第8話_現状把握は大切です
=三青の視点=
「ミオさま……えぐっ、うぐっ、ふぇぇぇぇ!」
いきなりシクラが泣き出した。
メイドのローリエが新しいハンカチを渡している。
さっき、お茶を噴いた時にも、シクラと僕にハンカチを渡してくれたから、3枚目のハンカチになるのだけれど……この人、何枚ハンカチを持っているのだろう? メイドさんのポケットは4次元構造になっているという噂は本当なのだろうか?
……うん、ごめん、シクラ。現実逃避していたよ。
シクラが僕に好意を寄せてくれるのはありがたいのだけれど、ラズベリがいる以上、今はもう恋愛対象には見られない。元々、保護欲回路が刺激される保護対象だったし――とは、口が裂けてもシクラには言えない。多分、それを言ってしまったら、シクラはもっと泣いてしまうだろうから。
取りあえず、泣いているシクラをなだめよう。
「シクラ、あのね――「な・に・を・泣いているのです♪」――「え?」」
僕の言葉は、嬉しそうなラズベリの声によってかき消された。
微笑んでいるラズベリの言葉に、シクラがフルフルと震えている。その表情は、さっきまでの悲しみを通り越して、怒りに変わった様子だった。
「私のミオさまが――勇者さまが――お母様に寝取られたからです!!」
「あら、そんなことですか?」
シクラの寝取られ発言を、ラズベリが華麗にスルーする。
……寝取られ発言とか、それを無視するとか、何気に僕が刃物で刺されるフラグだから止めてほしい。
でも、シクラが怒った声で言葉を発する。
「お母さま、そんなことじゃありません!」
「んふふっ♪」
小さく笑って言葉をためた後、ラズベリがゆっくりと口を開いた。
「シクラもわたくしと一緒に、ミオさんと結婚すれば良いじゃないですか」
「「えっ、一緒に結婚ですか?」」
僕とシクラの声が重なる。
「そう。結婚式も、その後の初夜も、わたくしと一緒に――って、2人とも嫌なのですか?」
「「母娘丼ですよ!?」」
僕とシクラの言葉が、再び重なった。
……しまった。思わず口に出ていた。っていうか、シクラがそういう言葉を知っているのが意外だった。
僕の視線を感じたのか、シクラの口元が、うにゃうにゃしている。
……こういうところ、シクラはちょっと可愛いんだよな。
「シクラは、ミオさんとの結婚、嫌ですか?」
ラズベリの言葉に、固まっている僕の隣で、シクラがぶんぶんと首を横に振る。
「悪くない案だと思います!」
「シクラもそう思うでしょ? ――そういうことだから、ミオさん、意味分かっていますよね?」
にこっと微笑むラズベリ。
ラズベリとそういう関係になったら、シクラももれなく付いて来る。
ラズベリとそういう関係にならないのなら、シクラはもちろん付いてこない。
どっちか片方だけ欲しいというのは、ダメ、絶対。
――いや、ちょっとこの状況が嬉しいなんて、思っていませんよ?
シクラと出会った時に自分はロリコンじゃないとバックべアード様に誓ったのだから。5年間はシクラを保護するって決めたのだから。
本当に、本当に、本当なんだから!!
