47.ユーラン夫人の庭
ジーヌオはジコクを連れて直接三階へと向かった。
ジコクは時間を思い出し、絶望的な口調で懇願した。「ジーヌオさん、そろそろご飯の時間なんです」
厨房の食事提供時間は限られており、過ぎれば彼は貯蔵食しか食べられない。
「今日の午後に宴会があるわ。賓客として参加させれば、好きなだけ食べられる」ジーヌオは振り返らずに答えた。
「交渉成立です」ジコクは即座に返した。
ジコクが三階に上がるのはこれが2回目だ。
それでも彼はまだ慣れない気がした。こんな場所が、パくんと自分の部屋と同じ建物の中にあるなんて、受け入れられないからかもしれない。
ジーヌオはジコクをユーラン夫人の部屋のドアまで連れて行った。
ジコクは最初、そこがドアではなく装飾の壁だと思っていた。ジーヌオがドアノブを握るまで、そこで初めてドアだと気づいた。
ユーラン夫人のドアはレースと造花でびっしり覆われ、戸板が埋もれるほどだ。ドアノブも布とレースでできたカバーに包まれている。
ドアが開くと、その奥にはまた造花に満ちた空間が広がっている。甘ったるい香水の匂いが漂ってきた。
この匂い、ジコクはハナの本棚から取った唯一の非小説の本『スカートの枷』から嗅いだことがあった。
部屋の中のものはどれも奇抜なデザインをしている。たとえば、テーブルは花束の形、椅子はカタツムリの形、ベッドの柱は鈴蘭の花を持つ小さな精霊の形、棚にはリスやウサギなどの小さな彫刻がずらりと並んでいる。
一つか二つだけ部屋に置くなら、こういう装飾はなかなか素敵で、部屋を活気づけるだろう。しかし、ここでは部屋全体がこうしたもので埋め尽くされている。
すべての家具が何らかの生物の形をしている。家具の上には人形がびっしり並び、テーブルトップはほとんど見えず、字を書いたり本を読んだりするスペースなど皆無だ。
この部屋は活気があるというより、ひっくり返ったおもちゃ箱のようで、制御不能で圧迫感を与える。
ユーラン夫人は、まさにそのおもちゃの山の真ん中で、片付けを拒む子どものようだ。
彼女は異国の姫のような、フリルがたっぷりの寝間着を着て、ピンクの紗のカーテンがかかったベッドに横になっている。その紗のカーテンには布製の小さな小人の人形がたくさん吊るされている。
必要以上の数のメイドが彼女を取り囲んでいる。ジコクはこれまで彼らを見たことがない。
彼らはツインテールのメイド派閥でもなく、ワールとジーヌオが人手が必要なときに呼ぶ相手でもない。おそらく、ユーラン夫人専用の使用人たちだ。
彼らはみなハイヒールを履き、傲慢な表情を浮かべ、ジコクには主に甘やかされて好き勝手に吠える犬を連想させた。
あまりに人数が多すぎるため、彼らのほとんどの役割は、テーブルの上の人形と同じく、ただの飾りだ。
「母様、ジコクを連れました」ジーヌオがユーラン夫人に言った。
「あぁ、助手さん」普段、横になっている人は大きく息を吸うことはあまりないが、ユーラン夫人は上体を起こすほど深く息を吸い、ゆっくり吐き出し、非常に感情的な様子を見せた。
彼女は手を上げ、ジコクの目の前に差し出した。
ジコクは一瞬戸惑ったが、彼女が手の甲にキスしてほしいのだと気づき、ぎこちなく従った。
これまでジコクがユーラン夫人に会ったときは、いつも場面が非常に劇的だった。今回が初めて、日常生活の中のユーラン夫人を見た。
