究極の選択
お腹空きながら書きました。
クーデル、聞かない名前だな。
「クーデルとは、異世界へ案内する役目の人です。その人その人によってクーデルが違います」
あらやだ不思議。何故か父さんが説明役に。
「そのタヌキが案内してくれんじゃないの?いかにもそんな感じだし」
「この子にはちゃんと役目があるのよ」
母がシロを手放すと、シロはとことこと目の前にやって来て、足元にすりついてきた。
「にゃーお」
「ね?安らぐでしょ」
要するにただの安らぎペットか。つか、最初クマって喋ったよな、こいつ。
「母さんのクーデルは誰なんだよ」
母は父を指差した。あまり驚かない自分の順応力が憎いわ。もはや母が何を言っても驚かない。
「どうやったら探せるんだ?」
母は俺の頭に白い、天使の輪のようなものを乗せた。まさか、
「クーデルにしか見えないから、輪っかのことをつっこむ人が現れたら、その人がそうよ」
そんなことを言われたが、この地球上に人間は何人いると思ってるんだ。確か、およそ60億。ゴキブリの次に多いんじゃないか。
「やい!武夫!」
隣の家の窓から俺の名を読んできたのは、今年7歳になる女の子の富美。俺の部屋は2階にあるのだが、富美の部屋もまた2階にあった。家同士がくっついているので、お互いの部屋の窓から簡単に会うことができる。こいつムカつくから会いたくないんだけどな。
「武夫」
人を、しかも年上の俺を軽々しく呼び捨てにするなっつーの。
「曲がりなりとも俺は年上だそ。少しは敬えよ」
富美は俺をじっと見つめる。キモいな。
「そのふざけた輪っかはなんだ?」
なにーーー!?
「富美ちゃん、富美ちゃん、これが見えるのかな?」
輪っかを指差して綺麗な言葉で尋ねるが、違っていてほしいという気持ちが胸に膨らむ。
「見てくれと言わんばかりに見せつけてんじゃねーか。そんな怪しいものに、どうやったら気づかずにいれるってんだよ」
腕を組む富美は自信があるのか、ふふんと鼻を鳴らした。
「富美、大切な話があるんだ。ちょっと来てくれないか?」
大真面目に問うと、富美の顔がカーと赤くなる。何照れてんだこいつは。
「ば、ばか!お、お、男の家にあたしみたいな美少女1人が行けるわけないだろ、あほ武夫!」
今までさんざん行き来してたくせに何を言うんだか、このお子ちゃまは。
「じゃあ、1つ。お前、異世界への行き方を知ってるか?」
恥ずかしさに、穴があったら入りたい。こんなことを小学生のガキに尋ねる自分が悲しい。答えを聞く前に部屋のカーテンを閉めようとした。
「待てよ!」
その手がピタリと止まる。
「知ってるけど、どうするつもりだ?」
うっそーん。
「ちょっと待って」
そう言うと、富美は棚から小さな小瓶をとってきた。2度目のまさか、
「この毒を飲んで仮死状態になると行けるけど」
悩む富美。そこは俺が悩むところだろう。さらりと流してしまったが、死ぬ直前まで行かなければならないのか。聞くの怖いけど、
「失敗したらどうなるんだ?」
恐る恐る尋ねる。あまりいい言葉を期待してはいない、でも嫌な予感しかしない。
「もっかい人生のやり直しだな」
究極の選択!
富美はツンデレという設定にしたのですが、どうでしょうか。ちゃんと伝わっているでしょうか。