「あの……社会的に問題無いんでしょうか? あまり知りませんけれど、宗教とか倫理観とか年齢とか色々と――」
「大丈夫ですよ、心配しなくても」
「そうです、ミオさんは心配いりません!」
一瞬だけ流れた静寂、それは僕の頭の中だけだったかもしれない。
2人を相手にすることが、受け止めることが、本当に自分に出来るのだろうか? 「2人が好きだ」とはいえ、簡単に結婚を決めても良いものなのだろうか? ラズベリやシクラに、逆に失礼になるんじゃないのか? そんな不安が頭をめぐるけれど――思考の渦の中心に、はっきりとたたずむ「ブレない気持ち」があることに気付いてしまった。
言葉に出来ないその気持ちは、一度口に出そうと決めたら、まるで最初から運命で決められていたみたいに、あっさりと言葉になってくれた。
「僕は、2人を大切にするよ。絶対に、何があっても、幸せにする。だから、僕と一緒に人生を歩んでくれませんか?」
震える両手をシクラとラズベリに伸ばす。
2人とも笑顔で手を繋いでくれた。
「2人ともありがとう。これから、よろしくお願いします」
「はいっ♪ ミオさま」「こちらこそ、よろしくお願いしますね、ミオさん」
そのまま、しばらく3人で笑い合ってしまった。
気持ちのソケットが、カチリと音を立てて納まる――そんな温かい感覚だった。
=ラズベリの視点=
……嬉しそうなミオさんを見ていると、少し複雑な気持ちになります。
ミオさんは、悪魔なのに人間への擬態がとても上手ですから。
悪いことをしているんじゃないのかな、という罪悪感を覚えてしまいそうになりますが、そうなると顔に出るのを抑えるのが大変になります。心を鬼にして――魅惑にかかっているのだと自己暗示をかけて――最後まで気を抜かないようにしましょう。
それにしても、わたくしの「もう一押し」は予想通りに効きました。
シクラは自然な笑顔で喜んでいます。
人間、手に入らないと思うものには執着してしまいますが、期限を決めて手に入ると分かっているものには、案外、期限まで手を出さずに辛抱することが出来るものです。
これでシクラの執着や暴走はある程度、防げるかと思います。
聖女騎士団が到着するまでのあと4日から6日、シクラはミオさんの婚約者として、殺されることも穢されることも無いでしょう。ミオさんの性格では、シクラは蝶よ花よと大事にされることでしょう。
さて、少し余裕が出てきましたから――わたくしも、わたくしなりに楽しませてもらいましょうか。
=三青の視点=
ラズベリが、にこにこっと可愛く笑っていた。
シクラが、キラキラした瞳で嬉しそうに微笑んでいた。
ずっとずっと見ていたくなるような2人の笑顔に、僕も口元が綻ばずにはいられなくなっていた。
とはいえ、いつまでもニヤニヤしているのも格好が付かないから、会話を続けよう。
「そう言えば、僕の立場はどうなるのですか? ラズベリの夫? それともシクラの夫? まぁ、2人の夫で良いのかもしれないですが……」
「ミオさんが、どちらを第一夫人にするかによって立場は変わってきますね。わたくしを第一夫人にしたらメーン子爵家当主の夫という立場ですし、シクラを第一夫人にしたら貴族籍でいるのは厳しいかもしれません。でも、今回はあまり考えなくても大丈夫ですよ」
シクラとラズベリが無言で目線を交わした後に、言葉を口にする。
「「だって、ミオさんには女の子として生きてもらいますから♪」」
――あれ? なんだろう、寒気しかしない。
女として生きるって、社会的に、僕は死んでいるってことになりますよね?
◇
話を要約すると、僕が男だということが屋敷外の人間に知られると前当主と同じ目に合うらしい。「ハーレム×ハーレム♪」とか冗談で頭の中で思っていたら、ラズベリに「男版の人間牧場は嫌でしょ?」と遠回しに言われてしまった。
もちろん嫌だから、ハーレムのことは頭の中から追い出した。
そう、ハーレムは嫌だから、女として生きるのも仕方がないのだ。多分、きっと、絶対に!
