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第12話 幼馴染みvs従姉妹

「来週の体育祭の出場競技を決めましょう。じゃあ朱音ちゃん、よろしくね」


千智先生に促され、朱音ちゃんは教壇へ。


「まずは陸上競技の方から決めるね。えっと陸上には100mリレーと借り物競走と……」


うちの体育祭を大まかに2つに分けると陸上と球技となる。

それぞれクラス40人の約半々が出場し、それらの総合結果で順位を付けるのだ。


「光ちゃんは何出るの?」


月乃に聞かれたので、球技、出来たらバスケがいいかなと言っておいた。


実際の所、何でもいいけどやるんだったら球技がいい。


月乃はじゃあ私もバスケにしよっかなと言っているが大歓迎だ。

月乃の運動神経は並の男子より優れているし、きっと主戦力として活躍してくれる事、間違いないからだ。



「次は球技を決めるよ。今年はバスケ、バレー、ソフトが種目で、人数は知ってると思うけどそれぞれ5、6、9人だね。じゃあバスケをやりたい人は…」


ここぞとばかりに手を上げる。

月乃もやる様で手を上げている。



結局僕と月乃、それにバスケ経験者の宮内君と鈴木君、そして紫苑さんがバスケに出る事に。



他の球技のメンバーも決まった所で、千智先生は朱音ちゃんを席に戻すと、黒板に何やら書き始めた。


なになに…

『姫と騎士と時々、兵士』

何これ?


「千智先生、これって何?」


生徒の1人がそう聞くと、千智先生は胸を張り、こう答えた。


「善くぞ聞いてくれたね。これは今年の体育祭のメインで、これの勝敗で優勝が決めると言っても過言ではない代物だよ」


おぉー。

千智先生の言葉に歓声が沸き上がる。


「内容は、簡単に言うと鬼ごっこの様な物ね。そこに姫と騎士、兵士って言うポジションがあって、騎士が姫を守り、兵士が相手の姫を捕まえる。そんな感じかな」


千智先生の話を要約してみよう。

この『姫と騎士と時々、兵士』は兵士が鬼、姫が子、騎士は姫を守るという鬼ごっこらしい。


「その通りだよ光君。流石だね〜」


お褒めいただきありがたいのですけど、皆に知られますよ、独身術。


「それもそうだね。うん、これからは気を付けるよ。ありがとう、光君」


気を付けてないって…。

それに独身ってからかったのにスルーだし…。

千智先生は天然なんですね。

今まで気付かなかった。


千智先生に対する、認識が高まった所で姫と騎士を決める事に。


「じゃあその姫と騎士だけど、月乃ちゃんと光君でいいよね」


千智先生の意見に頷く一同。

横を向くと顔を押さえた月乃が

「私が姫で光ちゃんが騎士…。私だけの騎士…。ふふっ」

と何処かの世界にダイブしている。

後ろを向くと、紫苑さんと朱音ちゃんがニヤニヤと僕を嘲笑している。


某坊主の様に考えてみよう。


 ポクポクポクチーン


よし、一旦落ち着かせよう。


そう思い立ち上がると、

「おっ、光君。『私が姫をお守りします』とでも言うの?」

千智先生にからかわれてしまった。


怒る気もやる気も萎えてしまい、席に座るとチャイムの音が。


「各自、自分の種目の練習をゴールデンウィーク中にでもやっておいてね。それでは、さようなら」


千智先生はそう言うと、朗らかな笑顔を浮かべながら、スキップで教室を去って行った。


 その結果、僕は騎士に月乃は姫になってしまった。



「はぁ…」


「どうしたの、光ちゃん?」


帰路の途中、月乃にそう聞かれたので何でも、と適当に返していると家に到着した。


ドアノブを回そうとしたら、月乃に

「鍵掛かってるから開かないよ」

と言われ、ドアノブに体重を掛けつつ、鍵を鞄から取り出そうとした。


ガチャリ


扉が開いた。


朝、鍵は閉めてきた筈…。

月乃も鍵が掛かってると言っていたし…。


となると、この現象は何故に?


