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がんばらんば〜Another〜  作者: 尋木大樹
ショートストーリー

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38/50

7.もちろん義理です

方南のオーボエパートによるバレンタインのお話。

二年生:みんな、早くこっち来てよ。


小野(おの):え、練習したい。


二年生:チョコ欲しくないの!?


小野:チョコ……?


二年生:今日、バレンタインでしょ!


小野:え! バレンタインって本当にあるんだ! ください! いっぱいください!


二年生:クラスの子からもらわなかったの?


小野:そっちももらえたのかー! 言えばよかったー! 明日言おー!


二年生:ねぇ、黙って。先生たちがせっかく気を利かせて今日は合奏入れないでくれたの。あったら長引いてただろうし、こんなことできる雰囲気なんてなかったんだよ。うるさくしたら先生たちも見回りしなくちゃいけなくて、誰か来るかもでしょ。そしたらこのチョコあげられないんだからね。


小野:黙ります! ください! チョコください! 甘いやつ!


二年生:……もうヤダ、この変人。はぁ。さっさと終わらせるよ。はい、あげる。


小野:ヒャッホゥー!


二年生:うるさい。


小野:……あざす。


長谷部(はせべ):ありがとうございます。


実音(みお):ありがとうございます。


田中(たなか):……ありがとうございます。


小野:たーべよっと! あ、でもこの後楽器吹きたいのに……。あ、歯磨きすればいっか! お、クッキー! いっただっきまーす!


二年生:……今食べるの?


小野:うん、普通に甘い!


二年生:なんかムカつく。市販のクッキーにチョコかけただけだけど、なんか癪に触る。


実音:持ち帰って家でいただきますね。チョコのかけ方がオシャレですし、ホワイトチョコバージョンもあって全然手抜きじゃないです。それに、このラッピングも可愛いです。


二年生:雅楽川(うたがわ)……。


長谷部:あ、私も一応。


二年生:え、ありがとう。……あ、うん。ありがとう。


小野:そこのスーパーで買ったの? 甘くていいよね、これ。


長谷部:すみません。私もせめてラッピングくらいしてくれば……。


実音:期間限定パッケージだし別にいいんじゃない? ほら、バレンタイン仕様だよ。


長谷部:(好き!)


小野:雅楽川は? 何買ったの?


実音:あ、私からはこれです。


小野:ん?


二年生:(ラッピングは?)


田中:(これ、タッパーよね?)


長谷部:(雅楽川のチョコ! 最高か!)


実音:アマンドショコラです。


小野:何それ?


実音:アーモンドホールをローストして、キャラメリゼして、溶かしたクーベルチュールで何層もコーティングして、最後にピュアココアをまぶしたお菓子だよ。本当は形を綺麗にしたくて、モールドにテンパリングしたチョコを流してそこに埋めようかと思ったんだけど、一度に大量生産するのに適さなくて……。形が歪になっちゃった。


小野:うん、何言ってるのか全然わかんないけどもらうね! ……うまっ! 甘くてカリカリ! 何これ、うまっ!


二年生:ナッツが香ばしいね。


田中:(やだ……美味しいじゃない)


長谷部:(幸せ……)


小野:これ、止まんないやつだ。全部食べていいの?


実音:クラスの子にはたぶん全員回したから、あとは部員の分ね。


小野:わかった。オレ、配ってくる! 余ったら残りちょーだい!


実音:いいよ。


小野:やったー! 行ってくる!


二年生:どんだけ食べたいんだか、って言いたいとこだけど気持ちはわかる。……あいつ、雅楽川からのチョコだって、ちゃんとみんなに言ってるかな?


実音:どうですかね?


田中:(小野。朝下駄箱に入れておいたあたしのチョコ、気づいてないのかしら?)


長谷部:(雅楽川からチョコ。雅楽川からチョコ。雅楽川からチョコ。…………これは両想いか!? そうなのか!?)

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