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がんばらんば〜Another〜  作者: 尋木大樹
ショートストーリー

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32/51

1.ネーミングセンス

海が産まれる少し前の音和家のお話。

音和陸(おとなぎりく):ただいまー!


陸ママ:おかえりー。


陸:産まれたか?


陸ママ:産まれとらんよ。夏休みになったぐらいだってば。


陸:はよ出てこんね。お兄ちゃんが遊んでやるぞ。


陸ママ:今日もこの子、お腹の中でずっと動き回っとるよ。陸と一緒ね。


陸:母ちゃん、聞いて! 俺、授業中に名前考えたんだ。「強太郎(つよたろう)ザウルス」か「スーパー陸次郎(りくじろう)」!


陸ママ:……授業中に? 勉強は? また先生困らせとらんか? 陸。その気持ちだけもらっとく。名前は今父ちゃんが考えとるよ。


陸:よし! 今の提案してくる!


陸パパ:その必要はなかよ。


陸ママ:決まったんね?


陸:「強太郎ザウルス」か? 「スーパー陸次郎」もおすすめやぞ。


陸パパ:……誰だ、このバカは。


陸ママ:あんたの息子ね。で、どうなったと?


陸パパ:上手く書けたぞ。どうだ!


陸:「(うみ)」? ……普通だな。


陸:何言うとるん。陸とお似合いよ。


陸パパ:これで「かい」と読む。かっこよかろ? なかなか絞れんくてな。硯見て思いついた。


陸:どゆこと?


陸ママ:学校で習わんと? 硯の墨液入れる場所が「(うみ)」で、筆先を整える場所が「(おか)」よ。


陸:ほほう。墨がついとるだけじゃ上手く書けん。筆を綺麗にせんとね。つまり、俺がおらんとダメってことだな!


陸パパ:そがん深い意味はなか。「かい」って響き、かっこよかろ? 陸の名前はじいさんがつけたけん、次の子は俺がつけるって決めとった。


陸:俺も「ウルトラ陸」の方がよかと思っとる。


陸ママ:もしそがん名前の息子ばおったら、こっちが恥ずかしか。そもそも、この子は女の子の予定だって言わんかった?


陸:女かよ!


陸パパ:……聞いとらん。


陸ママ:……言ったつもりだったわ。女の子やけん、「(うみ)」ね。ま、産まれてみんとわからんし、読み方はその時決めたらよかよ。


陸:なら名前は「グレートビッグうみ」か「サンシャインかい」だな!


陸ママ:……来年中学生になるとは思えん子やね。


陸パパ:女の子かぁ。そうかぁ。ま、それもよかろ。……向こうはどっちね?


陸ママ:(あさひ)さん? 男の子みたい。


陸:誰だそれ?


陸パパ:魚のおっちゃん、わかるやろ? そこも夏ぐらいに赤ちゃん産まれるぞ。


陸:弟もできるんか! ってことはふたりのお兄ちゃんかぁ。大変だな!


陸ママ:あんたはいつから暾家の子になったん?


陸パパ:まぁ、近所の子みんなの面倒見るんは年長者の役目やけんね。


陸:おう! 任せとけ!


陸ママ:はぁ。不安しかなか。……あ、また蹴った。


陸:お! もう出るんか!


陸ママ:出んよ。


陸パパ:「みそ五郎」みたいなデカくて力ばある男にならんと下の子らは守れんぞ。よし、陸! 今から特訓だ!


陸:おう!


陸ママ:ちょ、仕事は! 陸も宿題……って、もう見えん。……まったく。ダメな父ちゃんとお兄ちゃんでちゅねー。

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