ヒロイン視点
……デートだなんて。
恥ずかしくて、その後のことは覚えてない。
気がついたら屋敷に戻っていて、アイクに失礼な態度を取っちゃったかな。
「うぅー……でも、そんなつもりはなかった。ただ、一緒にお出かけっていうか」
買ってもらった人形に顔を埋めて、ベッドの上でゴロゴロする。
はしたないけど、そうしないとどうにもならない。
このもどかしい気持ちはなんなのだろう?
「確かに王太子様と二人で出かけたこともあったけど、王太子様と会った時は感じたことない……」
ドキドキして、それでいて少しの安心感?
隣にいてもそんなに話すわけじゃないけど、別に気まずいわけじゃない。
それどころか、少し楽しい。
「……わからない」
だって男の人にあんな風にエスコートされたことない。
いつも女は後ろを歩けとか、俺より目立つなって言われてきた。
アイクはなんというか……暖かく見守ってる感じがする。
歩くスピードもあわせてくれるし、こちらを気遣ってくれた。
すると、ドアをノックする音が聞こえた。
「セレナ、少し良いかな?」
「はい、お父様。入って大丈夫ですよ」
「失礼……おいおい、なんだその格好は?」
「へっ?」
慌てて起き上がり鏡を見ると、そこには髪がボサボサな私がいた。
寝転がっていたら、どうやら寝癖みたいになってしまったらしい。
「ご、ごめんなさい」
「まあ、お前は完璧が過ぎるから丁度良いか……アイク殿とのお出かけは楽しかったかい?」
「は、はいっ! アイクって凄く落ち着いてるっていうか……紳士的で大人っぽいです」
「それは私も感じたな。噂ではもっとやんちゃというか、威圧的な人物だと聞いていた。しかし、実際は男の中の男といったところ……ダメだな、噂など当てにならん」
「そうなのですね。でも、可愛らしいところもあるんですよ?」
女性や子供に対してどう接して良いのか戸惑ってたり。
それでいて、冗談なんか言ったり。
それに……プレゼントを買ってくれたり。
「ほう……良い顔だ。これなら、安心して娘を任せられる」
「お父様?」
「いや、連れてきて良かったと思っただけさ……お前には苦労をかけたな」
そう言い、娘である私に頭を下げてくる。
そんなことは初めてだった。
「お父様が謝ることじゃないです!」
「いや、アレの導き方を間違えた私達大人の責任だ。お前はしっかりしてるから、手綱を握ってくれると思ってしまった」
「……いいえ、私の力不足でした。でも、ありがとうございます」
「まあ、あんな男は忘れるとして……ここに残るで良いんだな?」
お父様は明日にはここを発つ。
一人なのは不安かと思っていたけど、今はそんなことはない。
それはアイクが言ってくれた嬉しい言葉があるから。
「はい、何が出来るかわかりませんがお役に立ててみせます」
「頼んだぞ。我々も家を立て直し次第、改めて礼をするとしよう。それで、何か案はあるのか?」
「一応、回復魔法が使えるので前当主様の様子を見ようかと」
「確かに彼の方が良くなれば……ふむ、それよありか。では、私は話があるのでな」
そう言い、慌ただしく部屋から出て行く。
私は何だったのだろうと思いつつも、再び今日のことを思う。
お父様に聞かれて自覚した。
「私、楽しかったのね」
デートかどうかというより、そっちに驚いてしまった。
楽しいって感覚を久しく忘れていたから。
ずっと気を張ってきたから気づかなかったわ。
「……楽しんで良いのかな?」
王太子を導くことも出来ずに、借金まみれになった私が。
お父様達は帰ってからも大変だというのに。
「ううん、だから私はここに来たんじゃない。アイクに、救ってもらったお礼をするために」
私は両頬を叩き気合を入れる。
楽しむのは後回しにして、まずは何とかお役に立って見せないと。




