2.一緒にお風呂へ入るまで
実音と柊が東京で会っていた時のお話。
百合:湯せんぺいって、こんなに美味しかったっけ?
実子:実家から送ってもらって正解だったね。
百合:うん。持ってきてくれてありがとう。
実子:どういたしまして。
百合:柊は食べるの初めてだよね。どう? 美味しい?
柊:……。
百合:……反応なしね。この前ね、「美味しい」のポーズ教えたのに「は?」みたいな顔された。
実子:黙々食べとるけん、気に入ったんよ。実音は? 美味しい?
実音:みー。
実子:そうね、「yummy」ね。……あれ、うちの人が教えたんよ。
百合:え、可愛い! ちゃんとベビーサインつけて偉いね。
実音:じょー。
百合:え、「どうぞ」? 柊! 実音ちゃんが「どうぞ」だって!
実子:最近あれハマっとるみたい。
柊:……。
実子:あ、迷ってる。
百合:え! 柊が分けてあげてる! 写真撮らなきゃ!
実子:交換しただけだね。……そのカメラ、随分とまぁ本格的なことで。
百合:こんな立派なの買ったのに、遠出しないから使う機会がないの。
実子:旅行連れていってくれんの?
百合:仕事人間だもの……。
実子:そっかぁ。この辺、公園とかは?
百合:さっきシャボン玉して遊んだマンションの下のくらいよ。遊具、少なかったでしょ? あれで子供が喜ぶとでも本気で思ってるのかな?
実子:うちの団地の公園は大きいけどね。子供も結構おるけん、いっつも賑やかよ。ばってん、確かにちょっと離れた所の公園は遊具が減ったかも。
百合:児童館行っても、この辺りのママさんたちって自慢とか噂話ばっかだし、子供見てない人が多すぎて小さい子には危ないんだよね。
実子:今度はうちに来たら? なんなら引越しもおすすめよ。
百合:そうしたいけどね……。次どこに異動するかわからないし、海外赴任の話があるかもで……。実子ちゃんのところが羨ましいよ。
実子:一流企業に勤める旦那持つのって大変なんだね。ふたりの出会いの話聞いた時は、百合ちゃんに運命の人が見つかってよかったと思ったのに……。だって、留学先のカナダでたまたま同じバッグに同じ漢字のネームプレートつけてて、荷物の取り間違いから知り合ったなんてねぇ。まるでドラマよ。
百合:あの頃は、こんなに勝手で冷たい人だなんて知らなかったから。過去に戻って自分に教えてあげたい。でも実子ちゃんたちだって、まさかあれで付き合うことになるなんてね。
実子:本当だね。
百合:向こうが大学の卒業旅行中だったんだっけ?
実子:そうそう。友達と九州一周ね。
百合:で、原城見て「なんもないじゃん」って言った正さんの友達に実子ちゃんがキレて、口論の仲裁に入った正さんが突然泣き出したんだよね。
実子:「大事な旅行なのにこんなことしてる場合か!」って、ボランティアに頭下げてたよね。私も謝ってもらって……なんでか今こうなっとる。
百合:いいね。そんな出会いから始まって可愛い娘が産まれて……正さん、メロメロでしょ?
実子:今は良くても、そのうち反抗期で嫌われた時とかのメンタルが心配。
百合:それはまだ早いよ。まずはイヤイヤ期からだね。
実子:二歳になったらそうなるのかね? 柊君も可愛い顔しとるし、大きくなったらイケメンに育ちそうよ? あんなに知育のおもちゃも置いてあるし、両親に似て賢い子になるんだろうね。
百合:あぁ。あれは全部あの人が買ってくるの。でも買うだけで、一緒に遊んだはしないのよ?
実子:柾さん、子供苦手とか?
百合:さぁ? そう言ってないけど、そうなのかもね。
実子:……そっか。
柊:あー。
実音:うー!
百合:あーあー、そんなに握ったら……。
実子:遊び始めちゃったかぁ。湯せんぺい、粉々だねー。あ、髪触っちゃ……。
柊:……じょー。
百合:それ覚えたんだ! うん、ありがとね。こんなにいっぱいね。うん。髪にもついちゃったね。ちょっと落とさせて。
実子:実音もいっぱいつけたねー。あ、床にも落として。
実音:みー。
実子:はいはい。そうだね。美味しいね。でももう食べるの飽きたんでしょ。百合ちゃん、このお尻拭き使うね。
百合:私やるからいいよ。
実子:さっと終わるけんね。柊君の方は……うん、これで綺麗。
百合:ありがとう。……ダメだ。細かいのが取れない。これはお風呂だね。実音ちゃんも入る?
実子:え、いいの?
百合:うん。どっちもすごいことになってるもん。外でもふたり、寝転がってたし。下で砂払ったけど、よく見たらまだついてるね。
実子:助かるー! 実音、お風呂貸してもらおっか。
実音:あい!




