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がんばらんば〜Another〜  作者: 尋木大樹
ショートストーリー

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35/51

4.実音の投球レベル

中学一年生の実音が、体力テストのソフトボール投げをしている時のお話。

秋川(あきかわ):そろそろ肩慣らせた? そしたら順番に計測ね。助走する時、この線から出ないように気をつけて。先生、五メートルから一メートルごとに、頑張って全部の線描いたんだよ。だから、できれば消さないようにね。えっと、中一女子の平均は……十四メートルだって。全然いけるいける! みんな超えられるよ!


生徒A:実音(みお)ちゃんいいよー。


実音:うん。いくねー。


秋川:(お、雅楽川(うたがわ)さんはどうかなぁ?)


実音:よ!


生徒A:えっとー、うーんと……たぶん、四メートル!


実音:去年と一緒だぁ。でも、ちょっと線に近づいたかも。


生徒A:ま、こんなもんだよねー。


実音:ねー。


秋川:いやいやいやいや! 最初の線にも届いてないじゃん! あんなに引いたのに!


実音:?


秋川:今のは投げてるんじゃなくて叩きつけてるって言うの! このままじゃ、体力テストの結果、悲惨なことになっちゃうよ!


実音:大丈夫です。私、握力は自信あるんで!


秋川:いくつ?


実音:去年は二十八でした!


秋川:まあまあ強いな! って、それだけ数値よくてもダメでしょ!


実音:上体起こしも得意です。マーチングとダンスもやんなきゃだったんで、長座も年々伸びてます! これでそれ以外をカバーします!


秋川:うん。ムラがあるのね。


生徒A:それってダメなんですか?


秋川:いや、ダメっていうか……ほら、ちゃんとやれば平均なんて簡単に超えられるんだから、もっと真剣にやろうよ!


生徒B:ちゃんとやってるよね?


生徒C:うん。真面目にやってこれだもん。実音ちゃんの今のやつは、さすがにちょっと酷いと思うけど。


実音:え?


生徒B:たしか前に聞いたことある。あ、お姉ちゃん情報ね。中学の体育って小学校と違って専門の先生だから、脳筋バ……運動できる人しかいないって。


秋川:(今、「脳筋バカ」って言おうとした?)


生徒C:それだと、できない人の気持ちなんてわかんないか。


秋川:え、それは……。


生徒A:なんで体育って、できる子はみんなに「すごい!」って言われて先生からも褒められるのに、できない子は見せしめみたいになって、惨めな想いしなくちゃいけないんだろうね? 紙のテストの点数は晒さないんだから、体育も一緒にしてほしくない?


生徒D:わかる! 私逆上がりできなくて、放課後居残りさせられたもん。できないもんはできないっての! その時の先生も体育得意な人だった! 「なんでできないの?」って、知るか!


秋川:なんか……ごめん。


生徒D:あ、アキちゃんに怒ってるんじゃないんだよ。


秋川:……「ちゃん」じゃなくて「先生」ね。


実音:「できる」「できない」より、どれくらい成長したかを見てもらいたいよね。全体の平均より、過去の自分に勝つことを目標にした方が現実的だし。


生徒D:そう! それ!


生徒A:若いから伸び代しかないもんね!


生徒B:だね!


生徒C:あとはさ、もっと具体的なやり方を教えてもらわないと。いきなり「はい、やって!」て言われてもね?


実音:うん。言葉で説明してもらったら、たぶん私たちもわかると思う。そういうの、先生になるための勉強で学ばないんですか? あと、生徒のやる気を出させるには心理学とかも大事かなって。


秋川:……うん。……そうだね。


実音:この辺ボール遊びができる公園がなくて、授業以外だと投げる機会ってないんですよね。だから、ゆっくり丁寧に投げ方を教えてください。


秋川:……はい。……えっと、こんな風にリズムよく勢いつけて……ふん!


生徒A:すっご!


生徒B:男子の記録超えてるんじゃない?


生徒C:でも、あれ真似できないよー。


生徒D:全然説明できてないじゃん!


実音:アキ先生……。


秋川:勉強する! するから! お願いだから、運動しかできない先生だとか思わないでー!


実音:とりあえず、さっきの記録より上を目指してやってみますね。


生徒A:みんなでワイワイ息抜きするだけなら、体育も別に嫌いじゃないからね。


生徒B:いつもこういうのならいいのに。


生徒C:じゃあ、一メートルアップ目標ね!


生徒D:アドバイスできたらしてね!


秋川:了解。


実音:いくよー。


生徒A:はーい!


実音:えい!


生徒A:惜しい! あともうちょっとで線に届きそう!


実音:難しいねー。


秋川:(だから叩きつけてるだけなんだってば! でも、言葉でどう言ったら……)


実音:アキ先生。どうでした?


秋川:えっとー。


実音:角度とか? そういう数学とか物理的なこととかは?


秋川:この辺でこう!


実音:…………はい。


秋川:そんな「ダメだこりゃ」って顔しないでー!

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