17.局長さまに愚痴をこぼす
「まあいいです。君の仕事の具合はどうですか?」
ジコクは体を前傾させてバランスを取ってから、妙に明るい声で言った。「仕事の具合は最高です。ここより理想的な職場なんて想像もつきませんね。華やかで給料が良くて仕事が少なくて家から近い、上司は優しくて同僚は親切で、しかも民衆と顔を合わせなくてもいいです」
鈴はまる三十秒沈黙した。ジコクには息遣いだけが聞こえた。それから局長さまの声が再び響いた。「勤務先、合ってましたか?」
「合っていなかったならよかったのですが」ジコクはさっき二度目の衝撃を味わいかけた後頭部を撫でた。あそこにはまだ腫れが残っていて、すぐには引かないだろう。彼は歯を食いしばって言った。「古びたオムツ桶に殺されかけましたよ。ここはかなり深刻に、幽霊っぽくない幽霊が出るのです。責任者は半年も姿を見せていません。当地の住民はみんなこの場所を更地にしたいと思っているのです」
「責任者の件は私も初めて聞きましたよ」局長さまは言った。言外の意味は、それ以外のことなら全部耳に入ってる、ということだ。
鈴から、海苔を破るようなシャカシャカという音が聞こえてきた。「とにかく君、まだ生きていますよね。幽霊ではありませんよね。この頃では幽霊が魔話をかけるのも珍しくなくなっているのですよ」局長さまがジコクに聞いた。
「そうだよ、俺は幽霊だ。お前にかけてるのは、今からお前のところへ祟りに行くって伝えるためだ。お茶を淹れてお菓子を用意して待ってろよ」
「はははははは!」局長さまは一連の、まったく誠意のない笑い声を上げた。
「お前はいつも、いつも俺が情報を持ってないのをいいことに、誰も引き受けない仕事を割り当ててくるんだ。もう苦労はこりごりだ、辞める! 聞いたか? や・め・る! お前はさっさと失業リストを確認しろよ、まだ誰か馬鹿みたいに素直にやって来る奴がいるかどうか!」
局長さまは素直に答えた。「君だけですよ」
ジコクは、犬が人を脅すときのような低い唸り声を上げた。
「こうしましょう。君、ミシヌタワーを知っていますか。今、世界一高いビルの記録を破ろうとしているのです。世界レベルのランドマークですよ。あそこに今、防護魔法師の欠員が出ているのですが、どう思いますか?」
「あそこ、数日前労災事故が起きたばっかりだろ。国家建設局が目を付けてるよ、行かない!」
「へ? どうやって知ったのですか」局長さまはジコクの情報源を疑った。ジコクにはラジオすらないのに、ましてテレビなんてないはずだ。誰かが教えてくれるはずもない。
「毎日、紙の布団を拾って体にかけているんだよ。あれに書いてある」ジコクは歯を食いしばって言った。
新聞なら結構簡単に手に入る。頭に最新情報を入れられるし、体も温まる。ジコクは毎日ゴミ箱を回ってこれを探す時間が、かなり価値があると思っていた。
「ちっ、こんなときに限って鋭いんだからな。君はまだ救いがあると言うべきですか。それとも厄介な奴だと言うべきですか?」
「俺だってこんなに鋭くなくて済むならそれでいいよ。クレーンに潰されるような仕事なんか勧められずに済むならね」
「はあ、安心してくださいよ。今のクレーンは全部科学者たちが作っているのです。君が第四焼却炉で解体するようなものではありませんよ」局長さまはとぼけて、さっきジコクにクレーン事故現場の仕事を勧めたことなんてすっかり忘れたふりをした。
鈴から、局長さまが海苔を食べるチャプチャプという音が聞こえてきて、彼は食べながら話し続けた。「今の君の仕事は絶対安全です。そんなに緊張しなくてもいいのです。ただのちょっとしたお化けが出るだけです。オムツ桶なんて大した相手ではありません。君のように強い方なら、余裕で対処できるのです。
第四焼却炉は三十五年稼働していますが、これまで一度も事故なんて起きていないのです。半月前にも定期点検したばかりです。何か問題があればそのときに見つかっているはずです。
絶対に前回のあそこみたいに、君が行って一週間で全部吹っ飛ぶなんてことにはならないのです」
