第三章 ワール探しの秘密(2)
この計画のため、ジコクはしぶしぶと一着のセーターを解きほぐし、長袖から半袖に変えた。破れた雑巾の繊維も使えるが、汚染されている可能性が高い。覗き見法術は非常に繊細なので、材料は慎重に選ぶ必要がある。
翌日、ジコクは加工した糸くずを袖に隠し、家の中を歩き回りながら糸くずをあちこちに放り投げる。メイドの休憩室に糸くずを置かない。彼は事前にワールとメイドたちに許可を求めるべきだと思うからだ。一般的に言えば、伝送法術をかけることができる者は、複数の伝送站を設置している可能性が高い。習慣的にどこに行くにも伝送扉で行く人は多いから、他の場所を監視してもいいはずだ。
どうせ、ジコクは他の人の目にもう十分卑猥に見えるので、歩き回る行為の言い訳は不要だ。彼は一階と二階を正々堂々と歩き回っている。他の人は彼をいつものような目で見ている。
三階は主人一家の居住区だ。ジコクはどんなに協調性がなくてもルールに反して侵入するわけがない。彼が住んでいる屋根裏には、一階から直通する梯子で上がる。どのようにしても三階に近づく可能性はない。言い訳は見つけられない。
ジコクは三階に通じる階段の前まで歩いて、忍び込む可能性を考えている。その時、ワールが三階から速いスピードで階段を駆け下りてきた。彼は顔面蒼白で、息が切れている。ジコクの知る限り、ワールがこんなに慌てる理由はたった一つ以外にない。
「お嬢さんはどうしたのか?」ジコクは訊いた。
「早く、誰かを呼んで!」ワールはジコクの肩を掴んだ。まるで立ち続けるために支えが必要なようだ。
「誰を呼ぶ?」ジコクはここに来てまだ日が浅いので、誰が信頼できるか全然わからない。ハナさんを呼ぶことは100%不可能だ。状況を調べる必要がある。ジコクはワールに言う、「汝は誰かを呼んで! 私は上に行く!」
ワールは力強く頷いて、走り去った。
ジコクは階段を駆け上がる。階下の派手なスタイルと比較して、二階の装飾ははるかにシンプルで、眩しい金線の飾りがなく、暗い色でより穏やかに見える。
ジコクは家具や置物を観賞する暇もなかった。彼は上がって見ると、廊下の突き当たりにある部屋の扉が開いており、部屋の中には大きく開いた窓があり、冷たい空気が部屋に流れ込んでいる。
そして、部屋の門口で、だんな様がユーラン夫人の上着を掴み、彼女を平手打ちしている。ユーラン夫人は髪の毛が散乱して血で汚れて、顔に張り付いている。
ジコクは一歩後退した。ワールに人を呼びに行くよう頼んだ後、自分は果断に逃げるべきだった。なぜ自ら巻き込んだのか? でも、ジコクは前回のDVの件を思い出した。そのときワールはその件を止めなかった。ワールが取り乱した原因は、頻繁に殴られていても命に別状がないユーラン夫人ではなかった。
ジコクは大股で進み、門口に近づいた。その夫婦の間の隙間から見ると、部屋の床に一人の女の人が絨毯の上に仰向けに倒れており、頭を窓に向け、両足を扉に向かって広げている。
そのような場面を目撃したのは初めてではないが、ジコクはまだそれに慣れることができない。そのような事を見るたびに、彼は怒りと嫌悪感が入り混じった感情が心に燃え上がる。その事をやった人を捕まえ、代価を払わせたいと強く感じる。
床に横たわっている女の人は双子の中の1人だが、どちらか知らない。服が肋骨の上までたくし上げられて、襟ぐりが破れた。露出した左乳に数カ所の引っ掻かれた傷がある。下着がなく、太ももに数カ所の薄紅色の擦り傷がある。
