17.牛頭人体の化物
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少し程森を彷徨い、時間は掛かりましたが、アリシア=バーネットはそれなりの収穫を得ました。
早く帰って幼馴染に自慢しよう。そして思いっきり褒めて貰おうと、帰宅する足は早まります。
何やら狼煙の様な物が見えて来て、アリシアは自分達のキャラバンから立ち昇る煙である事を確信しました。そうすると帰る足は更に早まります。
木の根や小石に足を取られ、時々転びながらも無事に辿り着いたアリシアは早速とばかりに収穫のキノコやら果物やらを持ち込みました………が。
両手に持った収穫物を落として顔を青褪めてしまいました…。
「………なんで顔赤いの?」
幼馴染のエルキュール=グラムバルクが息も絶え絶えと言った様子で胸元を抑えて顔を真っ赤にしている様子が視界に飛び込みました。
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…
「いやぁ〜ごめんごめん!アンタ等がそんな関係だなんて知らなくってさぁ〜」
噛み跡だらけの女性、商隊の主シャリアは悪びれずに舌をペロリと出して謝ります。
「がるるるるるぅ…」
「いえ…その…そんな関係では無いですけど……あの、アリシアがすみません…。」
「むぅ………エルキュールはわたしのなんだからね…?」
「……ふーん?そんな関係じゃないなら、今のでもう一回罰ゲームが増えた訳だけど?どう?あたしのテク、惚れた?」
「はいはい三人とも、いい加減にしてご飯を食べなさいな」
シェリーおばさまの言葉で遮られました。本当に助かりました。
「おなご達の花園………かくも美しき世界。これが美界エトワールとでも言うのか…!」
あの黒い人は鼻血を出しながら何か呟いてます。怖いです。やべーやつです。
「それで姉御、このまま進路を取ると、やっぱりアレに当たるっすよ?」
厳つい護衛さんこと、マックスさんが地図を広げて何やら相談して来ました。
「やっぱそうかぁ。でもこの進路は確保しないと今後の商談に関わるからねー。頼りの冒険者も雇えなかったしどうしたもんか…」
「冒険者?」
キノコとお肉のスープを貪るアリシアが二人の相談に割り込みました。
「あぁアリシアさん!いやちょっと問題が有るんすけど、迂回すりゃいいんで大した事じゃあ無いんすよ。」
「ただなぁ…迂回するとゴブリン族の村にぶち当たるし、どうしたもんかねぇ…?」
────ゴブリンですと?
ゴブリンと言えば狡猾で、知恵は無いけどずる賢い小鬼の一族と聞いた気がします。前世で。
「ちょっと通行料に色を持たせりゃ問題なく通してくれるんで、大した事は無いんすよ」
…んん?……何だか文明的では無いですか?
どうやら私の魔物への知識は偏っていたみたいです。反省反省。
「でも迂回に三日は掛かるし、食料や水とかの問題も色々あるじゃん?」
「直進出来れば半日で抜けられるし、全部解決なんだけどさぁ………この先がまたやべーのよ。」
シャリアさんはケタケタ笑いながら聞きたい?聞きたい?と言った様子で地図を見せびらかしてきました。
私はアリシアと怪訝そうに顔を見合わせます。
「この先は魔族、ミノタウルスが徘徊してるって噂で何人もの犠牲者が後を絶たないって話が有ってだねぇ?」
シャリアさんの瞳が怪しく光った気がします。
「アンタ等さえ良ければ今回の件は直接依頼として出すつもりよ?」
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私達は腹拵えを済まし、この先の廃墟となった遺跡へと偵察に赴きました。
商隊のキャラバンは先程の岩場より進み、十数キロほど離れた後方の草原広場で野営の準備中です。
私は出発の際、弓と矢をお借りしました。前回の弓は、あの戦闘の際にボロボロに崩れて粉々になってしまったのでお返し出来ませんでした。
今回は私の胴より少し大きめな弓です。オーク素材の少し頑丈な代物です。
弦を引き絞れるか不安でしたが、一射毎に落ち着いて、集中する事に努めようと思います。
───少し前の事です。
「分かった………引き受けるよ。」
「うんうん、さっすが勇者様!民の困り事には応えてくれるのねーん!」
茶化した様に言うシャリアにアリシアはじろりと視線を向けました。
「その代わり、成功したらわたしのエルキュールに手を出さないでよ?」
「いいわよー?成功報酬だけどね?」
「でもエルキュールちゃんがあたしに惚れちゃったら、流石のアリシアちゃんでも文句は言えないわ・よ・ね?」
後ろから抱き締められ耳裏にふーっと息を吹き掛けられましたあががががが
「ぐぎぎぃぃっ!!絶対に瞬殺してやるんだから!!」
あー、完全に遊ばれてますねぇ。そんな安請け合いしちゃってもう…。シャリアさんがいい匂い過ぎて、背中に当たる柔らかな感触がアリシアには絶対に真似出来ない事ゆえにか、顔が熱を持ってる気がします。
「エルキュールもそんなにニヤけちゃって!エルキュールのバーカバーカ!」
私もラノベの主人公でしたか?