ちなみに、さっきからラズベリとシクラが結婚式のことについて、きゃいきゃいと楽しそうに話をしているけれど……僕はそれについていけていない。とりあえず、話題が初夜のことに踏み込まれつつあったから、桃色の空気を払しょくするために――話題を変えよう。
シクラもラズベリも貴族だから恥ずかしくないんだろうけれど、ローリエ含む美人メイドさんや女性兵士さん達の前でそういう話をするなんて、それ、何ていう無理ゲーですか? っていう気分だから。
それに、今の僕は「この世界のこと」について、ほとんど何も知らない。シクラと詳しく話をしようとしていた時にラズベリやリリーさん達が割り込んできたから、断片的にしか見えていないのだ。
だから、真面目な意味でも、この世界の情報収集をしようと思う。
「ねぇ、シクラ。そして、ラズベリ。聞きたいことがあるんですけれど」
「何ですか、ミオさま」「はい、ミオさん?」
2人が桃色な会話を止めて、僕の方を見る。
真っ直ぐな視線に、透き通る水色と紫色の瞳。……うん、2人とも可愛くて美人だな。
――じゃない。見惚れるのは後にして、情報収集を始めよう。
「シクラ、ラズベリ。僕にこの世界のことを教えてくれませんか?」
「もちろんです、ミオさま!」「ミオさん、分かりました。何から知りたいですか?」
「そうですね――」
こうして、僕の異世界学習が始まった。
◇
「――ということ、なのですよ、ミオさま」
「ミオさん、今のシクラが説明してくれた内容で、大体はイメージ出来るかと思います」
シクラとラズベリに、この世界のことについて色々と話を聞き始めてから15分。
2人が話してくれた情報を頭の中でまとめる。
まずは魔法のこと。
この世界には水、火、土、風、光、闇、聖を基本として、様々な系統に分かれた魔法があって難易度や威力によって下級~上級と分けられている。
歴史上の資料では、使い手が限られるけれど、空間魔法や精神魔法といった特殊な魔法も過去に存在していたらしい。
なお、「禁呪」と呼ばれる上級魔法の上のクラスの魔法もある。
でも、威力が高すぎてその使用は制限されているとのこと。グラス王国の法律でも、許可された魔法使い以外には詳しく話をしちゃいけないと決まっているらしく、禁呪に関しては、あまり教えてもらえなかった。
ちなみに、僕がラズベリと出会った直後に放たれたのが、城郭ごと吹き飛ばせる戦略級の禁呪だったと言われた時には、ちょっとだけ血の気が引いた。
どうやら、僕とラズベリの間にレベル差があり過ぎて「魔法が通らなかった」せいで、不発に終わったみたいだけれど……本来ならば氷柱で僕の体はズタズタになった上に、紫色の雪による魔力の過剰供給による爆破に巻き込まれ、コーン状に城の壁ごと跡形もなく吹き飛ばされる予定だったらしい。
ラズベリは嬉しそうに笑っていたけれど、自分のレベルが高くて良かったと、本気で思った。
レベルと言えば、僕のレベルはぶっ飛んでいる。
僕のレベルは1025。HPとMPは、85000と76000越え。
シクラに書いてもらった紙を見て、ラズベリが何度も、何度も確認していたのが印象的だった。ラズベリいわく、過去の記録にある大型ドラゴン×3匹分のHPとMPらしい。
一応、この国の一般女性の平均レベルが8、女性兵士の平均レベルが15、女性騎士の平均レベルが30、貴族に仕える上級騎士や、王国騎士と呼ばれる王国専属の騎士がレベル60~80前後。
聖女騎士と呼ばれる120人しかいない規格外の存在が平均レベル120。
その筆頭の生きる伝説――神の奇跡で不老になっているらしい――と呼ばれる「何とかさん」でもレベルは230でHP8500にMP6800だそうだ。魔王とか魔族とかいるみたいだけれど、それでもレベル320でHP12000にMP8800が過去最高だったらしい。
シクラは「ミオさまは、さすが勇者さまですっ♪」と嬉しそうに言っていたけれど、ラズベリはしばらく固まっていたから、怖がられていないかちょっと心配。
今更、婚約破棄とかされたら、泣きそうだ。
「……はぁ」
