再会
オルトスを見た住民達が、兵士達に先導されながら俺達を避けていく。
流石は領内の兵士たちだ、俺のやることを理解している。
「皆の者! 協力に感謝する!」
「いえ! お気をつけて!」
「我らが主人よ! いってらっしゃいませ!」
その声を背にして、最短距離で門へと到着する。
そこでは兵士達が慌ただしく動いていた。
そんな中、守備隊長であるコルドがやってくる。
怪我により前線を引いたが、堅実な守備をする頼れる老兵だ。
「アイク様! 準備が出来ておらず申し訳ございません!」
「いや、構わん。だが、こうしている間にも助けを求める者が危険に晒されている。付いていける者だけでいいから俺に付いてこい」
「はっ! 承知いたしました! 聞いたな!? 行ける者はアイク様についていけぇ!」
「「「おう!!!」」」
「では、いくぞ!」
先頭を走り門を抜け、その後ろを騎馬兵達がついてくる。
決して部下の後ろにいず先頭を走る、それがアスカロン家当主の戦い方だ。
◇
しばらく走ると人の叫び声と、剣を打ち合う音が聞こえてくる。
そのままオルトスを走らせると……戦場が見えた。
馬車があり、その周りには黒服の男達がいる。
そいつらが、馬車を守ろうとしている兵士達に襲いかかっていた。
「黒服の奴らが敵だっ! 我に続けぇぇ!!」
「「「ウォォォォォォ!!!」」」
後ろを振り返らずに、オルトスの速度を上げる。
そして、右手を背中にある大剣に添え——。
「な、なに!?」
「遅い!」
「ぎゃァァァァ!?」
上段から剣を振り下ろし一刀両断する。
すると、馬車に集中していた黒服達がこちらを向く。
「くっ!? 速すぎる! もうきたというのか!」
「貴様らが何者か知らないが……俺の領地で無法は許さん」
「た、たかが十騎程度だ! こちらの方が数に分がある! やってしまえ!」
そこから黒服五十名ほどと、俺を含む騎士達十数名、馬車の護衛達二十名ほどの乱戦となる。
そんな中一人の男を発見したので、その男に近づいていた黒服を一閃する。
「エレン!」
「騎士様! も、申し訳ございません!」
「何も謝ることはない、お主はよく戦った。お前は馬車を先導して街に向かえ。俺の兵士達が後から追ってくるはずだ」
「しかし、騎士様達だけでは……いえ、俺達がいたら足手纏いですね。わかりました! その任務をこなしてみせます!」
「ああ、頼んだ。あとは、俺に任せるがいい」
ひとまず、馬車に近づく敵達を始末する。
敵が近づいてくるのを待ってから……大剣を振り回す!
「邪魔だ!」
「あぎゃぁぁぁ!?」
「ひぃ!? ひ、一振りで三人が真っ二つに……」
「中には鎧を仕込んでいるのに……あれが魔剣アスカロンか!」
「兵士達よ今のうちに抜けるが良い! 後の敵は我らが蹴散らす!」
護衛の兵士達が戦いをやめ、馬車を中心として動き出す。
俺達は遊撃に回り、敵の数を減らしていく。
そして、どうにか馬車を逃すことに成功した。
「くそっ! おえっ! 絶対に逃がすなっ!」
「行かせると思っているのか?」
「なっ——ぐはっ!?」
リーダーらしき男に近づき、剣の腹で殴って昏倒させる。
こいつには、話してもらわねばなるまい……まあ、期待はしていないが。
「貴様が指揮官か? 目的はなんだ?」
「い、いうと思っているのか! シネェェェェ!!」
「だろうな——セァ!」
「ぐひゃぁ!?」
ナイフを持って飛びかかってきた相手を上段斬りで真っ二つにする。
返り血を浴び、全身が赤く染まる。
「さて、残りの連中は……流石に逃げたか」
「ブルル」
「ん? 追わないのかって? 逃げに徹しられたら仕留めるのは難しい。何より、暗殺に失敗した刺客の末路はロクなもんじゃない。ひとまず、馬車を逃がせたからよしとしよう」
すると、逃げたはずの馬車が戻ってくる。
どうやら、俺の兵士達と合流できたらしい。
その馬車が、そのまま俺に近づいてきて……扉が開く。
「アイク様!」
「……セレナ様!?」
俺の胸に飛び込んできたのは、白いワンピースを見にまとったセレナ様だった。
こんな状況だというのに、ふわりと甘い香りが脳を刺激する。
「大丈夫ですか!? 怪我とかは!?」
「い、いえ、平気です! それよりどうしてセレナ様が? それと、出来れば離れて頂けると……」
「わ、私ったらごめんなさい!」
すると、セレナ様が慌てて離れる。
あ、危ない……こちとら胸がドキドキして死ぬかと思った。
というか、推しに触れてしまった。
「やれやれ、心配なのはわかるが……」
「これはバルド様!」
続いて馬車から出てきたのは、セレナ様の父であるカサンドラ家当主バルド様だった。
彼も、国の内政を支える重鎮の一人だ。
カサンドラ家の者とはわかっていたが、まさか当主と娘さんが来るとは。
「アイク殿、助けて頂き感謝するよ」
「あ、ありがとうございます」
「いえ、当然のことをしたまで。それより、一体何が……?」
「ふむ……ご迷惑をお掛けしたくなかったのだが、聞いてもらっても良いだろうか?」
「もちろんです。では、まずは我が屋敷に案内いたします」
俺は何とか平常心を保ち、そう答える。
未だに抱きつかれた感触が頭から離れない。
とにかく事情はわからないが、彼女が困っているのならば全力で助けるとしよう。




