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第9話 夕暮れに少年は何を想う


 ……遅い…。

あまりにも遅すぎる。

飲み物を買いに行くだけでこんなにかかるのだろうか?


 少し様子を見に行こうかと、腰を浮かべようとした時、月乃が行った方向から女の子の怒鳴り声が。


 嫌な胸騒ぎがする…。


 いてもたってもいられず、ちょっと駆け足気味で声がした方に向かってみる。



 しばらく走ると、男3人が女の子を何処かに連れて行っている。

良く見ると、その女の子は月乃で。



「月乃!月乃!!」

気付いたらそう叫んび、全力疾走をしていた。


 僕が近付いても男達は月乃の手を離さず、お前誰?という顔でこっちを向く。


月乃はほっとした表情を僅かながら見せるが、目には涙が溜まっていて。


 こいつ等が月乃を泣かせた…。

こいつ等が月乃に酷い事をした…。


理性が崩壊しそうなのを必死で堪えつつ、

「その手、離してあげてもらえません?」

と丁寧な口調で言うが、男達は聞く耳を持たない様で。



 返事がないという事は、離す気がないという事。

だったら無理矢理引き離すしかない。


そう思い月乃を掴んでる男に近付くと、手を打ち払って月乃を救出し、背中に庇う。


怒りを顕にした男が殴ってくるが、躱すと月乃に当たってしまうので仕方なく腕でガード。

一瞬出来た隙をつき、顎に拳を入れ意識を刈る。


綺麗に入ったらしく、白目になりながら男は崩れていった。


他の男二人も頭に血を昇らせた様で殴り掛かってくるが、直線的な動きな為、見切りやすい。

パンチを受け止め、そのまま腕を掴んで関節をきめる。


「どうします?このまま骨折っちゃいましょうか?それとも今直ぐに目の前から消えてくれますか?」


少しずつ力を加えつつドスのきいた声で言うと、男二人は呻きながら今すぐいなくなります!と連呼していた。


もう大丈夫であろう。

腕を離してやると、のびている男を抱え、脱兎の如く逃げて言った。


男達を一瞥し月乃を見ると、気が弛み体から力が抜けていって倒れかけた。


「光ちゃん…恐かったよ…。助けに来てくれないかもって…」


月乃を抱いて支えてやるとそう言い、震える手を背中に回してきた。


最近、月乃を泣かせてばっかりだ…。

僕が頼りないばっかりに…。


 僕が自己嫌悪に陥っていると、月乃の手が頬に触れた。


 「光ちゃん…そんな哀しそうな顔しないで…。私は大丈夫だよ。だって光ちゃんが助けてくれたから…」


 月乃の言葉が頭に響き渡る。

辛い筈なのに、僕を元気づけようとして…。

君は弱さを隠しすぎだよ…。

たまには感情を爆発させてもいいんじゃないかな?


「月乃…辛かったら、泣いてもいいんだよ。僕は此所にいるから…受け止めるから…」


そう言うと月乃はビクッとした後、徐々に震えが大きくなり、感情を塞止めていたダムが決壊した様に泣き崩れてしまった。



そのまま抱き締めながら大丈夫だよ、と呼び掛けていると5分ほどで落ち着いてきた。


良かった…。

これで安心だ。


安堵の色を浮かべていると、興奮していた頭が冴えてきた。


周りを窺うと、物凄く視線が僕達に向いていて。

中には殺意が込められているものも…。


ああ、この光景は確かに目立つ。


とりあえず、場所を移動せねば。


そう思い月乃に移動しようと話し掛けると、彼女も今の状態に気付き、俯きながら頷いた。


僕達は人目を避ける様に、足早でその場を去った。

もちろん、手は繋いで。



しばらくすると、丁度いいベンチがあったので、ちょっと立ち止まる事に。


月乃が買ってくれたコーヒーを啜っていると月乃が

「ねぇ光ちゃん…さっき怪我しなかった?」

と心配してきた。


「大丈夫。あれぐらいじゃ僕は怪我しないよ。というか出来ないが正しい…」


ちょっとおふざけを交えて言うと月乃はくすくすと笑った。


月乃はすっかり元気ってやつかな?