思わず溜息が出た。ラズベリとの婚約破棄は、想像するだけでも悲しくなる。
「あら? ミオさん、どうかされましたか?」
ラズベリが不思議そうな表情で僕を見てきたから、取り繕った笑顔を返す。
仮定の話を気にしても仕方がないから、次の話題に行こう。
「ラズベリ。こっちの世界の地図ってありますか? 位置関係やどこの場所にどんな人が住んでいるのかを知りたいのですけれど……」
「有りますよ。用意させます、ライチ」
「はい、ラズベリ様。少々、お待ち下さい」
ライチと呼ばれた小柄なメイドさんが一礼をして、部屋を静かに出て行く。
「それじゃ、地図が来る前に予習をしておきますか♪」
そう言ってラズベリが小さく笑った。
◇
シクラとラズベリの2人によると、こっちの世界には、確認されているだけで5つの大陸があるとのこと。
人族が支配している大陸が2つ、人族と対立している魔族が支配している大陸が2つ、神族や天使族が支配している大陸が1つ。いずれの大陸でも、種族に関係無く人型の雄はパンデミックでほとんど絶滅状態らしい。
――らしい、と表現するのは、パンデミックの後は交易がほとんどなくなってしまって情報が入ってこないとラズベリが言っていたから。どこの大陸も、人口減少による影響で交易どころじゃないとのことだった。
というわけで、今、僕がいる南大陸には大国が3つと周辺諸国が6つあるらしい。
僕が召喚されたメーン子爵家の領地は、大陸の中で「東の覇者」と呼ばれる2番目に大きな「グラス王国」の中にある。グラス王国は、隣国のグロッソ帝国――大陸一の面積を誇る西の覇者――と長年戦争をしてきたらしいけれど、Yウイルスのパンデミックが起こってからは停戦協定を結んで平和になったらしい。
素人判断でしかないけれど、男がいない状態で戦争をしている余裕がなくなったというのが、お互いの正直な理由だろう。
そんなグラス王国の中にあるメーン子爵領は、王都の西にある「ライラ伯爵領」のさらに西隣にあり、「城塞都市ルクリア」を中心として2つの街と6つの町と無数の村を合わせて約10万人が住んでいる。その人口の内訳は人族が6万人、獣人族が3万人、エルフ族やドワーフ族が1万人となっているとのこと。
全体的に街の数に比べて人口がちょっと少ないと思ったけれど、この数は各種族の男性がいなくなって半分に減ってしまった人口で計算しているから仕方が無いとのことだった。
◇
ふと気付くと、シクラがじっと僕を見つめていた。
「ミオさまは、獣耳が好きなんですか?」
笑顔のシクラ。だけど僕は知っている。
ここで「はい」と言ってしまうのはNGだと。ひっかけだと。
以前、友達の友達の女の子に「山下さんはケモ耳娘が好きなんですか?」と聞かれて、正直に答えたら目線を逸らされて苦笑いされた揚句、口をきいてもらえなくなった経験があるから。
僕は、ラズベリとシクラ一筋なので、獣耳娘にもツンデレエルフ娘にもロリドワーフ娘にも喰いつかない紳士ですよ? 城の外を歩けば、そのうち見ることができるだろうし。うん、獣耳娘の尻尾をモフモフしたいなんて考えてはいない……いけない……多分、きっと、絶対に!
だから、さり気無い様子で首を横に振っておく。
「嫌いじゃないけれど、特にこだわりは無いかな~」
シクラが残念そうな笑顔を浮かべる。
「そうなんですか……? 獣耳とか尻尾とか可愛いから、私、獣人さんをもふもふするのが好きなんですけれど……」
「……そ、そうなんだ? そう言われたら耳とか可愛いかもっ♪」
ちょっとだけ覚える罪悪感。シクラのことを警戒しすぎちゃったのかもしれない。
次があったら、素直に好きなものは好きだとシクラに伝えよう。
◇
話は進んで、メーン子爵領内のことになった。
まずは戸籍の話。
街や村に戸籍という概念は無く、正確な血筋が分かるのは貴族くらい。それも記録が残るのは正妻の子どもだけで、妾の子どもは関係ないとのこと。先代のメーン子爵の隠し子――いわゆる「ラズベリの妹」を名乗ることになった僕――が屋敷に1人増えたくらいで、困るような人間も気付くような人間も誰もいないとラズベリは言っていた。魔力を解放しすぎないことと、ステータスを詐称する魔法具を身に着けることが必須条件だったけれども。