ジコクは立ち上がり、体を机の縁に寄せて魔話ケージに近づき、両手で机の端を強く握りしめ、大声で怒鳴った。「その定期点検なんて、一般の民衆だって騙せないよ! 耐用年限の二倍半も超えた施設で働くなんてごめんだ!」
「二倍半を超えても何ともなかったのですから、三倍を超えても大丈夫でしょう。
これだけ長い間何事もなく来ているのです。今に限って事故が起きるなんて、そんな不幸なタイミングではありません。
よく考えてみてください。もうすぐ冬です。君、お金なんてないのでしょう。この時期に路頭に迷うつもりですか。
気象局の予言部門が言うには、今年は寒波が特に多いのです」
局長さまは、前回の事件でジコクの我慢の限界をすでに使い果たしたことをよくわかっていた。だから情に訴える「君のためを思っているのです」作戦に切り替えたのだが、その口調にはそんなニュアンスが微塵も感じられなかった。
「ただの路頭に迷うだけだ──まあ、大きなビニール袋に新聞を詰めて寝袋代わりにして、橋の下でダンボール箱を巣にして──ただ厨房の裏口で残飯を待ち伏せして、溝で落ちてる銅貨を拾って──ただ噴水で体を洗って、公園で水を飲んで──」ジコクの声はだんだん小さくなっていった。話せば話すほど、あの日々の惨めさが蘇り、二度とあんな生活に戻りたくなくなった。
「少なくとも第四焼却炉では、ダンボール箱は天井ではなくてドアの代わりなのです。感謝の気持ちを持って続けてくださいよ」局長さまは同情たっぷりの声を出したが、ジコクには笑いを堪えきれずに漏れるプッという息遣いが無視できなかった。
「春までだ、春になったら辞める!」ジコクは精一杯凶悪な口調を装ったが、どうしても選択肢がない心の弱さが隠しきれなかった。
局長さまの爆笑の中で、ジコクは通話を切った。椅子に座り込んで、むしゃくしゃした。
貧乏人には仕事を選ぶ権利なんてない。
だって、求人情報を集めるのも、いい仕事の採用を待って無職でいるのも、面接の準備をするのも、仕事追いかけてあちこち移動する交通費も、全部金がかかる。
金がない人は、どんな仕事でもやるしかない。だから大抵、環境も待遇も最悪で、病気や怪我をしやすい仕事ばかりだ。そして一度そんなことになったら、仕事探しはさらに難しくなる。
ジコクは怪我したら終わりだ。飯代すらないのに、医者にかかる金や休養なんてあるはずがない。体を治さないままじゃ、今の仕事だって続けられない。
これがジコクの今の悪循環だ。一歩踏み外せば、万劫の淵だ。
ジコクは決意した。何が起きようと、必ず手足健全に春まで生き延びる。
春が来たら、山に入って自然の恵みだけで生きていける。
ジコクは椅子から立ち上がり、周りを囲む部屋いっぱいの書類を見た。
第四焼却炉の三十五年にわたる記録は、きっとここに全部あるはずだ。
三十五年前、この場所は誰もが夢見た、華やかで将来性のある素晴らしい職場だった。
今じゃ、この施設自体が処理すべき巨大なゴミになってる。いつ爆発するかわからない。人々が関わろうとしないのも当然だ。
ジコクは解体室へ戻った。
ただ、この場所があと四ヶ月持ってくれればいいと願うだけだ。
このエピソードの原文:
「好吧,你工作狀況怎麼樣?」
璽克身體前傾調回重心後,用一種輕快到詭異的語氣說:「工作狀況非常好,我沒辦法想像有比這裡更理想的工作環境了。光鮮亮麗錢多事少離家近,長官慈愛同事親切而且不需要面對民眾。」
鈴噹整整沉默了三十秒,璽克只聽到呼吸聲。之後才又傳出局長大人的聲音:「你有走對報到地點嗎?」
「但願我沒有。」璽克摸著剛剛差點經歷第二次撞擊的後腦勺,那裡還有個腫包,大概不會很快消失。他咬牙說:「我差點被陳年尿布桶殺死,這裡非常嚴重的鬧不太像鬼的鬼,主管半年沒出現了,當地居民全都想剷平這個地方。」
「主管那件事我是第一次聽說。」局長大人說。言下之意是除了這件事以外的事他都聽說過了。璽克聽見鈴噹裡傳來撕海苔的沙沙聲,局長大人問璽克:「總之你還活著對吧?你不是幽靈吧?這年頭幽靈打魔話已經不稀奇了。」
