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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー勇者と一般人の旅立ちー
26/138

24.シャリアの思惑

ーーーーーーー

ーーーーー



ーードワーフ坑道ーー



私こそエルキュール=グラムバルクは一般人である。

普通の人間ヒューマンで、一般人なのに何故か流されるままにこんな所までやって来ました。

どこかは分かりますよね?看板も立ってますし。


とにかく一般人なのに私の周りはモンスターだらけです。見渡す限りの巨大蝙蝠ジャイアントバット巨大鼠ジャイアントラット岩蟲ロックワームにおばけきのこまみれです。おかしいです。帰りたいです。


私をこの様な素敵な楽園ヘルヘイムに連れ出してくださった張本人はと言うと。


「うははははー!!!しねしねしねしねしになさぁい!!!」


両手にピッケルを持って、返り血に塗れながら楽しそうにお掃除中です。規制音を流すべきです。後ついでにモザイクも。


さて、何故私がこんな魔物の巣窟に迷い込まされたかと言いますと。



…一時間程前…



「あたし達が冒険者よ!」



…………えっ!?私は違いますよね?

私が呆気にとられていると、シャリアさんに後ろから肩を組まれ、胸を握られました。だからどうしていつも変な事をするんですか!?


「この子はあたしの助手よん。ちょーーーっと練度不足だけど、コウモリ退治くらいになら役に立つからデカ物はあたしとマックスが引き受けるわ。」


シャリアさんがケラケラ笑いながら言ってますが、いつから私は助手になったんですか???そしてお願いします、離して……くださぃぃ……


「オイオイ、そんな素人を坑道に?冗談じゃねぇ。」


そうですそうです!言ってやってください!

そもそも私みたいなお客様を無事に届けるのもプライドとか語ってたじゃないですか!!


「あら?ドワーフってコウモリ程度に怖気付くような軟弱者だったかしら?」

「テメェ!今何て「あたし、ドワーフは精霊の声が聞こえるシャーマンで在りながら、最も勇敢な戦士を輩出する武人の一族だって聞いてたけれど」

「好き勝手言いやが「勇敢な貴方ならこーんなひ弱な女子供一人守る位訳ないわよねぇ?」

「いや待て、話を「あら?本物の職人なら口より腕で語るものでしょう?あたしはオジサマの腕を買いたいわけよ。でも「うるせえ!!!」


あら〜……怒らせちゃいましたよ?これでは商談が成り立たないのでは?

しかしシャリアさんは嫌にニコニコしてます。まるで狐のお面です。


「さっきから好き勝手言いやがって…ならテメェが満足するまでオレっちの実力を見せてやんよ!着いて来やがれ!!」




…………えー…………





ーーーーーこうして私はこの不快な魔物が生い茂る坑道へとやって来たのでした。

やはり自分でも理由がさっぱり理解出来ませんでした。




因みにシャリアさんは工房で買ったピッケルを二本、私には小振りなナイフを一本だけ申し訳程度に持たされてます。

あ、ピッケルとつるはしは別物ですよ?

ピッケルはクライマーの必需品です。アックスとも言います。主に岩を穿ったり縁に引っ掛けたりとクライムに利用するのは勿論、杖にもなりますし、底を刺せば足元の雪の硬さや深さを測れます。滑落時にはブレーキをかける為にも使います。それからビバークポイントを作る為に雪を掘ったりと………え?興味無い?

