第38話_理由
=三青の視点=
会話の途中だったから、ミクニ先生が遺した資料をこれ以上読むことはしないけれど、1つ思いついたことがある。ソレが実現できるかどうか、確かめてみたい。
「ねえグスター。単為生殖の魔法書って何冊かあるんだよね? 少し読んでみたいと思うのだけれど、今、借りられるかな?」
僕の言葉に、グスターが、しょぼんとした表情を浮かべる。あ、いけない。会話に参加できていなかったから、落ち込んでいる?
――と思ったけれど、グスターの口から聞こえたのは意外な言葉だった。
「ご主人様に貸してやりたい気持ちは山々なんだけれど……悪い。単為生殖が書いてある魔法書、魔法箱の中を探しているんだけれど、全然見つからないんだ」
「えっと……グスターさん、無くしちゃったんですか?」
「ううん、違うぞ、シクラ。魔法箱に入っているのは間違いないと思うんだ。でも魔法箱は上の方しか整理していないから、下の方はアイテムが入り乱れてぐちゃぐちゃなんだ……本当に、ご主人様、ごめん……」
「グスターさん、お片付けしておきましょうよ♪」
元気づけるように軽い調子で言ったシクラに、グスターが唇を尖らせた。
「いや、封印されていた間にやろうと思っていたんだ。でも、実際、どれだけ時間があっても終わらなくて。大体、数が多すぎるのがいけないんだ」
片付けられないことを棚に上げた、ちょっと逆切れ気味の言葉に、ラズベリが苦笑する。
「グスターちゃんは、どれだけアイテムを持っているんです?」
「う~ん、2,000年×3,000アイテム×365日分は、最低でもあるな♪」
ざっと21億9,000万アイテム。
それに気づいたラズベリが顔を引きつらせる。
「……なんでそんなに多いんですの?」
「いや~、ほら、土地神とかしていると貢物が毎日のようにやって来てだな。城の宝物庫に入りきらなくなったから、魔法箱に入れるようにしたら溜まってしまったんだ♪ 光りモノも鉱石も武器も防具も色々あるぞ? 食料だけは、傷みそうだったから原則入れてなかったけれどな♪」
得意げなグスターとは対照的に、ラズベリとシクラは少し困惑した表情を浮かべた。
「グスターちゃんは、ちょっとした“鉱山”ですね。アイテムの発掘のやりがいがありそうです」「グスターさん、必要なモノだけ持つようにしましょうよ?」
「ああ。でも、魔法箱の中身はシクラ達には見えないだろ? どうしたら、たくさんのアイテムを仕分けできるか? なんか良いアイディアがあったら、教えてくれ♪」
「それは――」「難しいですね……」
言葉に詰まるラズベリとシクラ。
うん、前々から思っていたけれど、グスターの魔法箱は事実上、チートな道具が満載な4次元ポケットだ。本人は自覚も把握もしていないみたいだけれど、そのうち、どこにでも繋がるドアとかタイムマシンとか出てきそうだからちょっと怖い。
下手にアイテムを仕分けしたり、発掘したりすると、世界のパワーバランスや市場の相場が崩れる可能性があるし――グスターを封印した神々から目をつけられる原因にもなりそうだから、一応、注意しておいた方が良いのかも。とはいえ、グスターのアイテムを活用しない手は無い。
グスターには、神々に目をつけられない程度に、便利な道具を発掘してもらいたいなと思う。
――とか考えている間にも、グスター達の会話は続いていた。
「お片付けして使える状態にしておかないと、持っている意味が無いですよ?」
「でもな~、シクラはそう言うが、事実上、記憶にないアイテムをどうやって発掘したら良いんだ?」
「それは……毎日、少しずつお片付けするしか――「それは無理だ、シクラ。グスターが封印されていた200年で片づけられたのは、上部の20,000ページ弱しかないんだから。最初の001~100ページを片づけて、次の101~200ページを片づけて、そして201~300ページを片づけている間に、最初の001~100ページが散らかるんだ」
「穴を掘っては埋めて、また掘っては埋めて――みたいな感じですね」
ラズベリの言葉に、シクラも苦笑する。
「精神的に大変そうですね……」
「分かってくれるか? 本当に、片づけるのは大変なんだ」
遠い目をしているグスター。多分「地獄の石積み」みたいなんだろうな、と思った僕の感想は間違っていないと思う。
下手したら明日は我が身かもしれない。僕も、無限収納を持っているのだから。
――って、あれ? 僕の無限収納は、そんな不便なスキルじゃないよ?
