プロローグ
僕は声が低い。
授業中に先生に教材の音読を頼まれた時、読んでいる間ずっと自分の声について考えていた。
その時到達した結論は、僕は声が低い。友人に「地面が震えそう()」とイヤミを言われる程度には低い。
声が低ければカラオケでVOCALOIDなんか歌うの難しいし、聞き取ってもらえないことだってある。
声って、何のためにあるんだ……?
あ、自己紹介が遅れたね。僕は新村奏。
異世界へと転移された、ごく普通だったはずの男子高校生だ。
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夏から秋に変わってきて、まだ残暑が厳しい頃。
まだ高校一年生な僕は教室の端っこでぼーっとグラウンドを眺めていた。
まだ殆どの生徒が半袖で、夏の間にどれだけ外に出ていたかがその肌から察せる。
クラスの中でトップレベルで肌が白い僕は、周りの人から見たら『ニートがいる』とでも思われているのだろうか。
「奏。課題やったか?」
ふと、後から誰かに話しかけられた。後ろを向くと、そこに居たのは唯一と言ってもいい僕の友達だった。
「んー、終わってるよ。そういう昂は?」
高谷昂。身長が高く、イケメンでモテモテの男。何でこんなのと友達になれたのかは自分でも分からないが、昂と友達でなかったら僕は3年間を無言で過ごすことになってたと思えば、感謝してもしきれない。
昂はクラスの中心的存在で、僕のみならずクラス全員と仲がいい。頭もよく、完璧人間のはずなのだが……。
「チョットナニイッテルカワカラナイ」
「マジかよ……提出5分後だぞ……」
「モチロンヤッテルニキマッテルダロ」
「はぁ……」
昂はどこか抜けている部分がある。
この前も……
「奏ー! 昼ごはん一緒に食べないか!」
「いいけど、いつもの弁当袋今日持ってきてなくない? 僕の気のせい?」
「……………………」
「……もしもし?」
「き、今日もいい声だな、奏…………」
こんな奴である。まあ、いい奴なのでその都度サポートはしているのだけど。
そんな平和な時間、平和な世界をその後に奪われるとは、誰も思いもしななかった。
異世界へと、転移されるなんて……。
これから不定期で小説を更新していきます!
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