可愛く嫉妬してくれるアリシアは、ぷんすかぷんすか怒りながら早速準備に取り掛かりました。
「あの…シャリアさん、お願いが…」
「なぁに?お姉さんに惚れちゃった?」
「いえ、その……弓と矢は有りますか?」
───そうしてお借りした弓と矢のセットを担ぎ、私はアリシアの後をちょこちょこと着いて行きました。
「どうしてエルキュールが着いて来るのさ?」
「それは勿論アリシアを放っとけないからに決まってるでしょう?」
「また危険に勝手に首突っ込んで…ホントにエルキュールはわたしの言う事を聞いてくれないよね」
「あら?あそこに居る方も危険だと思うのだけど…?」
私は顔を青ざめて言いました。アリシアは納得してくれたのか
「あー………分かったよ、絶対にわたしから離れないでね?」
「えぇ、頼りにしてるわよ?アリシア」
私はアリシアの頰にキスしました。
アリシアは顔を真っ赤に染めて何とも言えなさそうな表情をしましたが、気を引き締めて
「今回は偵察だけだからね?絶対に無理しないでね!」
私を先導し、廃墟の街へと足を踏み入れました。
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私達はゆっくりゆっくりと、廃墟の街を練り歩きました。
時には屈んで何者にも見付からないように。或いはレンガ柱と壁の間を掻い潜って。スルスルと縫うように街中の怪物を探して周ります。
中々見付からない事に大分焦りが出始めたのは私の方でした。目標が見付からないのに隠れ続けると言うのはかなりのストレスを感じます。
思わず壁に寄り掛かると、瓦礫を崩してしまいました。
アリシアは咄嗟に私を抱き上げ別の廃墟へと転がり込みました。
───先程、自分達が居た壁が巨大な破砕音と共に崩れ落ちました。
私達が瓦礫の隙間から恐る恐る視線を向けると、そこに居たのは巨大な牛の顔と下半身を持つ悪魔の様な巨人でした。
まるで身体全体が筋肉で出来ているかの様なその巨体は、見る者全てを圧倒し、三メートル程有る身長は目に映る全てを見下し、憎しみを抱いている様で。
左手に持った巨大なハンマーは瓦礫程度なら一振りで簡単に粉砕出来そうです。ハンマーと言うより鉄板と言った方が合ってるのかも知れませんが。
先程、壁を砕いたのは恐らくこれによるものでしょうか?
何やら周囲をキョロキョロ見渡し探し物をしている様に見えます。…まぁ恐らく私達の事なのでしょうけど。
私は思わず生唾を飲み込み声が漏れそうになりましたがアリシアが咄嗟に私の口を右手で塞ぎました。
生唾を飲み込んだ音に一瞬反応した様に見えましたが、どうやら目が悪いのか私達を見付ける事はしませんでした。
そのまま何処かへと歩き去って行く牛頭人体の化物を見送り、アリシアと私はどれくらい時間が経ったのか、化物が居なくなった所で口から手を離し、ゆっくりと深呼吸をしました。
「あれがミノタウロス……」
「ミノタウルスね?…まぁ余り変わんないけど。……しかしまぁ、化物だったね」
「あっ…あの…アリシア?」
私が顔を赤らめて自分を押し倒す少女に声を掛けました。思わず声が上擦りました。
アリシアは何事かと小首を傾げましたが、アリシアの手が私の胸を鷲掴みにしてるのです。
「あ〜……浮気肉。」
アリシアは手を離すとボソッと聞こえる声で囁きました。顔を真っ赤に染めてむ〜っと私は怒りますが、今はアレが戻って来たら大変です。怒りと羞恥を押し殺して、声を抑える事に注力します。
とにかく私はアリシアに助け起こされ、そのまま拠点がある場所へと駆け戻りました。
空は何時の間にか茜掛かっていました。
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アリシアはにゃんデレ




