冷凍ジャングル
冷凍ジャングルには、夥しい数の獣が存在している。
「僕のことはPと呼んでくれる?」
「ハイ! 俺はBだ。よろしくな!」
一か月前に知り合った、大きな体のBは、陽気で話しやすい奴だ。海外から来たと言っていた。
摂氏マイナス20~30度の中で、僕たちは殆ど動かない。というか動けない。たまに、誰かがいなくなり、新しい誰かが加わる。
僕には、ここを去る前に叶えたい夢があった。
極寒の中で、強張った体を回転させたい。自分の意志で。
そう、限界への挑戦だ。
「僕の夢を聞いてくれるかい?」
「おお! 君の夢、聞かせて!」
「僕は、六回転を成功させたいんだ」
「六回転!? ワオ! 今は四回転半が限界なのに、クレイジーな奴がいたもんだ! 俺は好きだぜ!」
「ここに来てから、ずっと練習していたんだ。ごめんよ。眠れなかった?」
「全然、大丈夫!」
皆が寝静まった夜、少しずつ体を動かし、揺れ始めたら、回転を加えていく。丸々とした僕には中々難しかったが、一回転できるようになった後、コツを掴んだ。
先日、ようやく五回転できるようになった。
「明日、六回転に挑戦しようかと思うんだ。ここを去る時が近い気がするから」
「夜中に、ずっと練習してたよな。君ならできる。俺は信じてる。明日、楽しみにしてるぜ!」
翌日の早朝、僕がBに六回転を披露している時、扉が開いて白衣の人間が入って来た。
「あれ、回転してる。何でかな」
人間は、タブレットを確認する。
僕は、他の仲間と共に、加工場に運ばれていく。
バイバイ、B。夢が叶い、しかも、それを目撃してくれた奴がいる。
僕はとても満足だった。
ここは冷凍ジャングル。
了




