第11話 テスト返しは嫌いです
「はぁ…。憂鬱だなぁ…」
窓際で一人黄昏ていると、紫苑と朱音が話し掛けて来ました。
「どうしたのですか、月乃さん?」
「月乃、何かあった?」
私の悩み、“テストの結果”はこの2人には縁のない話です。
紫苑は何時も学年1位だし、朱音も毎回1桁にいるし…。
あぁ…私の周りの人って皆天才だよ…。
私が押し黙っていたのを不思議がっているのか、紫苑達が眉間に皺を寄せながら首をかしげています。
そんなに真剣な顔をしているのだから付き合ってもらおうかな。
そう思って、相談に乗ってもらう事にしました。
「……つまり光さんに勉強を教えてもらったけれど、解けた手応えがない、という事ですね」
「………うん」
光ちゃんの手を煩わせ、夕ご飯まで作ってもらったのに酷い点になりそうだから…。
……自分が情けなくて仕方がないよ…。
更に落ち込んでいると、そんな私を見兼ねたのか朱音が
「まだ返ってきてないんだからさ、元気出そうよ、ね?それに、光君は月乃を責めないよ」
と話し掛けてくれました。
朱音の温かい言葉に何かが込み上げてきます。
この感情を押さえていると、紫苑が
「ほら月乃さん、光さんが来てますよ。泣き顔を見せて心配させるのですか?」
と優しく宥めてくれました。
返事の代わりに頷き、涙を拭います。
紫苑と朱音はそんな私を見て微笑んでいました。
間も無くして、光ちゃんがやってきました。
彼は一瞬怪訝そうな顔をしましたが紫苑達を見てすぐに笑顔に。
光ちゃんって不思議な人です。
鈍感なのに人の感情を読み取るって、何かしら心配してくれます。
と言っても、恋愛の方面には疎いけどね。
光ちゃんの顔を見て安心してきました。
今までの悩みが何処かに吹き飛んでしまったみたいに。
紫苑達は私の表情から憂いが無くなったのを感じた様です。
私達に別れを告げると部活へ向かって行きました。
因みに、紫苑はテニス部で朱音はソフト部に所属しています。
2人共中学から続けていてかなりの腕前。
光ちゃんと家(と言っても光ちゃんの家だけどね)に帰り、食事やら入浴やらを済すとあっという間に12時に。
テストの疲れが溜まっていたので、今日は早く寝る事にしました。
それに明日は全教科のテストが返ってくるし…。
ジリリリィ
目覚しの音で意識が覚醒してきます。
うぅ…眠い…。昨日やっぱり心配でなかなか寝付けなくて、あんまり寝てないんです。
だけど愚痴を言っていても何にもなりません。
朝食とお弁当を作る仕事が私を呼んでいます。
体に鞭を打って立ち上がり、着替えを済ませてリビングへ。
ん?何か聞こえる…。
不思議に思い、耳を澄してみるとトントンと小気味良い音が聞こえて来ます。
頭が回らず、状況を上手く理解出来ませんでしたがとりあえずリビングに入ってみました。
するとそこにはエプロンを着た光ちゃんが台所に立っていて、私に気付くと挨拶をしてきました。
私も挨拶をして、食卓に目を移すと焼き魚を主菜とした和食が並んでいて。
光ちゃんに聞いてみると
「今日は起きたの早すぎでさ、せっかくだからご飯でも作ろうかなって思ってね。あっ、あとお弁当ももう少しで出来るから座って待ってて」
とバレバレの嘘をついてきました。
光ちゃんの気遣いが嬉しくて、
「うん、ありがとう♪」
としか言えませんでした。
光ちゃんが作ってくれたご飯を食べ終わると、丁度いい時間帯に。
準備を済ませてリビングに戻って来ると、光ちゃんにお弁当を渡されました。
本人は美味しくないかもしれない、と言ってましたが、そんな事は気にもなりません。
光ちゃんが私の為に作ってくれただけで、もう胸が一杯なのだから。
光ちゃんに感謝の言葉を言って微笑むと、光ちゃんの顔がほんのり紅潮した気がします。
ちょっと気になりましたが、すぐに普通に戻ったので見間違いという事にして、学校へ行きました。
「じゃあテスト返すよぉ!阿部くーん、伊藤さーん……」
此所までは順調に平均プラス5点ぐらいをキープしていて、これが最後の教科。
だけどそれは私が1番苦手としている数Bで…。
光ちゃんに教えてもらった通りやったつもりだけど、何時もは4、50点代だからなぁ…。
ナーバスになって、物思いに耽っていると私の名前が呼ばれました。
「月乃ちゃん、今回は凄く頑張ったわね♪」
先生にそう言われ、首をかしげながらテストの解答用紙を受け取り席に直行。
もちろんまだ見てません。
席に座って一呼吸。
気持ちを落ち着かせて解答用紙を開きました。
すると93点という文字が目に入って来て。
おもわず目を擦ってしまいました。
光ちゃんにそれを言うと、
「月乃、やったじゃないか!凄いよ、93点何て!」
と褒めてくれて、照れ笑いをしてしまいました。
朱音の方を向くと、微笑んで
「やったね、月乃!月乃の努力が実ったんだね♪」
と言われました。
「だけど光さんにお礼を言うのを忘れてはいけませんよ」
声がした方を振り向くと、ちょっとやっちゃたと言いたげな表情を浮かべた紫苑がそう言っていました。
あっ、忘れてた!
そう思い、光ちゃんに目を向けると、解答用紙を受け取って帰ってくる所でした。
光ちゃんはご機嫌な様子で席に座ると、ずっと見ていた私に気付いて話し掛けてきました。
「ん、どうかした?もしかして、顔に何か付いてる?」
光ちゃんはそう言うと顔を触りだし、何か付いてるか確認し始めちゃいました。
面白かったけど、話を戻す事に。
「光ちゃん、違うよ。そんなんじゃなくてね、あの…勉強教えてくれてありがとう…」
私がそう言うと
「どういたしまして」
と優しく笑い掛けてくれました。
光ちゃんとのやり取りを終えると、全員に配り終わった様で、千智先生が話し始めていました。
「……だよ。此所から、重要な話をするよ」
危ない危ない。大事な事を聞き逃す所だったよ。
「今年から理事長が変わったって事は知ってるよね?それでその理事長がこの中間テストの結果に応じて文化祭の時に配給する金額を増やす、とおっしゃったの」
ふーん…そうなんだぁ。
金額アップかぁ……っ!?
本当に?
「本当よ、月乃ちゃん」
千智先生って心読めるの!?
うぅ…。
迂闊だったよぉ…。
「増額は学年別に1番のクラスから5千、3千、2千、なしだよ。で、我等が2組は……何と1番でした!」
それは当然の結果だと思います。
首位の紫苑を筆頭に光ちゃん、朱音ちゃんもいるし、極端に悪いって人もいないしね。
何はともあれ、プラス5千円。
これで“あの計画”も実行が見えてきて。
紫苑達に顔を向けると、やはりニヤリと笑っていました。
私達が口角を上げて文化祭に思いを寄せていると、
「因みに、来週の体育祭でも同じ様な事があるからね♪」
と千智先生。
クラスの皆が騒ぎ出したのは言うまでもありません。
どうもです、皆さん。気付けば今年ももう終わり。正に光陰矢の如しってやつですね。
話はずれますが、課題の進み度合があまり良い状態にありません。恐らく課題の消化が終わるまで投稿はしないと思います。と言うか、出来ないと言ったほうが正しいです…。
この小説を楽しみにしていらっしゃる方は多いとはとても言えませんが、しばしお待ち下さい。