ジコクは気づいた。ユーラン夫人は普段から劇の中に生きる人だ。
彼女がジコクを見る目は、目の前の人を見ているというより、遠く彼方の何かを眺めているようだ。もしかしたら、彼女は空の彼方に書かれた台本を見ているのかもしれない。
「まあ、ちょっと具合が悪いんです。見てくれますか? 貴方が私の愛娘を救ったと聞きました。皆、貴方がとてもよくやったと言っていました」ユーラン夫人が言った。
ジコクはなんて答えればいいかわからない。そこでジーヌオが補足した。「うちのかかりつけ医が、君が姉に与えた薬が正しかったと言っていたわ」
ジコクはうなずいた。この評価は彼を嬉しくさせたが、目の前の状況にどう対処すべきかはまだわからない。
彼はゆっくりとユーラン夫人の袖をまくり、脈を診ながら、突然彼女に平手打ちを食らわないかと常に警戒していた。
ジコクのスローモーションのような動きは、ユーラン夫人を面白がらせたようで、彼女は微笑みを浮かべた。
ジコクはすぐに原因を見つけた――また毒だ。
ユーラン夫人の腸胃は完全にやられている。
この状況はジコクに甘蕊草を連想させた。少し摂取するだけでこんな結果になるのだ。
ジコクはよく耳にしていた。永遠の若さを求めて魔薬を乱用する女たちが、結局自分を時間に変化しないミイラに変え、生前の美貌に対しては何の役にも立たなかったと。
ジコクは薬材パックを開き、薬の調合を始めた。
彼が忙しくしている間、ユーラン夫人は虚ろで、まるで独り言のような声で話した。「私の愛娘を救ってくれてありがとうございます」
「恐縮です」ジコクは作業中で、顔を上げずに答えた。
その仕事で彼は24枚の銀貨を稼いだ。そのうえ、ワールを好きになった。彼はいつでもワールが頼ってくるのを歓迎する。
だが、ユーラン夫人に対しては、ある種の感覚がある。彼女の世界には、他の人の物を使ったなら金で返すという、銅臭い考えは存在しないだろう。
彼女はジコクが捧げる薬を、愛の献上品として、罪悪感なく無料で使うに違いない。
ユーラン夫人は再びジコクに向かって独り言を続けた。「私の小妖精が去ってから、身体がどんどん悪くなっているんです。ああ、これは心が碎れる病ではないでしょうか」
「この小妖怪、美しい姉を妬んで追い出したんです」ユーラン夫人はジーヌオを指して言った。「私の愛娘、今、どこにいるの? 風雪に耐え、雪水で飢えをしのいでいるの?」
突然、ユーラン夫人がジーヌオに大声で叫んだ。「出て行きなさい! あんたみたいな小妖怪なんて見たくない!」
ジーヌオは口をへの字にし、首を振って部屋を出た。
ジコクはぼんやりと気づいている。リーヌオが去ったことは、ジーヌオにとって利益になる。
この家には二人の娘しかおらず、継承者になれるのは彼らだけだった。リーヌオが抜ければ、すべての財産はジーヌオのものになる。
ジーヌオがリーヌオに劣る唯一の点は、良い夫を見つけることだが、ジコクはそれがジーヌオにとって難しいとは思わない。
このことがジーヌオに有利に働いたとしても、ユーラン夫人が「追い出した」と言うのはあまりに大げさだった。
ジーヌオはただ、リーヌオの願いを叶える手助けをしただけだ。ワールと一緒にここを去ることは、リーヌオにとって絶対に良いことだ。