感じた疑問をグスターに投げかける。
「ねぇ、グスター。魔法箱には、『ソート機能』や『検索機能』は付いていないの?」
「検索は聞いたことあるけれど……『そーと?』ってなんだ、それ?」
「アイテムを『あいうえお順』に並べたり、種類ごとに分類したり、使用頻度に応じて上の方に持ってきたりする機能をソートと呼ぶんだ」
「そんな便利なスキル、グスターは持っていないぞ? ――と思ったけど、『アイテム並べ~!!』と頭の中で念じたら、種類ごとにあいうえお順になった! ソートってすごいな!! 食べ物はもう残ってないと思っていたが、500~2000年前のチーズやワインや干し肉が大量に出てきたぞ♪」
その干し肉とチーズは食べたくないな……。
グスターの尻尾がふりふりと元気いっぱいな理由はあえて聞かない。
自己責任でチャレンジしてもらいたいと思う。
……。
巻き込まれると嫌だから、話題を切り替えよう。
「グスター、ちなみに魔法書は見つかった?」
「魔法書は――あった! ふむふむ、全部で……」
ビシリッと石像のようにグスターが固まる。
「? 固まっているけれど、どのくらいあったの?」
「1万5263冊もある……otz」
「いちまんごせん、ですか!? 魔法書がそんなにも!?」
シクラが興奮した声を上げた。グスターの年齢は5682歳だから、年に3冊程度の収集。むしろ少ないほうだろう。
「いや、慌てないで次のタスクに行こう。その魔法書の中から、検索機能を使って『単為生殖』というタイトルが入った本を拾っていくんだ」
僕の言葉にグスターが頷く。
「分かった。『単為生殖』で検索だな? ――よしっ! 検索、出来たぞ♪ 単為生殖とタイトルに書かれた本は……あれ? たった3冊だ」
「意外と少ないですね?」
シクラの言葉にグスターが首を縦に振る。
「ああ。もっとたくさんあったはずだぞ? アマゾネス達に魔法をかけるときも、一度に20冊くらい読んでから、魔法箱の5000~25000番台のスペースに順番に放り込んだ記憶があるからな♪」
「グスターさん、そんなことするから、見つからなくなっちゃうんですよ」
「でも、空いているスペースが無かったんだよ、多分、きっと、絶対に!」
シクラと話をしているグスターに、アドバイスをしてみよう。
話が先に進まないから。
「グスター。今度は、検索機能を使って魔法書の本文の中から『単為生殖』という文字列が入った本を拾っていけるかな? 多分、それでヒットすると思うよ」
「分かった。それでご主人様の知りたい情報が手に入るんだな♪ やっぱり、グスターは役に立つのだ! やってみる――ん? あれ?」
ちょっと得意げにピコピコ動かしていた耳を止めて、グスターが固まる。
「……あれ? できないぞ? あれ?」
グスターが少し涙目になって、僕を見つめてくる。
「……ご主人様……ごめん……やっぱり無理っぽぃ。……魔法書の中の文字を検索しようとすると、魔法箱のメニューが閉じてしまぅ……」
グスターの瞳に、光るモノが溜まり始めた。
「グスター、肝心な時に、ご主人様の役に立てないダメな子――「そんなこと無いよ♪ 大丈夫、僕が何とかするから」――えぅ?」
グスターの隣に立って頭をくしゃくしゃっと撫でてから、言葉を続ける。
「検索しようとすると、エラーになるのかな? 強制終了する感じ?」
「えらー? きょうせいしゅうりょう? ……良く分からない」
自信無さげなグスターの頭を、もう一度優しく撫でる。
グスターが僕の方を見て、小さく尻尾を揺らす。
「ごめんね、メニューが閉じちゃうんだよね?」
「うん。メニューが閉じるんだ」
となると、エラーじゃなくて、魔法箱のメモリ不足かもしれない?