ジコクは怒りを脇に置いて、お嬢さんの状況を冷静に観察する。お嬢さんは目の焦点が合わず、表情がぼんやりとしており、喉からゴボゴボと声を出しており、痙攣しつつ体をよじっている。
彼女は中毒しているのだ。ジコクはあの媚薬を連想した。多くの媚薬は媚薬と呼ばれているが、実際には麻薬だ。もう一つの可能性がある。ハナのあの怖い魔薬が、ついに汚染によって深刻な変異を引き起こした。一般的に言えば、汚染による非予期の効果は90%以上良い効果ではない。
早く対処しなければ、お嬢さんは危険にさらされる。
「一体何をしてるのか? あれは『俺の』娘だ! そんなことをしてはいけない!」だんな様がユーラン夫人に怒鳴りつけた。
「彼女は私の宝物です。渡すつもりはありません!」ユーラン夫人が泣きながら叫んだ。
「どけ!」ジコクは一歩進み、二人に向かって低い声で吠えた。彼の声は大きくなかったが、極めて低く沈んで、まるで地鳴りのようだった。これは法律で止めず、権力で制さず、服従するしかない原始的な脅威であった、と二人は感じた。
二人は手を引っ込めて後退して、体を扉の枠に押し付けた。ジコクは彼らの間を大股で通り過ぎた。そして彼らは再び喧嘩を始める。ジコクは彼らの声を脳から排除して、お嬢さんに集中する。お嬢さんの肌に紫色の斑点がたくさんあり、顔が不自然に赤い。ジコクは彼女の手首の内側を触ると、脈拍は極めて速く不規則に鼓動している。
ジコクは歯ぎしりをしながら、自分の薬材パックを開けた。ハナの工房に何の薬材があったか、また、領収書に何の薬材が載っていたか、を思い出した。彼は不可解な直感を持っており、それに中毒の症状を加えて判断すると、毒のフォーミュラは領収書に載っていたが、工房で見たことのない材料で組成されていたはずだ。
ジコクは薬を作り始める。未知の汚染源の問題を考えると、複雑なフォーミュラを使用すれば、もっと多くの予期せぬ結果を引き起こす可能性がある。というわけで、彼は最も単純で最も強力なフォーミュラだけを使用する。彼の経験の限りで、最も適当な薬草を3つ選んで、丸めて団子にして、お嬢さんの口に詰め込む。でもすぐに舌で押し出された。
「これはとても高価だ! 早く飲み込んで!」ジコクは焦って言った。
階段室からどんどんと音がして、ワールが誰かを連れてきた。ウェイターのグループがその夫婦を押したり引っ張ったり離して、連れ去った。
ワールはジコクのそばに片膝をついた。
「どうだった?」ワールが訊いた。
「解毒剤を作った、でも彼女は飲み込めない!」
「これ、本当に有効か?」ワールは眉をひそめて訊いた。
「絶対に有効だ!」ジコクは言った。これは光明の歴史ではなかったが、ジコクは黒暗学院での最高の毒の専門家で、解毒術も秀逸だった。
「渡せ」そう言って、ワールはジコクの手から薬を取って、自分の口に投げ込んだ。ジコクは叱責したくなった。ワールがそれを食べて何をするつもりなのか? だがワールは、ジコクが想像できないし、模倣することも不可能な行動をする。
ワールは身を屈めて頭を下げ、自分の唇をお嬢さんの唇と重ね、薬を口から口へと渡した。
ジコクは開いた口が塞がらない。空気と水の交換の話を聞いたことがある、でも、薬を口移しで渡すなんて、この舌の技術はいかに巧みなんだろう?
数秒が経って、ワールは顔を上げ、手の甲で口元を拭った。ジコクは、最後の瞬間に撤収したワールの舌を無視できなかった。
「彼女、食べた?」ジコクは恥ずかしそうに訊いた。
「食べた」ワールは男らしく答えた。
「汝たちは──」ジコクはどのように問えばいいのかわからない。汝たちはカップルか?
