14.大所帯あるある
初めての本番を終えた巴子と北浦が帰宅中の時のお話。
北浦:今日の本番、楽しかったね!
巴子:うん。お客さんの笑顔が忘れられん。
北浦:実音先輩たちもすごかった! 早く私も楽器で出たか!
巴子:そうだね。……ねぇ、奈也は先輩たちの名前、全員覚えた?
北浦:え?
巴子:私、こういう部活って初めてでしょ? こんな人の多かところ、まだ慣れんのよ。パート単位で行動するし、ダンスの子で固まっておったし、合奏に出とる一年生の名前も言えるか怪しか。
北浦:確かに!
巴子:役員の先輩とダンス係の先輩はわかるよ? それ以外は自信ないかも。最初の楽器体験で喋っとっても、名前は聞いちょらんもん。あの時はいろいろ初めてだったけん、ジャージに書いてあるのを見る余裕もなか。
北浦:男子の先輩は? 少数で目立つよ。
巴子:ちゃんと名前言えるのは、プリンス先輩くらいかな。
北浦:そっか。大きい便利屋先輩とか、背高いヌイヌイ先輩は覚えられたよ。……あ。あと私あの人もわかる。
巴子:誰?
北浦:ツクモン先輩。ベニ子先輩と同じサックスの人。自分を売り込んだ時に話した。
巴子:売り込んだ?
北浦:シナリオ係っていうやつの人なんだって。で、去年の劇の台本書いたり演技の指導したらしいよ。だから、次の劇でメインで使ってもらえるように頼んどいた。
巴子:売れない役者のやり方みたいだね。で、どうだったの?
北浦:なんか二年生が主導でやるとかで、配役に口出しするつもりはないとか言われた。ばってん、元演劇部の発言は強そうやもん。そこをなんとかってお願いしといたよ。
巴子:奈也は積極的だね。
北浦:人生は一度きりよ? やれるもんはなんでもやっときたかね!
巴子:ふふ。そっか。……あ。お疲れ様です。
北浦:お疲れ様です!
??:おっつー。
巴子:今のはえっと……。
北浦:トロンボーンの人じゃなかった? えっと……グッチ先輩!
巴子:あ、そうだ。パートリーダーの窄口先輩だ。
北浦:あ、お疲れ様です!
巴子:お疲れさ……まです。
??:おっつー。
北浦:またグッチ先輩だ。瞬間移動?
巴子:いや、違うでしょ! たぶんもうひとりの先輩だよ。あそこ、双子みたいな先輩がおったはず。
北浦:あー、えっとー……なかちゃん先輩だ!
巴子:え、どっち? どっちがどっち!?
北浦:うーん。そっくりだったね。全くわからん。
北浦:ってことがあったんですよ。実音先輩、あれはどっちだと思います?
実音:その話だけじゃ私にもわかんないや。
巴子:覚えたい気持ちはあるんです。あるんですけど、名前と学年と楽器を覚えんとで……。おまけにニックネームで先輩たちが呼び合っとって、余計訳わからんことに……。
実音:そうだよね。でも、私は一年生と接する機会があるからまだいいけど、そうじゃない部員はまだ新入生全員を把握できてないと思うよ。お互い様だし、名前言えなくて失礼になるとかないからね。
北浦:先輩側もそんなもんなんですね。
巴子:実音先輩も、部員を覚えるのに苦労しました?
実音:うん。わかんない時は、とにかく先輩っぽい人に挨拶してたよ。普段の学校とかですれ違った時なんか、たまに吹奏楽部以外にしちゃったこともあったね。
北浦:あ。私もよく知らん子に挨拶されます。たぶん同じ一年生なのになぁ。
実音・巴子:(だろうね)
北浦:とりあえず、会う人みんなに声かけていきます!
巴子:覚えることいっぱいだなぁ。
実音:焦らずゆっくりね。
巴子・北浦:はい!




