1.ネーミングセンス
海が産まれる少し前の音和家のお話。
音和陸:ただいまー!
陸ママ:おかえりー。
陸:産まれたか?
陸ママ:産まれとらんよ。夏休みになったぐらいだってば。
陸:はよ出てこんね。お兄ちゃんが遊んでやるぞ。
陸ママ:今日もこの子、お腹の中でずっと動き回っとるよ。陸と一緒ね。
陸:母ちゃん、聞いて! 俺、授業中に名前考えたんだ。「強太郎ザウルス」か「スーパー陸次郎」!
陸ママ:……授業中に? 勉強は? また先生困らせとらんか? 陸。その気持ちだけもらっとく。名前は今父ちゃんが考えとるよ。
陸:よし! 今の提案してくる!
陸パパ:その必要はなかよ。
陸ママ:決まったんね?
陸:「強太郎ザウルス」か? 「スーパー陸次郎」もおすすめやぞ。
陸パパ:……誰だ、このバカは。
陸ママ:あんたの息子ね。で、どうなったと?
陸パパ:上手く書けたぞ。どうだ!
陸:「海」? ……普通だな。
陸:何言うとるん。陸とお似合いよ。
陸パパ:これで「かい」と読む。かっこよかろ? なかなか絞れんくてな。硯見て思いついた。
陸:どゆこと?
陸ママ:学校で習わんと? 硯の墨液入れる場所が「海」で、筆先を整える場所が「陸」よ。
陸:ほほう。墨がついとるだけじゃ上手く書けん。筆を綺麗にせんとね。つまり、俺がおらんとダメってことだな!
陸パパ:そがん深い意味はなか。「かい」って響き、かっこよかろ? 陸の名前はじいさんがつけたけん、次の子は俺がつけるって決めとった。
陸:俺も「ウルトラ陸」の方がよかと思っとる。
陸ママ:もしそがん名前の息子ばおったら、こっちが恥ずかしか。そもそも、この子は女の子の予定だって言わんかった?
陸:女かよ!
陸パパ:……聞いとらん。
陸ママ:……言ったつもりだったわ。女の子やけん、「海」ね。ま、産まれてみんとわからんし、読み方はその時決めたらよかよ。
陸:なら名前は「グレートビッグうみ」か「サンシャインかい」だな!
陸ママ:……来年中学生になるとは思えん子やね。
陸パパ:女の子かぁ。そうかぁ。ま、それもよかろ。……向こうはどっちね?
陸ママ:暾さん? 男の子みたい。
陸:誰だそれ?
陸パパ:魚のおっちゃん、わかるやろ? そこも夏ぐらいに赤ちゃん産まれるぞ。
陸:弟もできるんか! ってことはふたりのお兄ちゃんかぁ。大変だな!
陸ママ:あんたはいつから暾家の子になったん?
陸パパ:まぁ、近所の子みんなの面倒見るんは年長者の役目やけんね。
陸:おう! 任せとけ!
陸ママ:はぁ。不安しかなか。……あ、また蹴った。
陸:お! もう出るんか!
陸ママ:出んよ。
陸パパ:「みそ五郎」みたいなデカくて力ばある男にならんと下の子らは守れんぞ。よし、陸! 今から特訓だ!
陸:おう!
陸ママ:ちょ、仕事は! 陸も宿題……って、もう見えん。……まったく。ダメな父ちゃんとお兄ちゃんでちゅねー。