「うん」ワールは肩を垂れ、もう隠したくなくなった。
ジコクはつま先でしゃがみながら、お嬢さんの手を引き上げて脈拍を測る。だから、この人は妹・ジーヌオか? ジコクは、お嬢さんの脈拍がゆっくりと緩やかになり、安定して規則的になったのを確認した。
ワールがベッドから布団を取ってきて、お嬢さんにかぶせた。彼女は顔の紅潮が引い、体の震えが止まり、容態が大きく改善した。
「よし、効いた!」ジコクは心が躍り、自分の成果を喜んだ。
ワールがゆっくりとお嬢さんの髪を梳いている。その動作に込められた愛情によって、ジコクは自分が見るべきではないように感じた。
階段の方から再び足音がした。今回足音の持ち主は体重がより軽いが、歩き方がより重く、二階を上がる速度が男性に比べて劣らない。数秒もしないうちに、双子の別の一人が門口に現れて、息を切らしながら訊く、「姉は大丈夫?」
だから、部屋にいる者は姉・リーヌオだ。
ワールはジーヌオに話しかけた。そしてリーヌオをベッドに運んだ。二人のメイドがジーヌオと一緒に入った。彼らは彼女の世話を引き継いだ。
ジコクとワールは部屋を出た。ワールが扉を閉めた。さっき緊張しすぎたから、二人とも扉に背を向けて座り、リラックスした。
ジコクは、ワールに伝えなければならない非常に重要なことがあり、「汝の奥さんの医療費は銀貨76枚です」
ワールは躊躇なく金貨1枚を取り出してジコクに渡した。ジコクは受け取った。おつりなし。
「ありがとうございました」ワールが言った。
ジコクは突然、おつりを返したい衝動に駆られていた。でも、自分の財布のために堪えた。
「でも、彼女は僕と結婚しない。僕たちの身分は違いすぎる」ワールが言った。
「しかし、みんなも汝たちが結ばれることを期待している」ジコクは言った。今、彼はすべて理解した。メイドたちがワールがメイドの休憩室に入ることを気にしなかったのは、彼らがワールをパートナーのいる者と見なし、独身のジコクよりも安全だと考えたからだ。また、彼らがワールを見ていた目つきとジーヌオがワールに話していた口調から、それらの人々はワールを非常に認めているらしい、とジコクは感じた。
ワールは答えなかった。
ジコクはさっき起こった事の情報を聞きたい。彼は地面に座り、両手で足を掴み、天井を見上げながら、長い間考えて、ついに最も婉曲的な言い方を思い付いて、訊く、「そんな事はよくあるの?」
幸いなことに、ワールはジコクの質問の意図を理解できた。ジコクはさらに詳しい説明する必要がない。ワールは“ジコクは自分の味方だ”と思って、答える、「今回は特に深刻だった」
「いつからの?」ジコクは訊いた。その質問はお嬢さんの毒を取り除くことがいかに難しいかと関係がある。中毒の時間が長ければ長いほど、取り除くことが難しくなる。
「知らない。僕がここに来たときには、もうこうなってた」
「誰も知らないの? 汝より早く来た人はいないの?」
「ここにいる時間がㄧ番長い者はハナだ。他の誰も知らない」ワールが言う、「彼ら一家は以前ここには住んでいなかった。前の家から連れてきた召使いはすべて解雇された。現在の雇員は全員、勤続3年未満の新人だ」
ジコクはサーレンの話を思い出した、“乱倫”。真実はもっと酷いものだ。それは合意さえもなく、レイプドラッグを使ったもっと悪質な行為だ。
それは変態すぎる。前の召使いたちが解雇されたのは、彼らがそのことを阻止しようとしたからなのだろうか? それとも、他人に知られてはいけない核心的な秘密に近づいてしまったため、早く追い払われたのか? だんな様は使用人が自分の行為を言いふらすことを心配していない、とジコクは思っている。そうでなければ、ワールが今無事でいるはずがない。では、なぜ前の召使いたちを解雇する必要があったのだろう?
