23-2 猫好きの話
ジコクには、トレーラーがどれだけ進んだかわからなかった。こんな巨大な法術エネルギー場に浸かっていると、距離感すら失ってしまう。
通路が終わって、トレーラーは壁の前で止まった。
チャくんはコントローラーを何度か回した。壁に巨大な封鎖法陣が浮かび上がった。
法陣が金色の光を放ち、ちょっと太めの目が細い猫の紋様に変わり、壁から離れて空中に浮かんだ。
壁が両側へ開き、後ろの通路が現れた。トレーラーはさらに進んだ。
ジコクは頭を窓から出して後ろを見た。猫の紋様は空気中で二十秒ほど保ってから消えた。壁はその後閉まった。
ジコクは車内に体を戻し、窓を上げた。「この場所作った人、猫好きすぎだろ?」外もあちこちに猫模様のタイルがある。
「猫狂いだよ」チャくんは目を細めて、コントローラーを操作し続けた。
ジコクはこのときになって気づいた。コントローラーの各円の周囲が光っていて、法術記号もいつも微かに輝いている。だから暗闇でも使えるんだ。
「彼はかつて言ってたよ。この世で一番好きなもの、順番に──猫、魔法、変わり者だって」チャくんは言った。
「それって、結構自由に生きてるってことだな」
「どうして?」
「俺みたいな、仕事すら選べない人は、絶対こんな大声で自分が異端だって宣言したりしないよ」ジコクは体を傾け、頭を窓に寄せた。灯りが目に反射して光の点になり、トレーラーの進みに合わせて流れる。「あんなに堂々と、自分がどれだけ他の人と違うかを自慢できるってことは、『他の人に合わせなくてもうまくやっていける』条件を持ってるってことだ」
ジコク自身を例に取れば、祭刀は彼の実力の一部だ。でも仕事中は出せない。他の人に受け入れてもらうため、あの特別な部分がないふりをしなきゃならない。
死霊を呼び起こす力なんて、言うまでもない。あれは絶対に隠し通さなきゃ、全国探したって雇ってくれる人なんていないだろう。
「なるほど」チャくんは瞼を下げ、微笑んだ。「僕、あんな態度を何年も見てきたのに、今までその裏にある前提条件に気づかずにいたんだ」
「条件の悪い人にとっては、我慢と隠すことが必要だよ」ジコクはチャくんが急に感傷的になった理由がわからなかった。「君、この場所を作った者と仲良かったのか?」
「すごく仲良かったよ」チャくんは目を細めて笑った。この話題がよほど嬉しいらしい。
「彼、かなり尊敬されてたんだろ?」ジコクが聞いた。
「うん、あの人は大魔法師で、その身分なら国会議員以上の上流社会だけで生きていてもよかったのに、違う階層の人たちと付き合うのが好きだったんだ。
あの人、相手を自分の家に呼ぶんじゃなくて、自分が出向いて相手の家に行くんだよ。どんなにボロくても、気にしない。
あの人、ああいう人たちを施しを待ってるだけの存在だなんて思ってなかった。招待されたら相手の家に客として行くんだ。だって、彼らには分け合える力があるって信じてたから。
あの人、こんなこと言ってたよ。『谷底を見たことのある人間だけが、本当に高いところに住む連中が、何みたいな土台に頼ってるのかわかるんだ。最初から高いところにいる奴は、自分が踏んでる一角の山頂しか見えなくて、足下のあの巨大な山がどれだけの土石を積み上げてできたのか、見えやしない』」
この言葉は、普通の励ましとは正反対だ。
ジコクが聞いた、山とか高いところのポジティブな比喩って、いつもまるで高い場所に立てば、下のすべてが一目瞭然で、関連する智慧が立つ位置のおかげで出てくる、みたいな言い方ばっかりだ。
でもチャくんの話したこの言葉こそ、ジコクが人生で見てきた現実と合ってる。私用飛行船でいつも高空を移動して、山だって上から飛んでいくような連中は、地面の隅々までがどんな世界か、知ったことじゃない。
「民間の苦しみをよくわかってる人みたいだな」ジコクは心から言った。
