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第32話_なかまとめ

=三青の視点=


とりあえず、グスターとじゃれていたせいで、話が別の意味(・・・・)で危険な方向に行ってしまったから軌道修正をしておきたい。


ラズベリとシクラ、グスターが「王城への移動方法」や「逃走方法」について話をしているけれど――その話題には加わらずに、ここまでの内容を頭の中でまとめてみる。


===

①聖女騎士団との話し合いは、リアトリスさんが出てこないと原則無理。

②単為生殖を広めるためには、戦闘が基本的に不可避。勝利条件は、相手を殺さずに制圧すること。

③戦闘に参加するのは僕とグスターの2名。ラズベリやシクラを含めて、他の人の参戦は要検討。防御貫通や即死攻撃もあるから「安全第一(いのちを大切に)」で行動すること。


④聖女騎士団を制圧後、時間を置かずに、単為生殖の話でリアトリスさんや女王様を説得する。(制圧や説得に失敗したら、縛り首or斬首or国外逃亡コースが待っているので要注意!)具体的には、グスターの瞬間移動で王城まで飛べたら理想的。(今、ラズベリ達が話していた)


⑤危ない状態になったら、グスターの瞬間移動で城から脱出すること。いざとなったら、僕やシクラの逃亡計画を活かしてエリカ・マジョラム伯爵領を経由した後、他大陸へ逃亡する予定。(これも今、ラズベリ達が話している)

===


こんな感じだろうか?

結構、穴だらけな計画だから、細かいところを今から詰めていこうと思う。

ちょうど、ラズベリ達の話も一段落ついたみたいだし。


「ラズベリ、念のために聞くけれど――やっぱり聖女騎士団は1人でも殺しちゃ不味いよね?」

「逆に聞きますけれど、ミオさんは聖女騎士団員を殺すことが出来ますか?」

どこか僕を試すような表情のラズベリ。妖艶という言葉がぴったりな、悪戯っぽい顔をしている。


視線を交換しながら、少し考えて、首を横に振る。

「無理かな……って思う。情けない話だけれど、相手が怪我をするって分かってしまうから、普通に剣を振るうことさえ厳しいかもしれない」

小さくラズベリが吐息を漏らす。

「ミオさんは、優しすぎます。そういうところ、嫌いじゃないんですけれどね」

「ありがとう。……いや、ごめんっていうべきかな?」


僕の言葉にラズベリが仕方無いといった様子で微笑んで、ゆっくりと口を開く。

「ありがとうで良いですよ。でも、聖女騎士団員のHPを削らずに無力化するとなると、非殺傷系の魔法やスキルを使うしかないですよ? HPが高い状態だと魔法やスキルが通りにくいですから、結構、ミオさんやグスターちゃんの負担になる戦い方になりますけれど……大丈夫ですか?」


「う~ん、やっぱり負担は増えるよね。でも……僕は感情的な部分だけじゃなくて打算というか計算した上でも、大怪我をさせたり、殺したりしちゃ、いけないと思うんだ。ここで死人や怪我人を出したら、せっかく単為生殖の普及に協力して欲しいと提案するのに、女王様への印象が悪くなるし、将来にわたって聖女騎士団と禍根を残す可能性も低くないと思うし」


僕の言葉に、ラズベリが真面目な表情で、こくりと頷く。

「交渉を不利にしないためにも殺さない。――そういう考えも確かにありますね。ローリエ以下城の武装メイドや兵士達にも、制圧した聖女騎士団員を殺さないように伝えておきます。レベル120オーバーの聖女騎士団員と戦えるのは、実質ミオさんとグスターちゃんしかいませんけれどね」

