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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー エルキュールの初仕事 ー
35/138

33.エルキュールの初仕事①

ーーーーシャリアさんから突然の質問でした。



「エルちゃんって、お裁縫に興味ある方よね?」


私ことエルキュール=グラムバルクは、ここ数日間のドタバタでうやむやになってましたが、それこそが私が旅を始めた理由です。

興味全開です。


「はい!とても興味があります!!」


思わず詰め寄りました。シャリアさんは引く所か何故か嬉しそうに私の腰を抱いて片手を開いて言いました。まるでミュージカルスターの様です。


「あらあらそれは重畳ね!そんなエルちゃんにとっっっっっってもいいお仕事があるの!是非とも紹介したいんだけど、お願いしてもいいかしらん?」

「どんなお仕事ですか?」

「聞くより直接行ってみると良いわよん?きっとエルちゃんにとって、とてもいい経験になると思うわ。」


いつもより真面目な表情で言うシャリアさんに、私は思わず心が舞い上がりました。

場所は………と言うと、いつものおじさまの工房でした。

私はろくに話も聞かずに、早速とばかりに足を向かわせました。



ーーーーーーー

ーーーーー



「よう嬢ちゃん。昨日は戻って来ねぇからどうしたもんかと思っちまったぜ?まだやる事もあったのにな?」

凄くじろじろ見られてます。

きっと鎧を作る為に採寸等をするつもりだったのでしょう。

私は丁寧に謝罪を告げて、早速とばかりに本題について尋ねました。


「シャリアさんからお仕事を紹介されて来たのですが………何をすれば良いのでしょうか?」

「おう?聞いてねぇのか?……まぁ聞いちまうと嫌がって逃げるっつってたもんなぁ」

「逃げませんよ!…………逃げ………へ?」

「ま、話の前にまずは店側にまわってくれな?嬢ちゃんはまだ店は見てねぇだろ?」

「はい、シャリアさんにこちらを渡されただけでしたので。」

ーーーと、例のナイフを見せます。勿論鞘入りです。

前回の虫人間や星蝕者の件で、壊されずに無事に残ってたのはとても運が良かったと思います。


「おう!んじゃ、まずはうちの商品を見てくれや。」


私は店舗側に連れて行かれ、店内を見るとやはりと言いますか、小振りな剣から大きな剣。木製のハンマーや金属製の斧。弓と矢も様々な種類の物が揃い、子供から大人まで使えそうです。

とちかく見渡す限りの武器!武器!武器!

流石に武器を作る工房だと言う感想が第一。


次に視界に飛び込んだのは、武器に負けじと立ち並ぶ鎧でした。

金属製の物から革製の鎧。露出が多くなりそうな物や蛮族の方々が着てそうな毛皮の物。………魔術師のローブなんて物も有りますね。


他にも丸い盾に四角い盾、三角形や少し歪な形の物も大小様々です。

勿論兜や腕巻き、手袋、膝当てに脛当て、ブーツ状の物と、様々な素材で様々な防具も揃ってます。


流石に『ドワーフ工房』と周囲を挑発する様な看板を出してるだけあって、店舗も大きく広めで名前に負けないラインナップと言えるでしょう。


「いいか?お嬢ちゃんは客だ。客の目線で見てくれや。そうすりゃ欲しい物が見えてくるだろ?」


………難しい事を言いますね。

今私が欲しいのは、皆さんの足を引っ張らないように弓が欲しいのですが、きっとそう言う事ではないのでしょう。

うーん………細かく見ると装飾品もしっかりしてるんですよね。

………ですが、私は特別必要としてません。かわいいのは確かに欲しいのですが、今は装飾品より………んん?


私はちょこちょこと、とある一画に向かいました。


「これって…織物ですか?」

「ん?あぁ、織物だな。」

私が手に取った織物、それはとてもきめ細かくて、まるでシルクのようなツルツルとした手触りでした。

んー?寧ろシルクそのものの様に感じますが、何か少し違う様な…?何故でしょう?肌に馴染む感じ以上に、豪快な何かに暖かく包まれている様な…それでいて繊細な様な?


「ふむふむ……もしかしてこれ…おじさまの手製でしょうか?」

「っ!?そうだが…分かるのかい?」

え!?似合わな………コホン。

「お店に有ったので、おじさまが蚕から製錬したのかと…」

「いや、そうなんだが、普通こんな厳ついおっさんが繊細なもんを作るとは思わんだろう?」

ごめんなさい…心の中で謝りました。

「だから普通は都の職人から買い取ったか、工房を貸して手先の器用な種族に作らせたとか思うもんだが…なるほどなぁ。」

あー………そっちの可能性もあるんですね、全然全く欠片もなるほどじゃなくてごめんなさい。


「嬢ちゃん、なに複雑そうな顔してんだ?……まぁいい、オレっちに着いて来な!」

あれ?欲しい物の件はもういいのでしょうか?