「……グスター、もし良かったら魔法書だけを、一時的に僕に貸してくれないかな?」
「ご主人様になら、丸ごと全部あげても良いぞ?」
さっきまで泣きそうになっていたくせに、こういう時にドヤ顔をするのは、やめて欲しい。
シクラとラズベリ、めちゃくちゃ反応しているし!
……。
正直、グスターは丸ごと全部食べちゃいたいくらい可愛いけれど――今は、横に置いておこう。食べるのは3ヶ月後まで我慢だ。大人の対応をしよう、がんばれ、僕!
「ほ、本は検索するためだから、一時的に借りるだけで良いよ?」
くっ、声が震えた。
ラズベリが小さくクスリと笑った。
――けれど、グスターとシクラは気づかなかったみたいだ。
真面目な顔でグスターがこくりと頷く。
「分かった。本を1つ1つ取り出すのは大変だから、グスターの魔法箱とご主人様の無限収納を繋ぐ方法で良いか?」
「あ、やっぱり、魔法箱とか無限収納ってそういう使い方もできるんだ?」
「もちろんだぞ。そうじゃないと、物資の移動とかが大変だからな。ご主人様、無限収納の入り口を開いてくれ。量が多いから、直径5メートルくらいのが欲しい」
グスターに言われて、金色の魔方陣――無限収納の入り口――を開く。
特に何かが必要というわけではない。頭の中で「無限収納、開け」とイメージするだけで、僕の近くに無限収納の入り口を開くことができた。
「それじゃ、どんどん魔法書を入れていくぞ♪」
グスターが僕の無限収納の入り口の上に魔法箱の出口を作って、魔法書を取り出していく。おもちゃ箱をひっくり返したかのように、大量の本が魔法箱の入り口を通っては金色の魔方陣に吸い込まれていく。と、同時に僕の無限収納の魔法書欄にも、どんどん魔法書が追加されていく。
――3分程で本の移動が完了した。
早速、メニュー画面経由で本の中身を『単為生殖』で検索してみると、236件の該当する魔法書がヒットした。加えてグスターに教えてもらった詠唱の冒頭部分をキーワードに設定して絞り込み検索をする。
良しっ! ヒットした魔法書は58冊。ざっとタイトルに目を通した感じ、重版とか改訂版みたいな感じでダブっている魔法書も含まれる。
「グスター、ありがとう。単為生殖が載った魔法書、見つけられたよ」
「マジか!? 早いな」
「それじゃ、本を返したいのだけれど――」
「いや、ご主人様が持っていていいぞ? これからも、研究に使ったりするだろ?」
「言っていなかったけれど、無限収納に一度入れたらコピーが取れるんだ。だから、もう大丈夫だよ」
「そうなのか。それはすごいな。――んじゃ、返してもらおうと思う」
今度はグスターが魔法箱の入り口を広げて、そこに僕の無限収納を逆さまにして繋げる。
「それじゃ、行くよ?」
「バッチこい♪」
属性やジャンルごとに整理した上で、グスターの魔法箱に本を送り込む。
どこか誇らしげな顔で、ふりふりと規則的に尻尾を揺らすグスターが、何だかとても可愛く感じてしまった。
◇
本当にざっとしか見ていないけれど――検索機能で欲しい情報しか見ていないけれど――単為生殖の魔法書を読んで分かったことがある。
グスターの言っていた通り、アマゾネスやサキュバスといった女性しかいない魔族は、単為生殖を使うと安産になる傾向があるらしい。
人族や獣人族みたいに「男がいる種族の女性」に単為生殖をかけた場合でも、子どもは生まれるらしい。でも、その場合は女の子しか生まれないから注意が必要だと書かれていた。
これは僕の勝手な予想だけれど、女性はX染色体しかないから、XXの組み合わせである女の子しか生まれてこないのだと思う。
