SS_レモンの事後処理
=グラス王国女王_レモンの視点=
今頃、ラズベリ殿とシクラ殿はミオ殿と一緒にいるのだろうな。
「……う~、わらわも、みーたんといちゃいちゃしたいです。大好きって言ってもらって、優しく頭を撫でてもらって、手を繋いで女の子扱いしてもらって、そのままベッ――」
「陛下、口に出ていますよ? 念のため、重大なことを口走る前に、指摘しておきます」
「――っ!?」
リアトリスの言葉で我に返る。
今の言葉を聞かれていた!? 本当に!?
ローズ姉妹が苦笑しながら、首を縦にコクコクしている。
リアトリスとヴィランとローズ姉妹、そしてその側近が相手じゃなかったら、ちょっと死ねるんですけれど!!
「……忘れなさい。女王命令です、忘れなさい」
「御意に♪」「……(ボクも同じく♪)」「「分かりましたわ」」
くそぅ、みんなに可愛い生物を見るみたいな良い笑顔を返されてしまった。何だかちょっと悔しいな――と思っていたら、リアトリスが話しかけてきた。
「それにしても、今回の事後処理は、多すぎますね」
宰相のローズ・マリーも、その言葉に付け加えるように、書類の確認をしながらこくりと頷く。
「私もそう思います。表向きの記録では――“聖女騎士団とメーン子爵家騎士団との『実戦形式に近い合同演習』を実施→その後、自然発生した悪魔を異世界の勇者や星降りの魔神と共闘して撃退→さらに、王城に向かってきた悪魔を討伐成功→終わりと思われた時、『メーン子爵家長女リリーに擬態した悪魔』が勇者を襲撃。勇者は一時的に意識を失う→メーン・シクラ殿、メーン・ラズベリ殿、スプリン・グ・スターフラワー殿、グロッソ・イベリス殿、そして陛下が力を合わせて勇者と共闘し、悪魔と悪魔が召喚した2体の悪魔を迎え討ち、悪魔を完全討伐した”――となりますから。表向きの記録と内部用の記録を作らないといけないせいで、つじつま合わせや情報統制に多大な労力を捌かれています」
一気に言い切ったな、よく息が持つものだ。
そんな感想を持っていたら、宰相補佐のローズ・ウッドも疲れを隠せない顔で、こくりと頷く。
何と言うのか、ちょっと胃が痛そうな様子だ。
「目撃者が基本、聖女騎士団だけだったのが功をそうしています。あたしが思うに、メーン子爵家騎士団の方も、ラズベリ殿への忠誠心に厚い者だけを厳正した部隊だったゆえに、情報漏洩の危険性は低いと考えられます」
「……(近衛だけだったみたいとはいえ、聖女騎士団にぶつけられるくらいの忠誠心って、なかなかいないよね?)」
ヴィランの言葉に、リアトリスも小さく苦笑する。
「今回の戦闘に途中まで参加したことで、レベルも多少、上がっているみたいだしな。ラズベリ卿が味方で本当に良かったよ」
「あら、ラズベリ殿は妻仲間ですよ? わらわを裏切ることは――ミオ殿を裏切ることは、ありませんよ?」
わらわの言葉に、リアトリスとヴィランとローズ姉妹が顔を見合わせる。
「どうしたのです?」
「いえ、何と言うのか――」
言い淀んだリアトリスの言葉の続きを、ヴィランが補う。
「……(陛下がここまで無条件で信用するなんて、天が降ってくるんじゃないかって思います、正直に言うと)」
その言葉にローズ姉妹も苦笑する。
「陛下は腹黒いですからね」「姉様に同じく」
まことに遺憾だ。
わらわをどんな人間だと思っているのだろう?
「4人とも失礼ですよ? わらわは人を見る目はあるのです!」
=リアトリスの視点=
色惚けという言葉が脳裏をよぎる。
陛下は恋に盲目になっているのではないだろうか?
……まぁ、今は良い。幸いグロッソ帝国の皇女であるイベリス様とも、強い同盟関係が出来たし、事態が動くまでにはいつもの陛下に戻ってくれるだろうなという予感はあるから。
「それにしても――“みーたん”か……」
ちょっとだけ、陛下が羨ましい。