………まぁ、そんなクライマーにとっては神聖な道具を殺戮の為に使ってますよこの人。

私の中の好感度が下がりまくってます。


所でマックスさんはと言うと、片手にショートソードを持ち、背中には巨大な盾………?の様な何かを背負ってます。ショートソードは先程の工房で買った物です。

マックスさんはシャリアさんから付かず離れずの距離を保って、彼女の邪魔にならない立ち回りをしていました。

どうやら完全にサポート役の様ですが、そこは護衛役です。一度剣を振るえばバッサバッサとコウモリやネズミ達を屠って行きます。


ドワーフのおじさまですが、呪文を唱えては此方に魔物を引き付けず、それでも近付いて来た魔物は全部大槌で叩きのめしてます。



………私は足手纏いでした。




弓の使えない弓兵等、狭い坑道内では足手纏い以外の何者でもありません。

当然、先程買ったばかりのナイフの心得等、有るわけが有りません。私に出来る事は精々缶切り程度の事です。


…シャリアさんは私の出番はもっと後だと言ってくれてますが、このままでは結局また何もせずに終わっちゃいそうです。

そうこうして大分奥まで到達した頃、蹂躙の旅もそろそろ終わりが近づいて来ました。

縦にも横にも広がった大きな広場に出たのです。


「お前さんはやり過ぎだ。」

テヘッと舌を出すシャリアさん。

「お前さんは何しに来たんだ?」

俯き謝罪する私でした。


「まあいい、オレっちが作業してる間、邪魔モンが来たら始末してくんな。」

「この辺はそろそろヤベェのが出る所だ、死なない様にな!」

………とても恐ろしい事を言われた気がしました。

アリシアの元へ帰りたいです。


「さて…エルキュールさん、そろそろ準備した方がいいっすよ?」

「あの…何をでしょうか?」

「あんたは弓使いでしょう?背中の立派なもんを構えた方がいいっすよ。」

「…………忘れてました。」

はい、綺麗さっぱり、そもそも私が弓使いだと言う事を覚えてる人が何人居る事でしょう?上で語ってますけど!

私は弓を手に取り弦の張りを確認しました。

整備は抜かり有りません。


「エルキュールちゃん、あたしから一言だけあげるわね?」


シャリアさんの言葉を皮切りに、坑内で地響きが鳴り響きました。反響音が耳を痛めます。

なんでしょうか?嫌な予感しかしません。





「死なないでねん?」





ーーーーーーー

ーーーーー


その頃、アリシア=バーネットはと言うと…


「シャルちゃん、いくよー!」

「う………うん………」

何故か壺入りの少女とバドミントンをしてました。

いえ、寧ろアリシアは動かないシャルロットが何処へ返しても必ずシャルロットに返す様に羽根を打ち返してます。


「よっ!……ほっ!」

「えい……ひいっ」


アリシアは右へ左へとシャルロットによって流されますが、そこは体力に自信が有るアリシアさん。余裕を持って打ち返していました。

しかしシャルロットはと言うと………。

「ひい…ひい……うばぁぁ!!」

物の数回で息切れを起こしてました。羽根も全然打ち返せてません。


何故アリシアがシャルロットとバドミントンをしているかと言うと…


ーーーーーーー

ーーーーー


「えっ!?シャルちゃんほとんどそこから動かないの!?」

「うん………おそとはこわいから…」

「ダメだよ!!ずっと動かないでいると足も悪くなっちゃうし、身体も壊しちゃうよ!?」

「いっ……いいの……シャル、このままくちはてるから…」

「くちはて?………あぁ、朽ち果てるか。…ってダメダメ!!わたしと一緒にお外で遊ぼう?」

「わたしが連れてってあげるからシャルちゃんも一緒に遊んでくれると嬉しいな!

「ううぅ…そこまでいうなら……ちょっとだけ…」


ーーーーー

ーーーーーーー



アリシアのお節介のせいか、シャルロットは地獄の思いで身体を動かしてます。壺に入ったままですが。

もっと言うと、シャルロットが落とした羽根も全て拾ってるのはアリシアなのですが。


「大丈夫?シャルちゃん。無理なら無理って言ってね?」

「むぐぐ…がんばる。」


シャルロットはまだ一本もアリシアに返せてません。それがシャルロットには辛い事でした。

アリシアが打っては羽根を拾いシャルロットに羽根を渡しては元の位置に戻り、打っては羽根を拾い……を繰り返していると、シャルロットが笑顔でこう言いました。


「アリシアちゃん………運動ってつかれるね。」

シャルロットは満面の笑顔で言いました。

アリシアは思います。昔のエルキュールもこうだったなぁ…と

いや、エルキュールは動きたがりな分まだマシか!


「よし、シャルちゃん!もう一本行こっか!」

「ひぎぃっ!!」

アリシアコーチの特訓はまだまだ続きます。



ーーーーー

ーーーーーーー


「………アリシアちゃん……は、……どうして…ここまで……してくれる…の?」

はぁはぁと大きく息切れを起こしながらシャルロットは聞きました。

「うーん……シャルちゃんが…シャルちゃんの力になりたかったからかな?」

嘘は言ってませんでした。

ただ、そこにエルキュールを重ねてしまった事に深く罪悪感を抱くのでした。

そんな事とは露とも知らないシャルロットはもじもじしながらアリシアに尋ねました。


「ねえアリシアちゃん、……こっちむいて…?」

うん?……とアリシアは振り返りますが、心の底から油断してました。



………ちゅっ



アリシアは呆然としてます。

シャルロットは嬉しそうに微笑み。口元を片手で隠します。

「まえにおっぱいさんとしてたこと……シャルもしちゃった…」


アリシアは視界がぐにゃりと歪むと、そのまま崩れ落ちる様に倒れました。



ーーーーー

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