表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理想体重は80キロ  作者: 28号
事の始まり編【メイド】
1/11

愛人のすゝめ

「結婚することになった。だから、お前は今日から愛人だ」

 まるでそこにある醤油とって、くらいのノリで、坊ちゃんは私にそう言った。

 美しい指で器用に器用に箸を動かし、納豆をかき混ぜている坊ちゃんことクリストファー様は私の雇用主であり幼なじみであり恋人だった。

 正直私が彼の恋人である自信はまったくないし認めたくはなかったが、愛人になれと言うくらいだから坊ちゃんはそう認識しているのだろう。

「結婚するのはあの、何て言ったかな、前にケントおじさんの誕生パーティーであった子だ」

「アンヌ様ですか?」

「ちがう、もっと細くて赤いドレスの」

「ジュエル、キャサリン、リンダ、ナオミ、リリー、ロイス」

 この手の問答は非常に時間がかかるため、私は細くて赤いドレスを着ていた女性の名前を列挙する。

 すると坊ちゃんはパチンと指を鳴らし「リンダ!」と叫んだ。その手のキザなポーズも、腹が立つほど似合っている。

「そうだ、名前を思い出したら忌々しくなったきたぞ! あのガリガリ女はリンダだ!」

「坊ちゃん、レディーに対してガリガリ女はいけません」

「だってみただろうあの細い腕と腰、まるでチョップスティックだ」

 と言いつつ納豆の糸を引く箸を振りまわす坊ちゃんを落ち着かせ、私はため息をつく。

「いいですか坊ちゃん、あなたはもう27です。そろそろその偏った趣向と性癖と女の子の好みを改めるべきです」

 それから私はこの手の話題の締めくくりに使う決まり文句を口にした。

「お忘れのようですが、坊ちゃんはカンパニーの跡取りなんですから」

 途端に、坊ちゃんは無駄に美しく育った顔をこれでもかとゆがめる。

「跡取り息子だろうが何だろうが僕は男だ。なんと言われようと、たたない物はたたないんだ!」

 そう言う即物的な話しているわけではなかったが、まあそれも原因のひとつなので否定は出来ない。

「ですが結婚なさるのでしょう。それに跡取りはどうなさるおつもりですか」

「体外受精ですますから問題ない」

 本当にすませられる金があるからたちが悪い。

「だから僕は彼女とはやらない。けれどそれじゃあ欲求不満になるだろう、だから僕には君が必要だ」

 そういうと、坊ちゃんは誓約書と書かれた紙を私の前に差し出した。

「これからは世話係ではなく愛人になれ。そして僕の体を慰めろ。俺の体を男に出来るのは、そのデカイ尻しかない!」

「坊ちゃん、いくら何でもそれは私に失礼です」

「事実を告げることの何が悪い! 僕はお前が好きだ、その脂肪まみれの体に丸い顔に太い足! かといって豚のように醜すぎもしない顔はキスをするのに最適だ」

 だから愛人になれと迫る顔が魅力的でないとは言わないが、勿論ここサインなどするはずもない。

 かわりに私は、坊ちゃんに冷静になって頂くべく、彼のかき混ぜていた納豆を無礼を承知で彼の頭にぶちまけた。

「デブ好きも大概にしないと、痛い目見ますからね」

 むしろ痛い目を見せてやると決意した私の笑顔に、坊ちゃんは望むところだと肩を怒らせていた。

他作のアンケートで頂いておりました「デブ専の彼を矯正」というオーダーより作成させて頂きました。

よろしければお付き合いの方、よろしくお願い致します。

※1/5 誤字修正しました(ご指摘ありがとうございました)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