不器用な二人
……待て待て、一旦落ち着こう。
俺は勝手に推しである彼女を助け、会うと戸惑うから会わずに去った。
その彼女が、俺の所に来る……いやいや! 心臓が持たん!
すると、セレナ様が悲しそうな顔をする。
「……やはり、迷惑ですよね……」
「い、いや、そういうわけでは……」
「ですが、先程から目が合いませんし……」
それは貴方が綺麗だからです!
銀髪は美しく輝き、目はぱっちり大きく、スタイルも姿勢も良い。
そもそも、女性経験が乏しい俺には難易度が高すぎる。
何より前世の記憶がある今……銀髪はずるいって。
俺は昔から銀髪の女の子に弱いのだ。
「あ、それは、その……」
「ん……兄さん、セレナ様が綺麗だから照れてる」
「……えっ? そ、そんな、私なんかで……」
「ほほっ、あの朴念仁のアイク様が……」
なんだ、全身がむず痒くなってきたぞ。
何か、これは良くない気がする。
「と、ともかく! 一旦落ち着くとしよう!」
「ん、兄さん以外は落ち着いてる」
「ぐぬぬ……」
「ですな……しかし、皆さん長旅で疲れているでしょう。要件はわかりましたので、まずは休憩にいたしましょうか」
「そ、それがいい。では、俺は少し素振りをしてきますので」
無礼だとわかってはいるが、俺は慌てて部屋から出て行く。
そして庭に出て、邪念を振り払うのだった。
◇
部屋に案内された私は身嗜みを整える。
そして鏡に映る自分を見て……ため息をつく。
「やっぱり、ご迷惑だったかしら……慌てて部屋を出て行ってしまいました」
それはそうよね、私なんかが来ても。
昔から無愛想だし、正論ばかりいうから男の人には嫌われてきた。
見た目だけは男好きするらしく、たまに変なのは寄ってきたけど。
「良く王太子様にも、可愛げがないって言われてきた」
女は意見するなとか、三歩後ろを歩けとか。
だからこそ、王太子様はああいった守りたい系の女の子に惹かれたのかな。
私は無駄に行動力があって、気になると動いてしまうし。
「だから今回もどうしてもお礼がしたくて……自分勝手よね」
それに、勢いで手とか握ってしまった。
アイク様が部屋を出て行ってしまうのも無理ない。
男性は皆、奥ゆかしい女の子が好きだもの。
「わ、私だって、あんなことするつもりはなかったのに……うぅ」
全然目を合わせてくれないから、ついやってしまった。
不謹慎だけど、その手の大きさにドキドキしてしまったり……って何を言ってるのかしら!?
私が頭を抱えていると、部屋をノックする音がする。
「あら、どなたかしら?」
「セレナ様、サーラです。部屋に入ってもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとうございます」
私は扉を開けてサーラさんを招き入れる。
華奢で金髪のサラサラヘアーで、とても可愛らしい。
身長も、私の肩くらいでしょうか。
そのまま二つある窓際の椅子に座る。
「それで、何かお話が……?」
「はい。兄さんは口下手なので、私が代わりに来ました。まずはセレナ様がお礼をしたいといった件です。申し訳ありませんが、何が出来るか聞いても良いですか?」
「もちろんです。私は水属性でもある回復魔法を使えるので、少しはお役に立つのかなと。それと生徒会に属していたので、事務作業などもお手伝い出来ることがあると思いました」
自分で言うのもなんですが、水属性の一種である回復魔法の使い手は珍しい。
私はいざという時に王太子様を治せるようにと努力をしてきた。
生徒会も王太子様の婚約者として恥ずかしくないように入り、庶務の仕事をしてきたり。
「確かに回復魔法は私達の領地にとっては助かりますね。国境では常に戦いか起き、兵士達は傷ついていますし。事務の仕事も、うちは脳筋が多いので有難いです」
「そ、それでは……」
「ん、私としては問題ありません。ただ、決めるのは当主である兄さんなので」
「あっ……そうですよね」
今の所、私はアイク様に迷惑しかかけてない。
最初に助けてもらった時に牢屋に入れられ、借金を払ってもらって。
おまけに恩を返すつもりが、また助けられてしまった。
でも……あの時のアイク様、かっこよかったなぁ。
「ん、これは脈アリと見た。それに、性格もめちゃくちゃ良さそう」
「へっ? 今、何か……?」
「いえ、何でもないです。では、兄さんは私が説得します」
「……良いのですか?」
「はい、任せてください。では、早速行ってきますので」
そう言い、颯爽と部屋から出て行く。
すると、窓の外から何やら声が聞こえる。
覗いてみると、庭でアイク様が素振りをしているようです。
私は、それを夢中で見てしまうのでした。
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