その秘密は何だとしても、ハナは明らかに共犯者だ。彼女だけは解雇の嵐の中で無事だった。だからワールはハナを見張っていた。では、パくんはどうして死んだのだろう? 彼はその秘密を見つけたのか?
「ハナは何をしようとしているのか? どう思う?」ジコクは訊いた。
「よくわからないけど、彼女は当年この場所を爆破した魔法を再現してほしいと思う」ワールも大爆発の事を知っている。「僕は魔法師じゃないけど、見てわかった。彼女はたくさんの物を買って、卑劣な表情をしていた。それは全く無能な人が大きな事を企む表情だった」
ハナは自分が操れない危険な法術を操ろうとしている。
「それには利点が全くない」ジコクは言った。プロの魔法師は、自身を傷つけないように、自分の能力の範囲を理解するべきだ。
「そんな人は、力量が強ければ強いほど良いと思っているものだ。彼女は、爆発が大きければ大きいほど、死傷者が多ければ多いほど、それは自分が負えないほどの大きなリスクだと思わずに、もっとやる価値があると感じる」
ジコクは頷いた。それは、昔から今まで魔法研究に関連する死傷者が消えていない主な原因だ。《光明之杖》が実験に安全対策についてどれだけのルールを制定したとしても、老手の魔法師が法術エネルギーを安定させるためにどれだけの道具を発明したとしても、自分を爆破する人はまだ一つも減っていない。
不可能に挑戦したい人がいつもいる。何が不可能かを判断する能力のない人が、特にそうすることを好む。ハナのような人にとっては、鶏の卵を爆破することすら大変難しい事だ。彼女の愚かな頭では、家が大きな穴になる光景をまったく想像できない。
ジコクの首にある銀色の匣が跳ねていて、昼食の時間になったと知らせた。
「昼食の時間だ」ジコクは首をすくめて言う、「状況が変われば、また私を呼んで」
「僕は汝に2倍の分量を与えたいって、シェフに伝えて」ワールは笑みを搾り出して言った。
「はい。必ず伝える」ジコクは立ち上がって、歩きながら袖から糸くずを落として、三階を離れた。
ワールの名前はとても便利だ。しかも彼が目立つ場所に座って昼食を食べている時、彼がリーヌオさんを救ったというニュースが広まった。というわけで、シェフがもともと再び飢民と化するのを防ぐために彼に大盛りを与え、ワールの指示に従って2倍を加え、命を救った報酬としてとんかつを追加して、彼の昼食は壮大な食べ物の山になった。ジコクは腹めっちゃいっぱい!
勤務時間中、ハナさんは今日機嫌が悪く、ずっと「螺旋の尖塔の恋」の架空のカイルハ市に隠れている。ジコクは工房に床を掃いたり棚を拭いたりしている。工房は最近、彼によって整理されて、まるで別の場所になったようだ。今彼は、それらの腐った法術材料を捨てるべきかどうか躊躇している。瓶の外側からガラス越しにカビが見えるほどだ。ちなみに、それらの偽物について、彼はもちろん知らないふりをしている。
その後、ジコクはハナの休憩室までも整理する。彼はハナの小説を本の上に載っている“スウィートハウス”や“ラブハウス”や“ドリームハウス”などの小説のシリーズ通りに分類して、そのついでに本の隙間に挟まれていたブックカバーを嵌めた。珍しいことに、1冊の厳粛な本を発見! ジコクがどう分類すればいいのかを悩んでいるとき、ハナは突然寝椅子から跳ね上がって、ジコクが今まで見たことのない高速で服を整理し、命令を下す、「工房に行け! 私の指示がなければ来るな!」
ジコクは従順に工房に入って、「カラ」と音が聞こえた。ハナが扉をロックした。ジコクは扉に耳を当てて盗み聞きしていたが、何も聞こえなかった。ハナは渉外事務室に行っているはずだ。
ジコクは薬材パックから正円形のステンレスミラーを取り出す。ハナさんの事務室には、彼はもちろん糸くずを置いておいた!
