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3.とっとと出て行け!

 ジコクはハナの雑務を続け、夕食の時間まで働いた。


 食事の前には少し余裕があり、風呂に入る時間がある。ジコクは従業員用の浴室に向かい、一身の不運を洗い流したい。


 みすぼらしい寮を見た後、彼はこんな天気でも屋根のない場所で体を洗わなければならないと思っていたが、浴室は予想以上に良い。


 基本的な設備は揃っており、清潔で、個室もある。(浴槽はないが、この国の人々は浴槽が浴室の基本設備であるとは思っていない)


 たぶん、ハナに雇われていない人も使用しているからだろう。ハナの善政などでは決してない。


 ジコクが服を脱いでいると、別の男が入ってきた。


 その男は絹のような髪をしている。すでに退勤しているのに、髪型は依然として整然としていて、真面目で几帳面な印象を与えた。


 彼は給仕服を着ており、鮮やかに服を脱ぐと、引き締まった、しかし誇張しすぎない筋肉が現れた。


 その男は歩く姿が優雅で、視線もむやみに彷徨わず、ジコクを一瞥もせずに個室に入った。古代の勇士のような雰囲気だ。


 こんな健康な体なら、その血で召喚法陣を書けば、かなり強力な妖魔を呼び出せるだろう、たとえば――ここまで考えて、ジコクは慌てて自分を制した。


 私はもう邪悪な魔法師じゃないんだ。そんな目で人を見てはいけない!


 ジコクは鏡に映る自分を見た。頭の上の枯れ草の茂みはいつも乱れて跳ねている。肋骨がはっきりと浮き上がり、手足は長くて細く、鳥の爪のようで、体のバランスがどう見ても奇妙だ。


 まるで通俗な物語に出てくる、山洞に隠れて村人に呪いをかけながら不気味に笑う悪役魔法師そのものの姿だ。


 彼はため息をつき、個室に入り、ボトルからシャンプーをたっぷり絞り出し、油がこびりついたような黒髪を必死にこすった。


 どんなにこすっても泡が立たないとき、隣の個室からあの男の声が聞こえてきた。「君はハナの新任の助手ですか?」


 どうやら彼はさっきジコクを見かけたらしい。


 なんとなく、ジコクはその声にわずかな敵意を感じた。「えっと、そうです」


「お名前は? 仕事は何ですか?」男が尋ねた。


「ジコク・サイグです。君は?」


 ジコクは抵抗せずに名前を答えたが、名前を尋ね返すという行動は、あまりにも従順とは言えなかった。


 彼はこの男が一方的に問い詰めてきているとわかったが、ジコクという人間は、問い詰められれば必ず言い返す性分だ。


 相手はしばらく沈黙した後、ついに答えた。「ワールです」


 その口調から、彼はジコクが名前を知れば呪いをかけられるのではないかと心配しているようだったが、答えなかったら礼を失すると思ったのだろう。


 この男は他人に無礼を働くような人間ではない。


「よろしく、ワール」ジコクは言った。「今日の仕事は床を掃いて、田鶏を切りました。それだけです」


 この国では、同世代や同僚を「君」という二人称またはファーストネームで呼ぶのは一般的だ。だからジコクとワールもそうしていた。


 ところで、「田鶏」は「カエル」の俗称である。カエルはいつも水田に住みついていて、さらにこの国では食用にもされているため、そう呼ばれているのだ。


「彼女の指図で人を呪ったり、人骨で犠牲を捧げたり、変な儀式を行っているのではありませんか?」


 ワールが言ったことは、ハナがジコクに堂々とやれと言ったことと似ている。


「ハナはそんな事をしているんですか?」ジコクが尋ねた。


「知りません。でも、彼女はそんな人間みたいだ! これは警告だよ、お嬢さんに近づくな! それに、彼女の手先パくんも──」


「彼は死んでいます」ジコクが言った。


「あいつが死んでないときなんてあるか? いつもお嬢さんのそばでうろついてて、何やってるか神のみぞ知る――」


「彼を外に引きずり出すのを手伝ってくれませんか?」ジコクは一縷の望みを抱いてワールに尋ねた。


「お前ら、とっとと出て行け! お前ら魔法師はろくなもんじゃない!」


 ジコクはワールが個室のドアを開けて出て行く音を聞いた。


 泡を洗い流し、ジコクが個室から出たとき、ワールはもうどこかへ行ってしまっていた。

このエピソードの原文:


