9話 魔法評議戦
「これより魔法評議戦1年の部を開催致します」
「午前の初めにAクラス、Dクラス、Eクラスを執り行い、午後はCくらい、Bクラスの順番で行います」
アナウンスが流れる格技場
1年といえどAクラス……どんな魔法使いがいるのか
「フィーラス……なんでそんな楽しそうなんだよ」
「まぁどんな立ち回りをするか興味があってな」
「いくら辺境の王立学校でも興は冷めないよ」
「そうじゃねぇって!」
「緊張で心臓がはち切れそうなんだよ俺は」
心臓がはち切れそうなベルターを介抱しながら眼下に始まる魔法評議戦を見る
初めに出てきたのは……あの子は入学の時隣にいた凄い子じゃないか
「1人目は今期最高値を記録したアルバス・アルフレッドです」
白髪がなびく赤眼
風貌は宮廷魔導士と遜色の無い程に悠然としている
あの子も10から15歳のいくつかなのだろう……にしては風格があるな
「Aクラスは上級魔獣ハルトダフトです」
鳥型魔獣ハルトダフトか……
飛行能力に加え鋼鉄の羽から放たれる斬撃は喰らえば最期、まぁ恐らく羽は薬で軟化しているだろうが
新人魔導士でも手こずる魔獣……中々に攻めた学校だなここは
「ではこれより魔法評議戦……開始!!」
格技場に響く鐘の轟音と共に壁に下がった鉄格子が上がる
その影から出る鋭利な爪、嘴、鋼色の羽
「ギャォオオオオ!!!!」
獰猛な魔獣ハルトダフトが姿を現す
走り出す魔獣……飛行なしでもこいつは速い
さてどう出るAクラスのアルバス
「ふざけやがって……こんな雑魚がAクラス」
「入る学校間違えたな」
「雷槍」
格技場が光に包まれる
それは一瞬の出来事だった、アルバスが人差し指を魔獣ハルトダフトに向けた瞬間指先に雷がほとばしり
閃光が辺りを包む
ハルトダフトが雷と共に弾け飛び後ろの壁に大きなへこみが陥没する
その跡に恐らく魔獣の死骸である黒い焦げた何かがへばりつきその隣を悠然とアルバスは立ち去る
「おぉぉおおおお!!!」
格技場からは鳴り止まない歓声
正直見くびっていた、辺境の王立学校など程度が知れると思っていたが……これは将来魔聖グロリアスにも並ぶ素質を見たかもしれん
その後Aクラス全6名が魔獣ハルトダフトを討伐
アルバスほどでは無いがそれぞれ良い魔法を使う
次にCクラス全14名
棄権者は5名、他9名は討伐
「さぁEクラス、控え室に移動するよ」
控え室は異様な緊張感に包まれていた
Eクラス開始まであと10分
「ベルター、君ならできるよ」
「書館で策を考えたじゃないか、それを信じて前に進んでくれ」
「フィーラス……お前……なんでそんな良い奴なんだよ」
「おれは……もう人の心配なんてしてる暇ねぇよ、自分のことばかり頭に浮かぶ」
「お前の事なんて気に出来ねぇ……だからお前もお前の事だけ考えてくれ」
「というかもう……逃げたいくらいだ」
「あんた……弱音吐かないでよ!!」
叫ぶようにベルターを叱責するメイア
自らを抱く腕は相当に震えている
「不安なのはあんただけじゃないの!!」
「皆それぞれの気持ちを持ってここにいるの、除席なんてしたくない、魔獣と戦うのだって怖い、逃げたい……」
「でも食いしばってここまで来たのよ!!」
「これ以上弱音を吐くならあんただけ辞退しなさいよ!!ベルター!!」
「……ご、ごめんなさい」
この子達はそれぞれの不安と戦っている
ここで60歳の姿の俺ならかけられる言葉がある……だが今は子どもの姿、言う言葉は全て不快に思うのだろう
ならば、この世界を生きた先人として出来るのは1つ
「Eクラス最初、ミチェ……」
「アリアラ先生、最初は俺に行かせてください」
「フィーラス……でも順番がな」
「まぁミチェルが良ければいいんだが」
「いいですよ先生、私もフィーラスの戦いを見たいので」
「ではフィーラス、格技場へ行ってくれ」
俺がこの子達に示せること
それはEクラスの魔力でも魔獣を打倒できるという実績
昔からそうだったろ、この世界で唯一信頼出来るのは実績だと
「Eクラス1人目はフィーラスです!!」
「対する魔獣は中級魔獣ガイガイア、では魔法評議戦……開始!!」