「出来れば、お城のみんなは聖女騎士団と接触しないでいてもらえると嬉しいかも。剣を向けたら反逆者扱いになるみたいだし」

「足手まといは邪魔ですか?」


真っ直ぐな瞳でラズベリが僕を見つめてくる。

その隣で、シクラも同じような顔をしていた。

「……それは――「はっきり言うと邪魔だな。グスターとご主人様の邪魔になるやつは要らない。それは、ラズベリやシクラも含まれる!」」

グスターがきっぱりと断言した。

もうちょっと、オブラートに包もうよ。


ラズベリが、仕方ない、といった表情で苦笑する。

「そうですね、昨夜からの連戦でわたくしやシクラのレベルが上がったとはいえ、流石に聖女騎士団を相手にするのは厳しいです。でも、わたくしとシクラとローリエはミオさんやグスターちゃんの近くにいますよ? そうじゃないと、一緒に逃げられませんから」

「うむっ♪ そう言われると確かに、一緒にいないと逃げられないな。ちなみに、ラズベリ。逃げるとした場合は、正直どのくらいの人数で逃げる予定なのか? あんまり多いと、瞬間移動の制御が難しくなるから――あ、でも一応、今日の昼間くらいの人数なら余裕だぞ?」

グスターの言葉に、ラズベリが即答する。

「ここにいるメンバーに、ローリエが加わる程度を考えています」

「意外と少ないな?」

少し驚いた表情をグスターが浮かべる。


ラズベリが苦笑しながら、ゆっくりと口を開いた。

「グスターちゃんの負担にならないように、あと隠密行動が可能なように、少人数で脱出予定です。――本当は、武装メイドや兵士達は全員連れて行きたいのですけれど」

ラズベリの言葉にシクラが頷く。

「人数が多い方が、旅も安全ですものね」

「シクラ、違いますよ? そういう意味で言ったのじゃなくて――「連れていけないやつらは、反逆罪でそのまま死刑になる可能性が高いからだろ?」――そうですね」

「ぇ……?」

シクラが固まる。頭の中で色々なことが駆け巡っているのだろう。


僕も、残った兵士がどうなるのか分かっていたけれど、言葉にされると複雑な気持ちになってしまった。まだたった2日しか一緒にいないけれど、この城のメイドさんや女性兵士の人達は、みんな温かい人達ばかりだから死なせたくない。


重い空気を変えるように、ふりふりと、グスターが尻尾を振った。

「シクラ、暗い顔をするな。そうならないように、グスターとご主人様が頑張るから!」

優しい笑顔のグスターに、シクラが再起動する。

心なしか、その表情は明るくなっていた。

「……はいっ! お願いします!」


頭を下げたシクラを見て、ラズベリがため息をついた。

「もう少し、わたくしのレベルが上がっていれば、他にも手が打てたかもしれないんですけれどね……」

少し気になったから、あと、話題を変えたいから――ラズベリに聞いてみることにした。

「ラズベリのレベル、どのくらい上がったの?」

「グスターちゃん戦や桃色水竜戦、水神戦に居合わせたおかげでレベルが82から93に上がりました。おかげで、多少は自分の身を守ることが出来るかと思います」

少し自慢げに笑うラズベリ。

その言葉に被せるように、シクラが口を開いた。

「あ、言い遅れましたけれど、私もレベル69になっていますよ♪」

「えっ? 一昨日の時点じゃ、レベル32だったよね? レベルってそんなに簡単に上がるものなの?」

僕の驚きの声に、シクラが苦笑する。

「いえいえ、ミオさま、普通は簡単には上がらないものですよ。一昨日から入ってきた経験値が異常なだけです。だって、グスターさん戦で42に上がって、青色ドラゴンとの戦いで一気にレベル69に上がりましたから」