ジコクはWin-Winの状況にはいつも異論なし。
「あぁ⋯⋯私の世話がなければ、彼女はずっと病弱なままよ。こんな風雪の中で、私がいなければ――」ユーラン夫人はひたすら嘆き続けた。
ジコクは眉をひそめた。他の男ならどうなるかわからないが、ワールがリーヌオを風雪にさらすようなことは絶対にない。
「なぜ彼女はそんな策略に引っかかって、男と一緒に私を去ったの? 男でなきゃダメだったの? どうしたら彼女を救い戻せるの?」ユーラン夫人は声を詰まらせた。
ジコクは本当は言いたい。去ることがリーヌオにとって良いことだと。でも、彼は黙っている方が賢明だとわかっている。
薬の準備ができた。ジコクは丸薬を紙に包んでメイドに渡した。「2時間ごとに白湯で1錠飲んでください。費用は――」
「ありがとうございます」メイドは仮面作りの手本に使えるほど標準的な笑顔で言った。
「費用――」
「ありがとうございます」
「材料費――」ジコクはもう一度試した。
調剤の労力と長年積み重ねた知識には金を請求しないにしても、せめて材料費くらいは払うべきだろう。
メイドは無敵の笑顔を浮かべた。「夫人へのご厚意、誠にありがとうございます。貴方の熱心な助けがあれば、夫人もきっと回復するでしょう」
ジコクの心には無数の汚い言葉がよぎった。彼はベッド脇の椅子に腰を下ろし、ユーラン夫人の手を取った。
「夫人、どうぞご自愛くださいませ」
「貴方の気遣いに感謝しますわ。残念ですが、起き上がって礼を言う力もないのです。」ユーラン夫人はか細い声で答えた。
ジコクが入ってきてから、彼女はどんどん弱っているように見え、今ではまるで死にそうな様子だ。
だが、ジコクは彼女の病状が死からまだ遠いことをよくわかっている。
「貴方は私たち全員の太陽でいらっしゃいます。この寒い季節に、私たちの心を温めてくださるのは貴方だけです。貴方がいらっしゃらないので、私たちは、自分の家は墓のように暗いと感じています。
ああ、このような事を申し上げたのは、貴方を悲しませるつもりはございません。私は貴方にこれ以上のご負担をおかけしたくはございませんが、私たちは一刻も早く貴方の回復を心からお待ちしております。
貴方はご病気の際でも、私に下さった笑顔もとても美しいです。もし元気なお姿を拝見できれば、それはきっと私の人生を照らす輝かしい思い出となるに違いありません」
ジコクは持てるすべての演技力を駆使し、最も誠実なまなざしを浮かべ、ユーラン夫人を、かつて寒い夜に路上で寝ていたとき、橋の下で一緒に身を寄せ、温めてくれた大恩犬だと想像した。
「なんて心遣いなのです。本当にいい子ですね」ユーラン夫人はメイドを呼んだ。「私のブローチを持ってきて」
メイドが持ってきたブローチは銀の台座に、緑豆ほどの大きさの宝石が7つ嵌められたものだ。
(注:緑豆とは、もやしになる豆である。台湾では、緑豆を煮て糖を加えた緑豆汁粉(綠豆湯)にして食べる。夏によく見られる甘いデザートである。)
ユーラン夫人はブローチをジコクの手に押し込んだ。
「これを貴方に差し上げます。見るたびに、私がそばにいると思ってください。私が直接現れられないことで悲しまないでください」