ジコクは作業台のそばにしゃがんで、薬水で湿らせた布でステンレスミラーを拭く。鏡の上の映像は一瞬揺れて、誰もいない廊下を映し出した。ジコクが鏡を一回叩いた後、やっと渉外事務室の映像を正しく映し出した。
ジコクは映像を見ると、シルクハットをかぶって、正装を着た一人の男が映像に背を向けてハナの机の前に座っている。そして、ハナが机の後ろの大きく派手な事務椅子に座り、眉を下げて口角も下げて話している。
その人は男性のはずだ。角張った骨格から判断した。でも、骨格の割合が女性に似ている。骨盤が見えるならば判断はより正確になるが、その人は座っているので見えない。彼は昨日の宴会で見た人たちよりもフォーマルな服装をしている。その程度のフォーマルな男性の礼服を着ている様子は、ただ話をしに来たようではなく、何か重要な式典に出席しようとしているようだ。その男は元々弱い印象を与えるなで肩をしているが、2つのレンガのような肩パッドが入っており、目立ちすぎて、とてもおかしい。
ジコクは糸くずを事務室の入り口に投げたため、男の後ろ姿とハナの正面しか見えない。ハナの後方にも糸くずを投げるべきだった。ジコクはハナの口話を読み取って、礼服を着た男が何を言ったかを推測するしかない。
ハナが頻繁に頷き、阿諛している様子から、その人はハナのスポンサーだと推測できる。でも、その人はだんな様ではない。なぜなら、だんな様は肩パッドを使う必要がないからだ。
ハナは最初、とても楽しそうで温かい表情を見せていた。礼服を着た男に飛びかかって彼を抱きしめたいかのようだった。でも、会話が進むにつれて、ハナの目に怯えが浮かび、眼球を転がし、相手を見る勇気がなさそうだ。その後、礼服を着た男は手が震えながらハナを指差しており、ハナは自分の胸に手を当てて泣くふりをしている。
ハナが言う、「違います。そんなことはありません。信じてください! 私は貴方に深い忠誠を持っています! いつも貴方を首位に考えています⋯⋯
もちろん、すべてうまくいきます。ただし小さな障害がありますが、すぐにクリアされます。この事がどれほど重要かを理解していない人は、いつも細かいことのために私たちを阻む! ということが貴方もわかっています⋯⋯
だんな様、私はわざと貴方を邪魔するわけがありません。あの助手? ジコクが邪魔をしたのですか? いいえ、違います! 全ては彼が勝手にやったことです!」
ジコクは不吉な予感がする。
その男が立ち上がり、興奮して腕を振る。今ジコクは彼が男性であるのを確認できた。ハナは少々の涙を搾り出した。会話は唐突に終わった。その男は天井を指差し、大げさで古臭い法術をかける姿勢をすると、紫色の光が彼を包み込んで、姿を消した。
それは伝送扉に違いない!
ハナは涙を拭って、引き出しから6種類の化粧品を取り出して化粧を直した。そして立ち上がって、奥の部屋へと歩く。
ジコクは鏡を素早く袋に詰め込んで、工具を整理するふりをする。
3分後、ハナが事務室の扉を開けて、イライラして足を踏み鳴らし、「ジコク! このノートに載っている店に、物を買いに行け! ほら、持っていけ!」彼女は一つの封筒を床に投げた。
ジコクは体をかがめ、封筒を拾い上げた。その中には法術材料店の住所と買い物リストとお金がある。それらの物はどこにでもあるごく普通のもので、近所で容易に手に入る。でも、ハナはトレインでしか行けない店での購入を指定する。
「おつりで夕食を買っていい」そう言って、ハナは振り返って去った。
この家を出たとき、ジコクは銀の匣も、祭刀も、薬材パックも、全部持っているのを数度チェックした。
まるで戦場に行くような気がした。