「それは、何と言うのか――いや、レベルが上がることは、良いことだと思う」


「はいっ♪ でも――『人物鑑定スキルを持つミオさまが、いつ気付くのかな?』って楽しみにしていたのに――全然、気付いてくれないなんてひどいです!」

シクラが冗談っぽく言って、アヒルさんに変身した。

「あはは……ごめん」

「後で埋め合わせして下さいっ♪ 眠る前に、ぎゅ~って、抱きしめて下さい!」

にぱっと笑うシクラに、思わず笑顔になっていた。

「了解。楽しみにしておく」

「はいっ!」


嬉しそうなシクラにもう一度笑顔を返して、グスターの方を見る。

「ちなみに、グスターはレベル上がっている?」

「グスターのレベルか? ――あ。今、気付いたけれど532になっている! ご主人様は? ご主人様はレベル上がっているのか!?」

やっぱりレベルが上がるのは嬉しいのだろう、尻尾をパタパタしているグスター。

無視する訳にはいかないから、改めて、メニューで自分のステータスを見る。


うん、経験値は増えているけれど、ステータスの数値は一昨日から変わっていない。

「僕は変わらないみたい。1025のままだから。――ってあれ? 今、ふと思ったんだけれど……ラズベリやシクラやグスターのレベルが上がっているってことは、同行していたローリエや、マーガレット達3人、オリーブ達4人もレベルが上がっているのかな?」

僕の疑問にラズベリが補足をしてくれる。

「そうですね。わたくし達と同様に、桃色水竜や水神のブレスを受けていましたから、レベルが上がっていないということはあり得ません」


ラズベリの言葉に続けるように、シクラが口を開いた。

「私が見た限りでは、ローリエはレベル72、マーガレットとミントとメープルもレベル69、オリーブとアジュガとサフィニアとバジルもレベル68~73に上がっています」

「やっぱり。でもさ――水神戦の後に、ローリエとオリーブ達が戦っていたけれど、あの時にはもう、レベルが上がった後だったんだよね? 本人達は気付かないものなの?」

僕の言葉に、シクラが軽く腕を組む。ラズベリには及ばないけれど、ももきゅ~なアイデンティティに目線が行ってしまった。

……。

真面目な話をしているんだから、桃色水竜は頭の中から追い出そう。

そう思い直して、シクラの目を見ると――あ、どこか嬉しそう。

バレた? バレてる? バレてました?

……ちょっと凹む。


「えっと、ミオさま?」

「ごめん、シクラ、話を続けて」

少しだけ、シクラがしゅんとした顔になってから、言葉を発する。

「……はぃ。えっと――敏感な人は剣が軽くなったとか、魔力が増えたとかいうことに気付くみたいですが――基本的には街に戻って『鑑定石』に触れるまで、レベルやスキルの確認は出来ないことになっています。戦う時にローリエはレベル40って言っていましたけれど、あの時にはもう、レベル72に上がっていたと思います」


「そうなんだ。――ちょっと気になったんだけれど、『鑑定石』っていうのはステータスを表示してくれるの?」

「はい。30センチ×45センチくらいの四角い石の板なんですが、鑑定石に手の平を置くと人物鑑定と同じように、触った人のステータスを表示してくれるんです。この城だと兵士の訓練所にもありますし、街中ですと冒険者ギルトに必ず置いてあります。興味があったら、明日の朝にでも触ってみますか?」

シクラの提案に首を縦に振る。

「そうさせてもらおうかな。今朝、ラズベリから借りた『偽りの賢者の首飾り(詐称する魔法具)』の性能も知りたいし」


一応、メニュー画面から確認できる限りでは、僕のレベルは89、HPやMPもそれなりに抑えられているみたいだけれど、本当に客観的なステータス鑑定でも大丈夫なのか、一応、知っておきたい。他の街に逃げて、いざ鑑定石を触ってみたらレベル1025でしたとかいうのは避けておきたいから。


 ◇


――これは後日談になるのだけれど。


艶のある平らな黒い石の表面に、白文字でステータスを浮かび上がらせる技術は、どうなっているのか想像もつかなかった。

ちょっとだけ、鳥肌が立ったのは、多分気のせいじゃない。


鑑定石は、大型のタブレットにとてもよく似ていた。

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