で、問題なのは単為生殖の魔法が安全であるかの確認方法。
魔法書の記載では人族や獣人族、天使族や魔族といった「主だった種族で実際に単為生殖を使う場合の注意点」という項目があるけれど、それをどこまで信用して良いのか分からない。まず、鵜呑みにしたらいけない気がする。
人に近いアマゾネスでは何万人と大丈夫だったと言われても、そこは一応、魔族。人族や獣人族とは「魔法に対する耐性」が違ったりするんじゃないのかなと思う。闇雲に人体実験をする訳にはいかないけれど、ある程度安全だろうという領域まで来たら、どうしても「治験」が必要だ。子どもが欲しいという志願者を募って治験の目的、方法、予測される副作用を説明して……うん、想像するだけで大変そう。今は、そっと横に置いておこう。労力も、精神的にも、ヤバそうだから。
頭を切り替えて、グスターから借りた単為生殖の魔法書を急いで比較する。
本来は、これが一番の目的。ミクニ先生の資料のおかげで気付くことができた方法。
僕の予想が正しければ――
――うん、思った通りサキュバスとアマゾネスでは、一部の言い回しが異なっている。「森と水の民」とか「宵闇の住人」とかいう風に。他にも、魔力を込める量やいくつか言い回しが違っている部分がある。
それは言いかえると「異なる部分を手がかりにすれば、人族や獣人族用に改良することも可能」ということを意味する。実際、いくつかの魔法書にはサキュバスとアマゾネス以外の魔族に使える詠唱の記載がされているから、現時点でも改良点がいくつか頭の中に思い浮かんだ。
おかげで確信できた。今なら、はっきりと言うことができる。
単為生殖で人々を救えると。
「シクラ、グスター、ラズベリ。今、単為生殖の魔法書を比較してみた結果、人族や獣人族にも安全に使える内容に、単為生殖を改良できる可能性が高いことが分かったよ」
「ミオさま、本当ですか!? こんな短時間で魔法の解析もできたんですか!?」
「うん、魔法を0から開発するのは難しいと思うけれど、幸い、手元にはミクニ先生の残してくれた資料があったし、グスターから借りられた魔法書が何冊もある。アマゾネスやサキュバスや他の魔族が使う単為生殖の魔法は、微妙に詠唱内容が違うところが有ったんだ。その違いは種族の違いを示しているから、あとは種族による『魔力量の違い』や『特徴』を比較して洗い出せれば、人族や獣人族用に改良できると思うんだ」
=ラズベリの視点=
「ぅふふっ♪」
規格外過ぎて、思わず笑ってしまいました。
魔法を知ってたった2日で。そう、たった2日で。分析や改良が出来るなんて、わたくし達の夫は、本当に頼もしいです。
おまけに単為生殖を安全に改良できるなんて、女王陛下との交渉も、もらったも同然じゃないですか。女王陛下との交渉が決裂しそうになったら、単為生殖を手土産に、他国や他大陸に亡命するって言うつもりでしょう。
でも、今、口にするのは称賛の言葉では無いです。称賛はシクラ達に任せて――わたくしは、わたくしの役割を果たしましょう。
具体的には、現実を見た言葉が今は必要ですから。
「ミオさんが単為生殖の安全性を確保できると仮定したら――女王陛下との交渉は、ほぼ確実にまとまりますね。残りの課題は、対外国との調整問題です。グラス王国だけなら女王様の決断で単為生殖を普及出来ますが、それを知ったグロッソ帝国や、何よりも神を崇めるソリウム聖国からは、非難が出ると思われます」
「ラズベリ、そこはグロッソ帝国やソリウム聖国にも単為生殖の魔法を伝えるということで収まらないかな? 人口減少で困っているのは変わらないと思うし」
