3話目
【殺意】と言う単語は簡単に浮かぶ。だけど、直ぐに消えてしまう。
女友達のAは、いつも自分が不幸だと言う。付き合う男はいつも、私から見て[ダメ男]だった。彼氏に、二股をかけられ泣きじゃくるA。次の彼氏に、お金を取られ泣きじゃくるA。その次の彼氏に、DVを受けて泣きじゃくるA。何故か、いつもいつも[ダメ男]を選んでくる。男なんか山のように居るのに[ダメ男]を捜してくるのだ。
ひょとして幸せになるのが怖いのかも知れないと思った。
何故か解らないけど、幸せの次は不幸がくる。
不幸の次は幸せがくる。という思いがあるようだった。
宝くじで千円当たると
「千円分の不幸が来そう!」
とAは呟いた事があった。
ジュースをこぼして服を汚した時は
「ついてないなあ、でもこの分の良いことはあるかも」
と言った。
幸せになる彼氏に出会うのが怖いのかも知れない。
Aの不幸自慢は次に来るであろう幸せを待つためかも知れない。
「私ね、恋をしたみたい。で、告白しようと思ってる」
Aは私と喫茶店で珈琲を飲んでる時に言った。
「えっ、」
私はまた[ダメ男]を見つけたのか?と思った。
「貴方も知ってる彼よ、」
そして、Aは私が恋をした彼の名前をあげたのだ。彼の名前をBとしよう。私の女友達でいつと[ダメ男]を選ぶAは、私が恋をしている。もとい私が片思いをしているBに恋をしていると言ったのだ。 同じ男を友達同士が好きになる。それだけでもメンドクサイのに[ダメ男]しか恋せないAがBが好きだと言ったのだ。
私は軽い衝撃を受けた。そして全否定を心の中でした。Bは[ダメ男]なんかじゃない………と
だが、その否定の前に伝えないといけない事がある。それを私は言葉にした。
「そうなんだ。実は私もBが好きなんだ。」
Aはビックリした顔で私を見た。Aの瞳は綺麗で見開いた目も美しい。ストレートの肩までのびた黒髪は健康的で美しい。鼻は少し低いが愛嬌がある。口はふっくらとしていて色気を感じさせる。少しばかし背は低いがスタイルはいい。
可愛いという単語が当てはまるのがAだ。
私は、可愛くもない、平均的な顔。スタイルには全く自信がない。
『女としては、負けだなあ』と心から思った。Bは私に好意を持っていないのは解っていた。だけどいつか何とかなるんじゃないのかという期待は捨てきれなかった。
Aは私を見つめていた。そして信じられない言葉を口にしたのだ。
「ごめんね。でも私が先に告白するから、そしたら貴方は恥をかかずにすむでしょう?」
「え?!」
「でもこれからも友達でいてくれる?」
「え?」
そうかあ、Aはいつも私に相談して来たけど自慢でもあったのか。私はモテている。だから次から次と彼氏が出来るのだ。と自慢してたのだ。そして私を見下していたのか………
私は私なりに心配しAの力になれてたと思っていたのだけど、その考えは間違いだったのか?軽い裏切りをされたようで心か痛かった。
だけど、Aはにこやかに笑って私を見ている。
私はどうしようもない気持ちになりながら、にこやかに笑ってAを見ていた。