 璽克持續為哈娜打雜,撐到晚餐時間。吃飯前還有點時間可以洗澡。璽克前往員工浴室想把一身晦氣都洗掉。本來在見識過悲涼的宿舍之後,他以為浴室可能也要在這種天氣下露天洗澡,結果浴室比他預料的好多了。基本該有的配備都有,也很乾淨,還有個人獨立隔間可以用。大概是因為這間屋子裡其他不歸哈娜管的下僕也要使用的關係,絕對不是哈娜的德政。


 在璽克脫衣服的時候,有另一個男人進來了。那個男人有一頭柔順的頭髮,雖然已經下班了,但是髮型依然整整齊齊,看起來既正經又仔細。他穿著一身侍者服,俐落的脫下衣服之後,露出一身線條分明卻又不會過於誇張的肌肉。這個人走路姿態優雅,目光也不會亂飄,看都沒看璽克一眼,就進了隔間。很有古代勇士的感覺。


 璽克心想:這麼健康的身體,用他的血寫召喚法陣,應該可以召喚出相當優秀的妖魔,比方說──想到這裡,璽克趕緊制止自己。他已經不當邪惡法師了,不能再用這種眼光看人!


 璽克看了一下鏡子裡的自己,他頭上那叢敗草不管怎麼洗總是會亂翹。胸前兩排肋骨明顯,手腳又長又細,像鳥爪一樣,跟身體的比例怎麼看怎麼怪。跟通俗故事裡常見的,躲在山洞裡賊笑著對村民下咒的壞蛋法師,形象完全符合。


 他嘆了口氣,進到隔間裡,從瓶子裡擠出一堆洗髮精,努力搓洗他那好像永遠都卡著油的黑髮。


 在他怎麼搓都搓不出泡泡的時候,他聽到隔壁傳來那名男子的聲音:「你是哈娜新找來的助手?」


 原來他還是有看到璽克的。璽克總覺得他的說話聲中帶點敵意。璽克回答:「嗯,是。」


 「你叫什麼名字?都做些什麼事?」男子問。


 「璽克.崔格。」璽克老實報上名字,但不太老實的跟著問:「你呢?」他知道這個男子是在單方面的逼問他,但他就偏偏不會乖乖的給人問。


 對方沉默了一陣子,最後選擇回答:「瓦魯。」從語氣判斷,他可能有點擔心璽克知道他名字就能對他下咒,但是不回答又很沒禮貌。這人不是會對人失禮的人。


 「瓦魯你好。」璽克說:「我今天幫她掃地、切田雞,就這樣。」


 「你不是幫忙她對人下咒、拿人骨獻祭,做各種奇怪的儀式?」


 這聽起來好像是哈娜叫璽克正大光明做的那些事情。


 「原來哈娜都在做這種事嗎?」璽克問。


 「我不知道,但是她看起來就像是那種人!我警告你,不准靠近小姐,還有她手下的小叭──」


 「他死了。」璽克說。


 「他哪時候不是死的?他老是在小姐旁邊打轉,天知道在做些什麼──」


 「你可以幫我把他拖出去嗎?」璽克懷抱著一絲希望問瓦魯。


 「你們早該滾出去了!你們這些法師都不是好東西!」


 說完,璽克就聽到瓦魯打開隔間門,離開的聲音。等璽克把泡泡沖掉,走出來的時候,瓦魯已經走遠了。

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