「は…はい、よろしくお願いします…。」



ーーーーー

ーーーーーーー



ーーシャリアのキャラバンーー



「今頃はアリシアちゃんもエルちゃんも頑張ってる頃かしらねー?」


キャラバン内に呑気な声が響きます。声の主は、キャラバンの美人主人であるシャリアでした。


「まったくアンタって子は…気ばっかり遣っちゃって」

「あたしがキヲツカウ〜?なにそれギャグ?ジョーク?冗談?シェリー面白くなーい」

「おばちゃんはちゃんと分かってるからね?アンタは人一倍頑張り屋で人一倍優しい子なんだ。アリシアちゃんの事もエルキュールちゃんの事も、今後のあの子達の為なんだろう?」

「なーに言ってるのよ、シェリーったら。知ってるでしょう?あたしはあたしが一番楽しい事を、したい時にしたいだけすんのよ!変な事言い出したらもう年よ?」

「ホント素直じゃないねぇ、ま!何があってもおばちゃんはアンタ等の味方さ。アリシアちゃんもエルキュールちゃんも、ここに居る限りはおばちゃんの子供みたいなもんだよ。」


そう言って、シェリーはその膨よかな身体でシャリアを抱き締めました。シャリアは嫌そうなポーズを取りますが、狐の様な笑顔をシェリーに見せ付けます。

「ま、どう転がろうと、あたしはあたしの目的の為に邁進するだけよん!だっからあたしもせめてこのキャラバンだけは維持しなきゃだわ。」

「了解、社長!泣きたくなったらいつでもおばちゃんの胸を貸すから好きに頼んなさい。」

「うんうん、その時が来るまでとっとくわ!アリガト、シェリー!」


スルリとシェリーの羽交い締めの様な抱擁を抜け出し、シャリアは商品を売り付けに町へと向かいました。



ーーーーその心に野心を秘めて。楽しげに。今日も狐は町を巡ります。







ーードワーフ工房ーー




そして再びドワーフ工房なのですが、エルキュールの前には五人のドワーフが立っていました。

一人は先程から案内を受けていたおじさまなのですが。


「まずアレだ、今更だが自己紹介からだな。オレっちはこの工房の主人、ゴルドーだ!」

ふむふむ、ゴルドーさんですね?

「そこの丸いのはアメス、茶色の髭面がズィール、若ぇのがジーリで、ノッポがゴラム。覚えたか?」

アメスさん、ずぃ?じーる??ゴルム????え?え?え?


「おいおい嬢ちゃん、あの狐目姉ちゃんなら一発で覚えちまうぞ?」

「すみませんすみません本当にすみません名刺を戴ければなんとか」

「んな高級なもん使えるかってんだ!」

「………まぁいい、どうせ五日間だ、しっかりと働いて貰うぜ?嬢ちゃん。」

「はっ………はひ、…よろしくお願いしあ」


いきなり着いて行けてませんでした。

むぐぐ…前世の様な仕事人間振りは何処へ行ってしまったのでしょうか?

…………いえ、前世もそれ程仕事人間ではありませんでした。



早速とばかりに工房の中へと連れて行かれましたが、ドワーフさん方はせかせかと工房内を機敏に動きまわってます。





……………。




………んん?指示が来ません?


アレですか?仕事は自分で探せという事でしょうか?

それならば………と、私が隅に置いてある工具に近付くと………


「触るな!!」


………と、お叱りを受けました。いきなり涙目です。

いきなりだらけな出だしです。全然お裁縫関係無いじゃないですか。シャリアさんの嘘吐き。

………と、そう思っていると、茶色のお髭のお兄さんが声を掛けて来ました。


「早速で悪いが採寸取らせてくれや!」


「………え?あ、はい…どうぞ。」

私は両手を広げて黙ってましたが、手早く寸法を測ると足早に仕事に戻って行きました。


………なんと言いますか、気遣ってくれるとかじゃ無かったのです。泣きそうです。



「よし、えーっと…?」

若いドワーフさんが声を掛けて来ましたが、何やら言葉が詰まってます。何でしょうか?

………あー…、名乗ってませんでした。


「あ、えっと…エルキュールです。」

「エルキュールさんね?じゃあちょっとこれ着てきてくれる?」

「あっはい………えっ?これですか?」


ビキニアーマーとか言うアレでした。


実在するんですねー。


マジかー。


「奥の部屋は居住区になってるんで、着替えに使ってよ。」


マジかー。


「はい…着て来ます…。」




前途多難過ぎません!!?

今の所叱られて採寸されて変な服を着てって言われただけですよ!?

いや、着るのは良いですけど、どの層に需要があるんですか!?

主に女性層に対して!!



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