「對,我就是幽靈。我打給你是為了告訴你,我現在就要出發去你那裡作祟,請泡茶準備點心等我。」
「哈哈哈哈哈!」局長大人發出一連串非常沒有誠意的笑聲。
「你老是、老是仗著我缺乏情報,就分配沒人要的工作給我。我吃夠苦頭了,我不幹了!聽見了嗎?我不、幹、了!你最好去檢查你的待業名單,看還有誰會蠢到乖乖來報到!」
局長大人老實的回答:「只有你一個。」
璽克發出像是狗威脅人時的低沉嗚嗚聲。
「這樣吧,你知道密希努大樓嗎?他們現在準備打破全世界最高樓的紀錄,是世界級的地標建築喔。那裡現在有防護法師的職缺,你覺得怎麼樣?」
「那裡幾天前才發生工安意外,國家建設局都盯上那裡了,不去!」
「疑?你怎麼知道的?」局長大人懷疑璽克哪來的情報來源。璽克連收音機都沒有,更別說電視了。應該也沒有別人會告訴他這些事情才對。
「我每天都會去撿紙質被子來蓋,上面有寫。」璽克咬牙說。報紙還滿容易取得的。不但可以讓腦袋吸收最新 資訊,還可以溫暖身體。璽克認為每天花時間巡迴垃圾桶尋找這東西相當值得。
「嘖,偏偏這時候就這麼精明。該說你這傢伙還有救嗎?還是說你很難搞呢?」
「我也希望我可以不必這麼精明,也不會被推薦去給起重機砸。」
「唉,你放心吧。起重機現在全都是科學家在做的,你在第四焚化爐絕對拆不到。」局長大人裝傻,把他剛剛才推薦璽克去砸過起重機的工地工作這件事給忘了。鈴噹裡傳來局長大人吃海苔的咂咂聲,他邊吃邊說:「你現在的工作絕對安全無虞。你不必這麼緊張,只是小小的鬧鬼而已,尿布桶又不是什麼強力的對手,你這麼厲害,應付得來的啦。第四焚化爐運轉三十五年來從沒出過什麼事,半個月前才做過定期檢查,有什麼問題那時候就該發現啦。絕對不會像上次那裡那樣,你才去一週就整個炸掉啦。」
璽克站起來,身體靠在桌邊接近魔話籠,兩手用力抓住桌緣,大吼:「那個定期檢查連一般民眾都唬不了,我才不要在一個超過使用年限兩倍半的園區工作!」
「既然超過兩倍半都沒事了,當然也可以超過三倍嘛。這麼多年都沒出事,不會這麼倒楣就在這時候出問題啦。你要仔細想想啊,馬上就進入冬天了,你又沒錢租房子,要在這種時候流落街頭嗎?氣象局預言部門說今年寒流特別多喔。」局長大人很清楚,上次的事件已經把璽克對他的耐性額度消耗殆盡,所以他改採動之以情,「我正在為你著想」的策略,不過他的語氣絲毫聽不出來有這個意味在。
「只不過是流落街頭而已──不過就是要拿大塑膠袋裡面塞報紙當睡袋、在橋下用紙箱當窩──只是必須去廚房後門攔截廚餘,在水溝裡撿別人掉的銅板──只不過是在噴水池裡洗澡,在公園找水喝──」璽克聲音越來越小,他越說越覺得那樣的日子真是悲慘,越說越不想再過那樣的生活。
「至少在第四焚化爐,紙箱是用來當門板而不是天花板。你就懷著感恩的心做下去吧。」局長大人裝出充滿同情的聲音說,但是璽克實在是無法忽視那些忍笑不成而發出的噴氣聲。
「我只做到春天,等春天我就走人!」璽克努力裝出兇狠的語調,但怎麼也掩飾不住他別無選擇的心虛。在局長大人的狂笑聲中,璽克切斷通話,坐到椅子上生悶氣。
窮人沒有選擇工作的權力。因為不管是收集徵才情報,還是先不工作等待錄取較理想的工作,進行應徵工作前的準備,還有追著工作到處跑的交通,全部都需要錢。沒有錢的人就只能有什麼工作就做什麼,因為這樣,往往做的都是些環境跟待遇比較惡劣,比較容易生病受傷的工作。而一旦發生那種事,要找工作就會變得更加困難。璽克一旦受傷就完蛋了,他連飯錢都沒有,何況是看醫生跟休養。而不把身體養好的話,他連現在這個工作都做不了。這就是璽克現在面對的惡性循環,一步沒踏穩就萬劫不復。
璽克下定決心,不管發生什麼事,他一定要好手好腳的活到春天。等春天到來,他可以進山裡去靠天然資源維生。
璽克從椅子上站起來,看到環繞著他的滿房間文件。第四焚化爐三十五年來的紀錄應該都在這裡了。三十五年前這個地方是人人夢寐以求,光鮮亮麗而且充滿發展性的好工作,而現在,這地方本身就成了個該處理的大型垃圾,不知道什麼時候會爆炸,人人避之惟恐不及。
璽克走回分解室去。
他只希望這個地方能再撐四個月。