なお、こっちの世界の爵位は「公爵>侯爵>伯爵>子爵>男爵>準男爵>騎士」となっている。子爵以上が上級貴族だというのは僕が元いた世界と変わらない。
◇
そんな上級貴族のメーン子爵領の主な産業は、農業と水産業。
王都とその周辺の街の住人30万人が消費する食料を生産しているらしい。興味があったから、突っ込んで聞いてみたところ――
農業は広大な平原と湿地を開墾して、主に水稲と野菜を育てているとのこと。
異世界に来て米が食べられるというのは運が良かったかもしれない。
詳しく聞いたら、大豆や小麦を使った味噌や醤油もあるらしい。異世界ではお約束のトマトケチャップやマヨネーズは、まだ無かった。
ちなみに砂糖は高級品とのこと。
一方で、水産業の方は、「ローゼル湖」と呼ばれる大きな淡水湖と、南にある「アセロラ海」の「漁港街ラフレシア」で魚介類を採っているらしい。話によると水棲の魔物が出る水域もあるみたいだけれど、数年前までは上手く棲み分けが出来ていたそうだ。
そこら辺を詳しく聞いたところ、魔物は「魔の領域」と呼ばれる場所に棲んでいて、その領域からはめったに出てこないらしい。山地や森、湖、海、場所は色々とあるけれど、昔から魔素が溜まりやすい場所は決まっているのだという。
ちなみに、各魔の領域ごとに、ボスになっている魔物がいるらしく、ボスを倒すと一時的に他の魔物の活性が大人しくなるという効果があるとラズベリが言っていた。
なお、魔物以外にも街の外には熊や狼といった危険な生き物がいて、こっちは普通に魔の領域外にも生息しているらしい。魔物と動物の違いを聞いたら、魔物の頭には魔核と呼ばれる魔力の集まった宝石が付いているとのことで、魔核の有無によって魔物と動物を見分けることが出来るらしい。
◇
話が、少しそれた。
結局のところ、実はメーン子爵家、数年前から領地経営が上手くいっていないらしい。
Yウイルスのパンデミックが起こる前は、王都の近くというメリットを最大限に生かして近郊栽培が盛んだったらしいし、水産業も安定した量の魚介類を湖や海で採って王都に卸すことが出来ていたそうだ。
それがパンデミックの後に、一変した。
王都という消費地の人口減少により市場規模が小さくなったため、生産圏も王都の周りに縮小してしまったみたいで、お隣のライラ伯爵領に近郊栽培のうま味をほとんど奪われてしまったのだ。そして、そこに追い打ちをかけるように水産業の働き手となっていた経験豊富な漁師の男達が死に、湖や海での漁が出来ない状態になってしまったのだ。
幸い、お隣のライラ伯爵領には水源があまりないため、メーン子爵領は水稲の売上で領地運営を何とか賄っているらしい。あと、余談だけれど、水産物の値段が、王都では従来の5~10倍くらいに上がっているとのこと。絶対的に魚介類の流通量が足りていないことが原因で。
ちなみに、話をしていて知ったのだけれど、この大陸の通貨単位は「円」。
偶然なのか、神様の意図なのか、僕には分らないけれど10進法なところも変わらない。物価の目安としては――並ランクの水稲の末端価格が10キロで2,500~3,500円、大きめの干魚の末端価格が1,500~3,000円。平均的な世帯の毎月の収入は20~25万円。
なお、鉄貨=100円<銅貨=500円<銀貨=10,000円<金貨=150,000円<白金貨=100,000,000円となっている。白金貨の価値が1億円と高い理由は、原料となるプラチナの精製がかなり難しいからだそうだ。事実、ほとんど流通せずに大貴族が税を王国に納める場合に使われたり、国庫の中で死蔵していたり、魔法の武器や防具の触媒にする程度だと言っていた。
シクラとラズベリの話はまだまだ続く。
それを聞き逃さないように、再び、集中することにした。
自分の知識を発揮できるチャンスを、この世界で見付けたいから。
――いや、正確に言うならそれは間違いかもしれない。
僕はすでに、チャンスの欠片を、見付けられたのだから。




