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俺達はベンジャミン村に辿り着き、村長と出会う。

なるべく日が開かないように短い間隔で投稿していくように精進いたします。

どうぞよろしくお願いいたします


 ────ベンジャミン村。

 入り口からでも見える大空と広大な山脈を背後に佇む村。


 木造の古い家が立ち並ぶが、どれもが貧乏とは思えないほどに綺麗な造りだった。

 屋敷というほどの規模ではないが、それでも丈夫そうな家々。


 畑には野菜や農具、そして農夫が。

 果樹園には幾人もの女性が、木々の手入れをしていた。


「うん、着いたな。まずは村長に挨拶だ。君達もどうだ? この村に用があるんだったら、まずは村長に挨拶した方がいいぞ?」


「そうなのか? ……わかった、一緒に行こう」


「えぇ、この道を真っ直ぐ行けば確か比較的大きな家があるので、そこへ行けばよいかと」


 こうして3人は村長の家へ行く。

 変わり者の村と人々から噂される辺境の村。


 一見変哲もない光景にすら思えるが、一体どんな秘密があるのだろうかと、彼等は密やかに考えを巡らせながらも村長へ会いに行った。


 すぐに目通りが叶うと、3人は村長の執務室へと入る。

 部屋の奥には執務机、そして周りには本棚。

 テーブルと古ぼけたソファーが部屋の中央に備えられていた。


 執務机で仕事をしていた村長が椅子から腰を上げた。

 年老いた女性だったが、佇まいから感じる気品さが年齢よりも遥かに若く見せる。

 

「ようこそおいでくださいましたね。キリムさん。……と、お連れの方かしら」


「あぁ、彼等は恩人です。彼等もまたこの村に用があるということで一緒に……」


「そうでしたか。どうぞおかけになって。お茶を用意させます」


 そう言って村長は使用人に無言の指示を出して、上座へと座る。

 向かい合って座る3人をにこやかに見ながら、彼女は歓迎の言葉を述べた。


「ようこそベンジャミン村へ。私はここの村長の『スカーレット』と申します。アナタは今日からこの村の衛兵として働かれるキリムさん。……さて、そちらの素敵な御二方は」


 サティスとセトに穏やかな視線を向ける。

 

「俺はセトって名前だ」


「サティスです。この子の身内のようなものです」


 スラッと答えるサティスに一瞬視線を向けるセト。


(身内ってなんだよ)


(こういった方が先方も安心するでしょう?)


 ひそひそと話す2人を見ながら運ばれてきた紅茶をすするスカーレット。


「フフフ、随分と仲がよろしいのね。私も昔を思い出すわ」


 そうして微笑んだ後、雑談も交えつつキリムに仕事の話をした。

 キリムは早速使用人のひとりに連れられ、仕事場へと向かう。


 住み込む家となり、仕事場となる建物へと向かったキリム。

 スカーレットは彼女を見送った後、ソファーに座って仲良く紅茶をすすっていた2人に話しかける。


「さて、紅茶を堪能して頂いている所悪いのですが……御二人がこの村に来た目的は? この村に住みたいとか?」


「あぁ、いえ。私達は旅をしているんです。これから長旅になると思いますので、出来れば幾日か滞在をと……。勿論そこまで長居する気はありませんので、どうか御許可を頂けないかと」


「あぁ、そんなこと」


 スカーレットが笑った。

 使用人に資料を持ってきてもらうと、少しの間目を通す。


「この村に宿があるのか?」


「違うわセト君。最近は家の持ち主が亡くなって、空き家が少し増えててね。いくつか取り壊しちゃったけど、余ってる空き家のどこかなら貸せそうなのよ。……この家なんてどうかしら? 2人だけでしばらく過ごすならここがいいんじゃない?」


「斡旋までして頂いて、ありがとうございます」


「いいのよ。女子供だけじゃ旅もキツいだろうし。……いっそのこと、ここに住む?」


「え? でも俺達は余所者よそものだ。いきなり来て勝手に居座るなんて他の村人が許さないんじゃないのか?」


 セトの驚いた表情に、スカーレットはまたも穏やかに笑う。


「ここの噂は知っているでしょう? ここは変わり者の村。……この村にいるのは、ほとんどが余所から来た人達なのよ? ……かつて伝説の英雄とまで言われた人もいれば、商売で一財産を築き上げたけど色々あって無一文になってしまった男だっている。色んな過去を背負った人達がここへ辿り着き住み始めるの。……まるで御伽噺おとぎばなしの魔法のようにこの村に惹きつけられてね」


 不思議なえにしと数奇な運命が、人をここへ引き寄せる。

 では自分達もその縁によってここへ来たのだろうかと、セトとサティスはふと考えた。


 サティスが行こうと言いだしたこの村。

 これもまた運命というものなのか。


「……きっとあのキリムさんも、色々と不憫な目に遭いながらここへ流れ着いたのね。そういう人達ばっかり来るのよねぇこの村。ホント不思議なんだから」


「争いとかは大丈夫なんですか? そこまで、こう……個性的だと喧嘩とか絶えないんじゃ?」


「フフフ、この村が出来た頃はそりゃもう毎日のように乱闘騒ぎだったわ。人生に疲れた男共が互いに怒鳴り合って、どこか哀しい瞳をした女達がそれを見て面白可笑しくはやし立てるの。……今ではいい思い出だわ」


 懐かしむ村長の顔には、年齢という枠では言い表せない美しさと懐古の念があった。

 激動の時代を今尚生き続けるこの村の中で、きっとスカーレットは多くの人々を見てきたのだろう。


 そして、見送ってきたのだろう。


「さて、空き家への案内だけど。生憎私は忙しくてね。……ウチの使用人に案内させるわ」


「はい、ありがとうございます」


「助かる……いや、助かりました」


「フフフ、ゆっくりしていってね。私も後でお伺いするわ。久々のお客様だから、村の案内とか張り切っちゃうわね」



 そうして、セトとサティスは使用人の案内の元空き家の方へと案内される。

 他と比べると比較的小さな家だった。

 

 だが二階建てで、個人の部屋は2つ。

 リビングには生活用品がそのまま置いてあった。

 

 村長が来るまで、セトとサティスは家の中でゆっくりと過ごすことにした。

 



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