「夫人、誠にありがとうございます」ジコクはブローチにキスをし、心臓に近いポケットに大切にしまった。「貴方のブローチを拝見するたびに、暗闇に沈んだ私の心は慰められます。さて、ここで失礼をお許しくださいませ。私の職責が私を縛りつけており、いつまでもここに留まるわけにはまいりません」
「それで心が碎れないといいんですけど」ユーラン夫人が言った。
ジコクは「絶対にありえない」と言いたいが、口に出たのはこうだった。「必ずそうなることでございましょうが、これは私が耐えねばならぬ痛みでございます。では、またお目にかかりましょう、夫人。次にお会いする時は、太陽の下で貴方の笑顔を拝見できますことを、心より願っております」
そして、ジコクは頻繁に振り返りながら部屋を出て、ドアを閉めた。
ジーヌオは部屋を出てからずっとドアのそばに立っていた。「大変だったね」彼女は眉をひそめてジコクに言った。
「うん」ジコクも反論せず答えた。
「これ、診療費として」ジーヌオは金貨一枚をジコクに渡した。「彼女、お金払ってないでしょ?」
ジコクはもちろん、お釣りを返すことなく受け取った。
ジーヌオはジコクの表情が妙だと感じた。「足りる? 足りなかったら補うよ」
「十分です、めっちゃ十分です!」ジコクは金貨をバッグにしまい、忙しくうなずいた。
まさか、別の方法で診療費をすでに得ていたとは言えない。
「じゃあ、もう用はないわ」ジーヌオはうなずき、再びユーラン夫人の部屋のドアを開けて入った。
ジコクはすぐに、ユーラン夫人の叫び声がドアを突き抜けて響いてくるのを聞いた。
「あんたが私の愛娘を追い出したのに、まだ私に何をするつもり? 私の小妖精に会いに行くのをどうして邪魔するの? 彼女の居場所を隠してるんでしょ? どこかに閉じ込めて虐待してるんじゃないの?」
それはジコクには関係ないことだった。
ジコクはブローチを取り出し、本物かどうかじっくり確認してから再び仕舞った。そして階段を降りた。
心血を注いで薬を調合しても赤字なのに、きれいな言葉を並べただけでこんなものを手に入れた。
なぜある人々は、知識を積む退屈な仕事に見切りをつけ、前科を積む道に走るのか? ジコクは少し理解し始めた。
このエピソードの原文:
吉諾領著璽克直直往三樓去,璽克想到時間,以極為絕望的語氣開口懇求:「吉諾小姐,我吃飯的時間要到了。」廚房開放領餐時間有限,過了他就只能吃存糧了。
「下午有場宴會,我讓你以賓客身分出席,你可以吃個夠。」吉諾頭都沒回的答覆。
「成交。」璽克立刻回答。
這是璽克第二次上三樓,他還是感覺很不習慣。也許是因為他無法接受這樣的地方,竟然和他跟小叭的房間在同一棟房子裡。
吉諾帶璽克到優蘭夫人的房間門口。
璽克本來以為那裡不是門,而是一面裝飾牆,直到吉諾伸手去扳門把,璽克才驚覺那裡是門。
優蘭夫人的門上貼滿了蕾絲和假花,大叢大叢的把門板都給淹沒了。門把上也包著布和蕾絲做成的套子。門打開後,門後又是一個充滿假花的空間,還有一股甜膩的香水味飄出來。這個味道,璽克曾經從他在哈娜書架上拿到的惟一一本非小說《裙子的枷鎖》上聞到過。
房內每個東西都有強烈的造型。像是桌子的形狀是一束花,椅子的形狀是一隻蝸牛,床柱是拿著鈴蘭花的小精靈,櫃子上站著很多小松鼠小兔子之類的雕刻。如果只是在屋內放一兩個,這種裝飾還挺不錯的,可以讓房間活潑許多,但是這裡整個房間全部都是這種東西,每個家具都是某種生物的造型,家具上也都站滿了玩偶,桌面幾乎看不到,更別提要用來寫字或看書了。這個房間看起來不會讓人覺得活潑,而像是打翻的玩具盒,既失控又讓人感到壓迫。