「受け入れるでしょうか? 特に、ソリウム聖国の神々は、邪法だと言って糾弾するかもしれません」
わたくしの言葉に、ミオさまが頷きます。
「そうだね、ラズベリが言う通り、邪法扱いされると僕も思う。でもさ、目の前に打開策があるのに、邪法だからといって、みすみす手を出さないで放置するってことは、各国とも出来ないと思うんだ。このまま人口減少に何も手を打てなければ、南大陸の国々は衰退するしかないのだから。それに――グラス王国の人口だけが増えると、他の国は困るでしょ?」
思わず、自分の口元が緩んでいるのが分かってしまった。
いけない、ミオさんに悪女だと思われないでしょうか? いや、思われても良いです。ミオさんは、そんなわたくしも愛おしいと愛でて愛してくれるでしょうから。
「ミオさん、それはまるで脅しているみたいですよ。受け入れないと、グラス王国が攻めてくるって♪ ――女王陛下や諸外国の代表の方にもそう言うんですか?」
「ラズベリ、脅しじゃなくて『説得する』と言って欲しいな。でも、事実、女王様にも諸外国の代表にも拒否権は無いよ。このままじゃ色々な意味で不味いから」
「色々な意味で、ですか?」
「ラズベリ、想像してみて。単為生殖が東大陸の魔族に伝わる魔法っていうことから考えると、東大陸の一部の国は、人口減少問題を解決する方法としてすでに単為生殖を取り入れている可能性があるんだ。これが意味することをラズベリは分かる?」
「え? 東大陸では人口減少問題が解決した。それが意味することは――」
ミオさんの言葉を繰り返して、初めてソレに気付きました。それ以上の言葉が出ませんでした。全身から冷や汗が吹き出します。
気が付くと、手足が震えていました。
「ミオさま? 東大陸に子どもが生まれて、みんなが笑顔になれるんじゃないんですか?」
不思議そうにシクラが言います。
シクラは優しい子だから、イメージが出来なかったのでしょう。
コレは、本気で――急がないとまずいことになります。
=三青の視点=
深刻な顔でラズベリが口を開いた。
「わたくしが感じたことを単刀直入に言います。このままでは15年~20年後、全大陸を巻き込んだ大規模な戦争が起こります。ミオさんはそう言いたいのですよね?」
「なにっ!?」「お母さま、それは本当ですか!?」
グスターとシクラが驚いたような反応をする。
「大陸中のほどんどの国で人口が減少していく中、東大陸の国々だけが人口を増やしているとしたのなら――その戦いは一方的なものになります。全大陸の国々は、東大陸の国に飲み込まれて消えることになるでしょう」
ラズベリの言葉は間違っていない。僕が言いたかったことをほぼ的確にとらえている。
でも、グスターとシクラは理解が追い付いていないみたいだから、補足した方が良いのかもしれない。
「東大陸の国じゃ人口が増えているのに、他の大陸の国じゃ人口は減る一方。しばらくはYウイルスの影響でどちらも、戦う余裕も戦う必要も無いのだけれど、それが10年や20年過ぎたらどうなるのだろう? ――東大陸の国は人口増加で戦力も十分。他の大陸の国は人口減少と高齢化で兵力は望めない。もしも、シクラやグスターが東大陸の国の代表者ならどうする?」
「「それは――」」
僕らが聖女騎士団から逃げちゃいけない理由。
単為生殖を広めないといけない理由。
単為生殖が世界を救うことになる理由。
ソレをまとめて飲み込むように――全ての音が途切れた。
沈黙が、ゆっくりと部屋を包む。