「はは」チャくんはもっと嬉しそうに笑った。この話題、本当に好きなんだな。「あの人、こんなことも言ってたよ。『社会のエリートとして、一番恥ずかしい傲慢は、自分が民間の苦しみをよくわかってると思い込むことだ』って」
この言葉を聞いて、ジコクもつい笑ってしまった。彼はこれ以上追及するのはやめようと思った。これ以上聞けば、チャくんの正体がばれてしまうかもしれない。ここで仕事をするのに、チャくんが必要だ。
トレーラーが進む轟音のエンジン音の中で、ジコクはチャくんの声がかすかに聞こえた。ぼそぼそと呟いた。「……違う経験をした人間だけが、本当に違う視点を出せるんだ。それが、エリートどもが見落としてる鍵になるかもしれない……」
このエピソードの原文:
璽克不知道聯結車走了多遠,浸泡在這樣龐大的法術能量場中,他連距離感都喪失了。通道中止了,聯結車停在一面牆前面。小碴轉了幾下控制器,牆壁上浮現一個巨大的封閉法術法陣。法陣發出一陣金光,轉變為一隻微胖的瞇眼貓咪圖騰,脫離牆壁浮在空中。牆壁往兩邊打開來,露出後面的通道,聯結車繼續往前走。
璽克把頭伸出窗外往後看,貓咪圖騰在空氣中維持了大約二十秒才消散,牆壁隨後關上。
璽克縮回車內,把窗戶升上來,問小碴:「蓋這個地方的人是不是很喜歡貓啊?」外面也到處都是貓咪圖案的瓷磚。
「愛貓成癡。」小碴瞇著眼睛繼續操作控制器。璽克現在才注意到控制器的每個圓圈邊緣都會發光,法術符號平常也會發出微光,所以在黑暗中也能使用。小碴說:「他曾經說過,他在這個世界上最愛的東西依序是:貓咪、魔法、怪人。」
「這表示他活得挺自在的。」
「怎麼說?」
「像我這種連工作都沒得挑的人,絕對不會這樣大聲宣告自己是個異類。」璽克傾斜身體,把頭側靠在車窗上。燈光在他的眼睛上形成反光亮點,隨著聯結車的行進流動:「能夠這樣明目張膽的炫耀自己和別人有多不同,表示他擁有『不需要附和別人也能過得很好』的條件。」以璽克自己為例,他的祭刀是他實力的一部分,但是他在工作的時候卻不能拿出來。他為了讓別人接受他,必須假裝自己沒有這個特殊的地方。至於喚起死靈的能力就更不用說了,這個非得隱藏到底不可,否則恐怕搜遍全國也找不到一個敢雇用他的人。
「原來如此。」小碴垂下眼瞼,微笑說:「我明明就看這種行徑這麼多年了,但是到現在才發現,背後還有這樣的先決條件。」
「對條件不好的人來說,忍耐和隱藏是必要的。」璽克不知道小碴怎麼突然感嘆了起來,只好直接問:「你和蓋這個地方的人很熟嗎?」
「很熟喔。」小碴笑到眼睛瞇了起來,這個話題讓他很開心。
「他好像很受人尊敬是不是?」璽克問。
「嗯,那個人明明是大法師,以他的身分,他大可只活在立法委員以上的上層社會裡,卻喜歡跟不同階層的人來往。他不是請那些人去他家,而是他出門去別人家,不管目的地多破多爛都無所謂。他認為不應該把那些人視作等待施捨的人,他會應邀去那些人家中做客,因為他認為他們是有能力分享的人。他曾經說過:『只有見識過谷底的人,才真正知道那些住在高處的人,他們倚靠的是什麼樣的根基。一開始就住在高處的人只能看見自己所踏的這一小塊山峰,看不清腳下那座大山是堆起了多少土石才形成的。』」
這句話跟一般的勵志言論完全相反。璽克聽到的關於山和高處的正向譬喻,總是說得好像只要人在比較高的地方,就會對所有比自己低的東西瞭若指掌,所有相關智慧會因為站的位置而憑空冒出。但小碴說的這段話才符合璽克在生命中看到的現實,那些總是坐著私人飛船在高空中移動,連高山都直接飛過去的人,不會知道地面上每一寸空間是什麼樣的世界。
「聽起來像是一個很懂民間疾苦的人。」璽克由衷的說。
「哈哈。」小碴笑得更開心了,他真的很喜歡這個話題:「他也曾經說過:『身為社會菁英,最可恥的傲慢就是自以為很懂民間疾苦。』」
聽到這句話連璽克都笑了起來。他決定停止追問。再問下去可能就會發掘到小碴的真實身分,他還需要小碴陪伴他面對這個工作。
在聯結車前進的轟隆引擎聲中,他隱約聽見小碴的聲音,喃喃念著:「……就只有經歷不同的人,才能真正提出不同的觀點,那可能是菁英們忽視了的關鍵點……」