而優蘭夫人就是躺在滿地玩具中間,不願收拾的孩子。她躺在掛著粉紅紗帳的床上,粉紅紗帳上又掛滿了布做的小矮人玩偶。優蘭夫人穿著異國公主風格,有大量褶邊的睡衣。
遠多於所需人數的女僕圍繞著她。這些人璽克之前從沒見過。他們不是雙馬尾女僕那一派的,也不是瓦魯和吉諾需要人時會去找的對象,應該都是優蘭夫人自己一個人專用的僕人。他們都穿著高跟鞋,表情倨傲,讓璽克想到被主人放縱而亂吠人的狗。由於人數實在太多了,他們大部分人的任務就和桌上的玩偶一樣,只是個擺飾。
「母親大人,我把人帶來了。」吉諾對優蘭夫人說。
「啊,助理先生。」通常躺著的時候人不太會大口吸氣,但她卻大口吸氣到必須挺起上身的地步,再慢慢吐出,表現出非常情緒化的樣子。她抬起手到璽克眼前,璽克愣了一下才發現她是要他親吻她的手背,璽克笨拙的照辦。
之前璽克見到優蘭夫人的時候,場面都非常戲劇化,這是璽克第一次看到處於日常生活中的優蘭夫人。璽克發現,優蘭夫人是一個平時就活在戲劇中的人。她看著璽克的目光不像是看著眼前的人,而像是看著某個非常遙遠的地方,也許她是看著她寫在天邊的劇本。
「唉,我有點不舒服,你可以幫我看看嗎?我聽說是你救了我的心肝兒。他們都說你做得很好。」優蘭夫人說。
吉諾看璽克不知道該怎麼回應的樣子,在旁邊補充說:「我們的家庭醫師說你給姊姊的藥很正確。」
璽克點點頭。這是個能讓他感到高興的評價,但他還是不知道眼前該怎麼辦。他慢慢的拉下優蘭夫人的袖子,探她的脈搏,並隨時觀察她會不會突然給他一巴掌。
璽克的慢動作似乎逗樂了優蘭夫人,她露出微笑。
璽克一下子就找到原因了──又是毒物。優蘭夫人的腸胃整個垮了。這種情形讓璽克想到甜蕊草,攝取一點點就會造成這樣的後果。璽克常聽說有女人為了青春永駐而亂喝魔藥,結果把自己變成一具永遠不會隨時間改變的木乃伊,對生前的美貌卻沒什麼幫助。
璽克打開藥材包,開始配藥。在他忙碌的時候,優蘭夫人用虛無飄渺,好像自言自語般的聲音說:「謝謝你救了我的心肝兒。」
「不客氣。」璽克正在忙,頭都沒抬的說。那筆生意讓他賺進二十四枚銀幣,並且讓他愛上了瓦魯這個人,他永遠歡迎瓦魯來找他幫忙。不過對於優蘭夫人他有種感覺,在優蘭夫人的世界裡,應該沒有用了別人的東西就要以金錢回報,這種充滿銅臭味的概念。她應該會把璽克獻上的藥當成是給她的愛之獻禮,毫不心虛的免費使用。
優蘭夫人又繼續對著璽克自言自語:「自從我的小妖精離開以後,我的身體就越來越差了。喔,你說,我這是不是心碎的病?」她指著吉諾說:「都是這個小妖怪,她忌妒她美麗的姊姊,所以把她趕了出去。我的小心肝,妳現在在哪裡,是不是忍受著風雪的摧殘,靠著雪水充飢?」
突然,優蘭夫人對著吉諾大吼:「妳給我出去,我不要看到妳這個小妖怪!」
吉諾扁扁嘴,搖了搖頭,走出房間。
璽克有隱約察覺,利諾離開對吉諾來說有好處。這裡就只有他們兩個女兒可以當繼承人,利諾退出,所有家產就都是吉諾的了。她惟一一個還不如利諾的地方,就是要找一個好老公,而璽克並不認為這對吉諾來說很困難。雖然這件事對吉諾有利,但優蘭夫人說是「趕出去」未免太誇張了。吉諾不過是幫助利諾完成利諾的心願罷了。跟著瓦魯離開這裡,對利諾絕對有好處。璽克對雙贏的局面向來沒什麼意見。
