第46話「別れ」
第46話「別れ」
翌朝目覚めると俺はいつもの様にエルートの胸で目覚めた。これが最後になるのかと思うと中々顔を離す事が出来なかった。エルートの匂い、胸の感触いつまでもこんな朝が続くとどこかで都合よく思って居た。
目が覚めていつまでもそのままで居る訳にはいかないので、ゆっくりと顔を上げエルートを見るといつもの様に挨拶をしてくれたが、昨夜の出来事での事も有り、照れ、寂しさ、怒り色々な感情が混ざった複雑な表情でもあった。
一緒に下に行くが、会話はいつも以上に少なく感じた。俺達が下に行くと朝食の支度は済んでいたようでテーブルの上には食事が用意されていたので、皆にも挨拶をして皆で食事を取る。いつもより空気が重い、会話も少ない。
食事を終えて少し経つとバリン車の走る音が聞こえてきて家に誰か尋ねて来る。ガラフさんがエルートを迎えに来たのであろう。エルートが玄関に向かい玄関を開ける
【エルート様お迎えに参りました。】
【今荷物を持って来ます】
すれ違った時にエルートが悲しげな表情で二階に荷物を取りに行く。俺達は玄関の所でただ立って見ている事しかできなかった。しばらくしてエルートが自分の荷物をアイテムボックスにでも閉まったのか手ぶらで下に降りて来る。
【お待たせしました。】
ガランさんは何も言う事無く先にバロン車の方に向かって行った。エルートはキャロ、テミア、ポルンとお互い泣いていたり、抱き締めあったりそれぞれ別れの挨拶をしていた。
エルートが俺の所に来た時には涙を堪えながら皆と別れの挨拶をしていたようだが、涙は流れていた。
【ご主人様本当に色々ありがとうございました。】
深く頭を下げて居た。俺は頭を上げさせて
【俺こそ色々お世話になった。ありがとう】
エルートの瞳から堪えていただろう涙が一気に流れだしたようだった。俺はそっとエルートを抱きしめた。
少ししてエルートはガランさんの待つ、バロン車に乗って城に向かって行った。
俺達はバロン車が見えなくなるまで見送って、皆が家の中に入るが俺は家の中に入る事が出来なかった。もしかしたら気が変わったエルートが戻って来るのではと淡い期待を抱いていたからだ。だかそんな事は無い。
【ご主人、もうお家に入りましょう。】
しばらく玄関先で立ち尽くしていた俺にキャロが声をかけて来た。俺は頷きゆっくりと家に戻って行った。
朝食の片付けも終わっていたようで皆で座って居た。
【ご主人。今日はどうしますか?】
正直今は何もやる気が起きない。魂誓を断って居るのだからいつかこうなる事は分かっていた事だが・・。
【今日は休みにして好きな事してていいぞ。】
俺は皆に言って、玄関に向かって行き外に出て移動魔法を使った。誰も居ないだろう山の丘の上に・・。
ハクリの母のお墓が遠くに見える所に有るが、ハクリの姿はなかった。俺はその場に座り何をする訳でもなく、ただ座って居た。
いつまでも皆で仲良く暮らしたり、旅が出来ればいいと思って居たが実際はあっという間に過ぎ去ってしまう。分かっていた事だが無性に寂しい・・・。さっきまで一緒に居たエルートにも今すぐ会いたい。
同じ事やエルートの事を考えて居てどれくらいの時間が過ぎたのだろう
【探しましたよ。】
俺の横に座るのはテミアだった。
【もうとっくにお昼を過ぎて居るのに戻って来ないので、キャロさんとポルンさんも心配してますよ!】
もうそんなに時間が過ぎていたのか。テミアは自分のアイテムボックスから軽食のサンドイッチを取り出し俺に差し出して来るが
【今は要らないよ。ありがとう】
断った。テミアは取り出したサンドイッチをしまい、しばらくそのまま俺の横に座り黙っていた。
【エルートさんはルインさんの傍から離れないと思ってました。】
俺だってそう思って居た。
【愛と言うのは私には全く理解できませんね。日頃からエルートさんは生涯ルインさんと一緒に居ると言っていたのに】
心変わり何てよくある事だ。昨日は好きでも今日は嫌いになって分かれるカップルだって沢山いる。
【愛は分かりませんが、エルートさんにそこまで思われているのに1回会っただけの人に簡単に心がなびくのでしょうか?】
それはエルート自身しか分からない事だ。ダクス王子を優しいとも言っていたし相手は世界最大国家の1つだし将来を考えればなびいても無理はない事だろう。
【今日エルートさんとダクス王子の魂誓発表会が城で行われるそうです。エルートさんの様子を見に行きませんか?】
エルートの事が気になるし見に行くだけならと思った。
【行きたいが、招待されてないのだから勝手に行くわけにもいかないだろう。】
テミアは立ち上がり俺の目の前にしゃがんでこっちを見ながら
【なら。お忍びで一緒に行きませんか?】
テミアはどうしても行きたいみたいだな。エルートの事が気になるのか?エルートが俺の事を思って居た愛について知りたいのか分からないが・・。俺は立ち上がり
【分かった!少し様子を見に行くだけだ】
テミアは頷いた。
テミアがさっきのサンドイッチを俺にまた渡して来た、俺のお腹の音が聞こえたらしい。サンドイッチを食べて、家に戻る事にした。




