1話 ほれ、ここに異世界人
1話目です。出てきませんが、主人公の名前は小坂武夫です。モデルは今の所いないですが、もし、私が男の子になったらこんなんです、という設定で書きました。
好きか嫌いで言ったら、間違いなく嫌いな方だろう。
っちゅーか、好きなやついるのか?勉学なんて。
と、思われるだろうが、俺はとある勉強だけ好きな男子高校生だ。その時だけは我を忘れて、無我夢中で本を読みまくる。
その本の最初の3ページはカラーで、登場人物の紹介や、話のあらすじなんかが書かれている。
俺だったら、もっとこうしたい、ああしたい、という願望が頭をよぎるんだが。
でもフィクションは凄い!
と[異世界冒険記]を、読んでいてつくづく思う。
でも俺は、勇者や天使の存在を信じるわけにはいかないんだ。だって俺は悪魔の子だから・・・って言うカミングアウトでした。
「武ちゃん、今日は大切なお話があるの」
俺の部屋を訪ねてきて、改まる母は想像を絶するキモさだ。
「実はね、母さんと父さんが出会ったのはここよりずっと離れた所なの」
と言われたら、普通海外とか、北海道や沖縄を想像するじゃない?
「母さんはね。父さんと出会っちまったの。異世界で」
は?
い、い、い、今何と!?
「父さんの方は普通の人間だったんだけどね。母さんの方は・・・、悪魔なの。しくしく」
語尾にしくしくなんて付けますか?今時。
「それならその子供も悪魔ってことになりますが」
わざとらしく言うと、母がこくこくと頷く。
「見て、母さんのこの羽」
ゆるりと母さんの背中に生えた黒い羽に、驚き戸惑う。そりゃねーぜ、マミー。
「じ、じゃあもしかしたら」
と、思い自分の背中に思いきり力を込めた。
生えてこない。
よかった~、と胸を撫で下ろした。
ドタタタ
と階段でずっこけていたのは我が父。
「お前、武夫には内緒だってあれほど言っただろ!」
やっぱりマジなんだ。
「でも、この子ったら勉強もしないで、毎日毎日妙な本ばかり読んで。いっそのこと全部言った方がよくない?」
確かにさぁ。その通りだけど結構酷いこと言ってるよね。
「妙じゃねーよ。異世界冒険記だよ」
「そう、それなのよ!」
母の顔が真っ青になった。
「それを書いたのね・・・」
嫌な予感がするぞ。
「母さんなの」
ですよね!
ここでツッコんだら負けだ。そんな気がしたので、心の中で、ノンフィクションだったんかい、と軽くツッコんでおく。
部屋に飾ってあるタヌキのぬいぐるみ[等身大]が、部屋中を駆け巡る。天井に、壁に、机にぶつかり放題だ。
プチッ
と母がぬいぐるみを足で踏むと、
「宇宙人よ」
タヌキを手で持ち、そう言い放つ。要するにペットですか、お母様。
でも、そんな状況でもわずかに俺は期待していた。憧れの異世界人[うちの母]が目の前にいる、というかずっといたんだ、というか、俺も!?
「それで」
目を輝かせて俺が問う。
「異世界に行くにはどうしたらいいんだ?」
「僕を無視しないでほしいクマ」
空耳かな?
今何か断末めいた声が聞こえたんだが。
「ここ、ここココ!」
声を発していたのはぬいぐるみのはずのタヌキ。そういえば宇宙ペットなんだよな。でも何で語尾に「くま」をつけるんだ、タヌキなんだから「ぽんぽこ」とかじゃ?
「とりあえず、こいつの名前何?」
「シロ」
犬かよ。
「でも困ったわね。異世界へ行くにはクーデルを見つけなきゃいけないわ」
シロって名前の犬がいるかどうか分かりませんが、勝手ながら私の中では「犬」は全て「シロ」なのです。