「喔──沒有我的照顧,她會一直病弱下去,沒有我,在這樣的風雪中──」優蘭夫人不斷哀嘆著。
璽克皺起眉頭。別的男人不知道,瓦魯是絕對不可能讓利諾餐風露宿的。
「為什麼她會中這樣的計謀,跟著男人離開我?非要男人不可嗎?我該怎麼做才能救她回來?」優蘭夫人竟然哽咽起來了。
璽克真的很想告訴她,離開對利諾來說才是好的,但他知道自己還是閉嘴比較好。
藥弄好了。璽克把藥丸包在紙裡交給女僕:「每兩小時配白開水吃一顆。費用要──」
「謝謝你。」女僕露出可以用來製作面具的標準笑容說。
「費用──」
「謝謝你。」
「材料費──」璽克再試一次,配藥的人工和他長期努力累積的學識不收錢,至少材料成本給他吧。
女僕露出無敵笑容說:「非常感謝您對夫人的關心,有您如此熱心的幫忙,夫人一定會好起來的。」
璽克心裡閃過無數髒話,他坐到床旁邊的椅子上,握起優蘭夫人的手說:「夫人,請您千萬要保重玉體。」
「謝謝你的關心,可惜我沒有力氣坐起來答謝你。」優蘭夫人有氣無力的回答。從璽克進來之後,她就顯得越來越虛弱,現在更是顯得快要死了一樣。璽克很清楚她的病況離死還遠得很。
「您是大家的太陽,在這樣冰冷的天氣裡,只有您能溫暖大家的心。沒有您,大家都覺得家裡變陰暗了,彷彿墓穴一樣。啊,我這樣說會不會使您難過,我絕對不希望讓您有更重的負擔了,但我們都期待您能早日恢復健康。即使是在病中的您,給我的笑容也這麼的美麗,如果能夠看到健康的您,那一定會成為讓我的生命擁有光彩的記憶。」璽克用上他全部的演技,露出他所能辦到最誠摯的目光,努力把優蘭夫人想像成以前他在寒冷的夜裡露宿街頭時,允許他一起躲在橋下,還跟他靠在一起取暖的大恩狗。
「你真是太貼心了。真是個好孩子。」優蘭夫人喚來一個女僕:「把我的胸針拿來。」女僕拿來的那個胸針是銀製臺座,上面鑲著七顆綠豆大的寶石。她把胸針塞到璽克手中說:「這個給你。當你看著它的時候,請當成我在你身邊,別為我不能親自現身而憂傷。」
「真是太感謝您了,夫人。」璽克親了一下胸針,把它珍而重之的放進靠近心臟的口袋裡:「每當我看到它,我沉沒在黑暗裡的心就能得到安慰。現在請您容許我告退。我的職責箝制著我,使我不能永久的留在這裡。」
「希望你不會因此心碎。」優蘭夫人說。
璽克很想說「絕對不會」,但他說出來的是:「一定會的,但這是我必須承受的傷痛。再會了,夫人。希望下次能夠在陽光下看到您的笑容。」
然後璽克三步一回頭的走出房間,關門。吉諾出去以後一直站在房門邊,她現在皺著眉頭對璽克說:「辛苦你了。」
「是啊。」璽克也沒反駁。
「這個給你當醫藥費,她沒給錢吧?」吉諾塞了一枚金幣給璽克,璽克當然是收下不找零。
看璽克的表情怪怪的,吉諾問:「夠嗎?不夠我再補給你。」
「夠,很夠了!」璽克把金幣塞進包包裡,忙著點頭。他總不能說他用別的方法已經討到醫藥費了。
「那好,沒你的事了。」吉諾點點頭,然後又開門進了優蘭夫人的房間。
璽克立刻聽到優蘭夫人的尖叫聲穿透門板,傳了出來:「妳逼走了我的心肝兒,妳還想對我做什麼?妳怎麼能阻止我去見我的小妖精?妳竟敢隱藏她的下落,妳是不是把她拘禁在哪裡虐待她?」
這不關璽克的事。璽克把胸針拿出來,仔細觀看確定是真品,再收好,然後下樓。
盡心盡力的配藥結果虧本,說幾句好聽的話就賺到了這東西。璽克開始有點明白,為何有些人會拋棄累積肚裡墨水的枯燥工作,跑去累積前科了。