「もしかして…泥棒?」


月乃が怯えた様子でしがみついてくる。


正か、と思ったものの、有り得ない話ではない。

最近は物騒なご時世だから、こんな真昼間でも泥棒は出稼ぎに出ているかもしれない。


「月乃、絶対に僕から離れないでね」


月乃にそう言い慎重に玄関に上がり、耳を澄してみたが物音1つしやしない。


荒らされているとしたらリビングなので、ゆっくりと近付く。


月乃は僕の制服をギュッと強く握っている。

大丈夫だよ、と頭を撫でていざリビングへ。


勢い良く扉を開け、部屋を見渡すとソファに少女が。


はぁ…。

良かった、泥棒じゃなくて女の子か…。

一安心だ。


「あっ、帰って来たんだ。おかえり〜」


誰だか分からないが、礼儀として挨拶し返す。


「ねえ、月乃。あの子知ってる?」


「ううん、知らないよ。光ちゃんの知り合いじゃないの?」


うーん…。

謎は深まるばかりで。


仕方ないから聞いてみた。


「ねえ、君誰?」


「えっ…私の事忘れちゃったんだ…。お風呂に一緒に入ったり、一緒に一夜を過ごした仲なのに…」


とんでもない解答が返ってきた。

言っておこう。

僕はそんな事は決してやってない……筈。


兎に角、僕は無実だ。

だけど、月乃はどうしても僕を有罪にしたい様で。

物凄く冷たい視線を感じる。


此所は否定しなくては。


「月乃、僕はそんな事してないよ。君、僕達はそんな関係じゃないよね?」


 「………ぽっ」


じぃ〜〜。


月乃が穴が開く程睨んでくる。


ダメだこりゃ。

僕の言葉ってそんなに信憑性ないんだ…。

まあ、そこの女の子が顔を赤らめてるから仕方ないけど。


手も足も出ない状態で、ため息を吐いていると女の子が立ち上がった。


「もう、光兄ぃったら本当に私の事、忘れてたの?」


ん、光兄ぃ?

うーん………あっ!


「もしかして、郁那かな?」


「やっと思い出したかぁ。まったく光兄ぃは昔からちょっと抜けてるんだから。」


やっぱりそうか。

暫く見ない内に、随分と変わってたから気付かなかった。


一人納得していると、月乃の疑惑の視線が強くなった。


説明しよう…。


「月乃、この子は僕の従姉妹の福元 郁那って子。まあ血は繋がってないけどね」


月乃は従姉妹なのに血が繋がってないという矛盾に頭を抱えている。


「郁那は母さんの弟の久遠くおんおじさんの結婚相手の悠希ゆうきおばさんの連れ子なんだ」


長い科白を1度も噛まずに言え、ちょっと感激していると

「だから結婚出来るんだよ、私達♪」

郁那が腕を絡ませそう言った。


それを聞いた月乃は、何だかプルプル震えている。

そして突然立ち上がり、

「何言ってるの?光ちゃんと結婚するのは私なんだから!」

と叫んで郁那を引き離す。


貴女も何言ってるの?


そんな疑問もそっちのけで不毛な言い争いを始めてしまった。



とりあえず、此所から逃げだそうと抜け足差し足忍び足でリビングを出ようとした。


しかし体が前に進まない。

足は踏み出している。

だけど進まない。


ビクビクしながら後ろを振り向くと、鬼の形相をした月乃と郁那が青筋を浮かべ、僕の襟を仲良く掴んでいた。


……2人共、仲良くなったんだね。

良かった…良かった…。


心の汗が頬を濡らしそうだったけど、2人の前で正座した。


「で、光ちゃんはどっちを選ぶの?」


「光兄ぃ、私だよ、ね?」


「光ちゃん、もちろん私だよ、ね?」


2人共、目笑ってないよ。

後、何が言いたいのですか?


「あの、そのね…えっと…」


「「あの、その、えっと?」」


「だから、つまり…」


「「だから、つまり?」」


2人共、ドスをきかすのやめて下さい。

恐いです。


現在の選択肢。


1、月乃を選ぶ。

2、郁那を選ぶ。

3、どちらも選ばない。

4、逃走を謀る。


状況的に、1、2、3はしちゃいけない。

というか、そんな事したら僕の命の保障が出来ない。


ならば、必然的に4だ。


そう思い、脱走。


またもや動かない。


脱獄失敗。



その後、鬼の様な2人に3時間説教をくらった。

夕食は抜きで。



僕が何をしたって言うんだぁ!!


あけましておめでとうございます。

碧井です。


ようやっと課題の方に目処がつきました故、小説をと。


久しぶりなんで、微妙な仕上がりでしたが、読んでいただき、ありがとうこざいます。



今年も頑張って書いていこうと思っております。これからも宜しくお願いします。


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