイ!耳元で言うんじゃ『オジサマの本気…魅せてちょうだぁい?ね?い・い・デ・ショ?』

『この女狐『あら酷い、あたしは単にあたしのエルちゃんに社会経験をさせてあげたいだけよん?』


『だからね、オジサマ?エルちゃんが満足出来る様にエスコートしてあげて欲しい訳よ。オジサマのテクで…ね?』


『ヘンな言い方するんじゃねぇやい!………ったく、あの嬢ちゃんの何がお前さんをそこまでさせるんだよ。』

『あら?気になるぅ?』



『…………ケッ、どうせはぐらかされちまう。………わーかった!あの嬢ちゃんはウチで預かる!!』


『ホント!?『ただし!』


『使いモンにならなきゃウチにゃ二度と踏み込ませねぇ。分かってるよな?』

『結構よん、きっとオジサマもエルちゃんをモノにしたくなるわよー?あげないけどぉ。』

『一々気持ち悪ぃ言い方するんじゃねぇやい!………まあ。そう言う事だ、サッサと帰って嬢ちゃんに伝えな?明日の昼からで良い。』



「ーーーったく、思い出すだけでムシムシして来やがる。」

「まぁ、店長が気に入ってたのは確かですねぇ。」

「だな!オレらのちょっかいにぜーんぶフォロー入れてたし。」

「子を持つ親の心境かな?」

「テンチョウ、オヤバカ」


「ウルセェな!!テメェ等もとっとと片付けて明日の準備しやがれ!!」





ーーーーーこうして、エルキュールの初日は無事に終わりを迎えました。



イイハナシカナー?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