3話 魔法学校へ入学
辺境の街ーガラパー
一本の河川が通るレンガ造りの街、辺境と言ってもアルタイル王国の要所を構える街で田舎町と比べると栄えている街、以前妻アイラと旅行で来た事あるが長閑の一言
ベイネーラ令嬢から逃げるように馬車を降りる
「さて……宿に泊まるか」
初日は学生寮で泊まり2日目はグロリアスが選んでくれた杖店で杖を買って呉服屋で制服を買う
3日目に入学式を迎える段取りとなっている
ひとまずハルバード魔法学校を見てみるか
「まぁ……普通か」
王立と聞いて王都で見ていた魔法学校を予想していたがコの字型の校舎、横にある円形の格技場
大きすぎず小さすぎずの学校…そういえば最後に学校に行ったのは息子の授業を見に行ったきりか
あの時は大騒ぎになって後で怒られたな
「あんた……フィーラスね、家名は無しか」
「剣聖と同じ名前なんて勇気あるねあんたの親御さん」
ハルバード魔法学校から徒歩10分にある学生寮の受付
子供になったのだから背が低いのは当たり前だが受付台が肩の位置にあるのは少し違和感
その上から覗くように見るお姉さんに書類を提出する
「ここから左は男、右は女の学生寮だよ」
「右に行ったら退去だから忘れるんじゃないよ」
鍵をもらい自室へ行く
何もない1人部屋、そういえば騎士団に入団した時もこんな部屋から始まった
とりあえず整理するか
壁にある空虚な本棚に本を詰め、精豆機を置きたら豆をひく
……
剣を振るか
学生寮の裏手
人気の無い庭で剣を振る
俺は剣を望んで振ってはいない…だが過去50年近く日常化した剣を振ると言う行動をやらずにはいられない
例えるなら眠るために目を閉じるように必要な生活の一部へと昇華している
剣を振った後の余韻
研鑽を積み無駄を極限に省いた剣戟
音さえ置き去る太刀筋は子供になろうと衰えていない
だが体格にはまだ慣れていない…これでは魔王は愚か幹部の魔人にも……いけないいけない
俺は魔法を学びに来たのだ、剣は精神統一でやるだけ
「すごい剣術だね、少年」
敵意の無い接近に気づかなかった
後ろには赤髪の少女……あの制服はハルバード魔法学校の生徒か
魔法使いの生徒なのに腰に剣を携えている
「お褒めに預かり感謝します」
「はっはっは」
「そんなかしこまらなくていいよ、私はレネア・イースト……ここにいるって事は君もハルバード魔法学校の生徒なんだよね?」
自己紹介と今期入学する事を説明
名前を聞いてレネアは目を見開く、グロリアスは偽名を使うよう言っていたが名前は偽りたくない
一言剣聖とは無関係と釈明
「そっか、でもすごい剣術だったよ」
「私ね魔法を学べって言われてたんだけど騎士なりたいからここで素振りしてるんだ」
それはまた殊勝な事だな
剣術を学びたいと1人で修練をしているのか…向上心ある若者は嫌いではない
そんな若者の場を邪魔しては悪いと思い立ち去ろうとすると呼び止められる
「ねぇ……もし、フィーラスが良ければさ」
「放課後の時間、私の剣術の相手をして欲しいの…」
「1人じゃどうしても限界があるし同級生はみんな魔法ばっかだし……だめ?」
「もちろん断る理由は無い」
未来ある若者が修練をしたいと言うなら断る理由はない
それにレネアの真剣な眼差しを見れば尚のこと
「本当にいいの!?」
「あぁ」
「じゃ……じゃあ、よろしくお願いします!」
その後レネアと剣の打ち合いをした
剣術はまだ拙い部分はあるが筋はいい、何より柔軟性に光る物を感じる
だが魔人はおろか魔獣の相手もできないだろうな
「だはぁ……フィーラス、相当強いね」
「レネアく……先輩も太刀筋は良い、次はもっと2撃目に注意すると良くなるぞ」
「………師匠!!」
「これからは師匠と呼ばせてください!なんかフィーラスなんて呼べないよ」
「どう?いい?呼んでいい??」
「まぁ……好きにしてくれ」
学年がちがければ学校内で会うこともないだろう
放課後の中なら師匠と呼ばれてもいいか
「じゃあ2日後に会える事を楽しみにしてるよ師匠!」
そう言い残しレネアは学生寮に戻る、俺も今日は寝るか
次の日俺は呉服店で1ヶ月前に注文していた制服を受け取りグロリアス行きつけの杖店で杖を買った
いよいよ明日は入学式、新たな門出
否が応でも期待が高まる
「今期入学する50名が栄光あるアルタイル王国の魔導士となるよう願っておる!」
格技場に登壇するハルバード魔法学校の校長
なんか王城で見た事があるような気がするが…覚えはない
それから新入生を迎える先生が登壇した後、在校生代表がいた
「在校生代表レネア・イースト」
まさかの昨日あった少女だった
なんでもこの学校で行われる魔道決戦という大会の前期優勝者
てことは……あの子、魔法上手なのかな、今度魔法を見てもらうか