あの表情からは無理してる感じは読み取れないから大丈夫だよね?

月乃を見てみると、ミルクティーを美味しそうこくこくと喉を鳴らしながら飲んでいた。


あれだったら大丈夫だ。


そう思いつつ、コーヒーを飲み干す。


僕は急がなくていいと言ったのにも関わらず、月乃は慌てて飲み終えてしまった。


けほっ、けほっ。


ほら言わんこっちゃない。

一気飲みなんてするからそうなるんだ。


呆れながら、月乃の背中を軽く叩いてやると、咳が止まった。


月乃の顔がみるみる赤くなったのは言うまでもない。



その後、調子を取り戻した月乃に振り回され、ジェットコースター等の絶叫マシン中心に乗った。


僕は絶叫マシンが苦手な訳ではないが、あんなに乗るとちょっと…。

月乃はずっときゃあきゃあ騒いでいて、ちょっと凄いと思ってしまった。



楽しい時間とは早く過ぎてしまう物で。

気が付くと、辺りは夕焼けに染まっていた。

そろそろ帰ろうかな。

そう思っていたら、

「最後は観覧車乗ろっ♪」

と月乃に言われた為、観覧車へと向かった。


観覧車に近付くにつれ、人が少なくなる。

あれ?

普通、観覧車って人気あると思うんだけど、それは僕だけ?

まあ、並ばずに乗れるからいいっちゃいいけど…。


観覧車に着くと、周りに人は係員の2人しかいない。

観覧車に乗ってる人もいない。


おかしいと思いつつも、月乃に引っ張られ、係員の元へ。


「すみません、観覧車乗りたいんですけど」


月乃がそう言うと、係員は顔を見合わせた後、明後日のほうを見ながらドアを開けて僕達を乗せてくれた。


あの係員怪しい…。

何かあるのか?


そんな疑惑の眼差しを係員に向けていると、月乃が

「あのさ、光ちゃん…今日はありがとう♪」

とはにかみながら言ってきた。


「感謝される様な事はしてないよ。僕だってかなり楽しんだし」


僕の言葉に顔を弛ませ、月乃は今日一番の笑顔を僕に見せてくれた。


どくん


心臓が高鳴る。


どくんどくん


前の様な激しい動悸。


もしかすると、これって…


ガタン


…何か変な音が上のほうから聞こえてきた。


ガタン

メシメシ

ググッ

バキッ


ん?

バキッ?


月乃に笑いかけて見ると、苦笑いを返してくれた。


下のほうから、人々の叫び声が聞こえる。


 次第に観覧車が傾いてきた気がする。

いいや、気がするのじやない。

実際に傾いている。


現在地、上空15mほど。

落ちたらまず助からないだろう。


月乃が僕の手を強く握ってくるが、握り返す余裕がない。


少しずつ高度は下がってきているが、地上まで保つのか?


角度が有り得なくなり、遂に観覧車に限界がきた様だ。


そう判断すると、ドアを開け、月乃に

「飛び降りるよ」

とだけ告げ、抱き締めながら翔んだ。



今までの楽しい想い出が甦ってくる。

これなんて言ったっけ?

走馬灯だっけか?

まあ、別にいいけど…。


そんな事を考えている内に、地上が近付いてきた。


あわよくば捻挫で済んでくれ。


そう神に祈ったものの、神は願いを聞いてはくれなかった様で。


月乃を抱き締めたまま着地すると、ボキッと嫌な音が脚から聞こえてきた…。



余談だが、あの後医者に全治3週間の骨折と宣告された。


因みに、遊園地は封鎖になったらしい…。


今回、前半が物凄くシリアスです。

なので最後、無理矢理コメディーにする為観覧車破壊しちゃいました♪

てへ♪




すいません。

調子乗りました…。



次回からは普通に学園生活に戻ります。

面白いものを書ける様に頑張りたいと思います。


今後とも、宜しくお願いします。

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