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20話  犯罪拠点へ侵入②

「くそ……広い拠点だな」


犯罪組織「スレッドアクト」の拠点に侵入し10分

同じ所をぐるぐると回っているラーズ騎士

本棚の下から不自然な風が吹いているのだが……気付かないか

ならば石を当てて知らせるか、階段を知れば増援を呼ぶだろう


「おっ!!」

「本棚から音が……なんと、隠し階段があったのか」


床に耳を当て地下階層を探る

ここは地下3階まで広がる拠点か、ベルター達は恐らく地下2階にいる

その部屋から40から50の重さの人間が座る音がする


「こちらラーズ、犯罪拠点の深部に入ります」


こやつ……まさか単騎で突入するつもりなのか

先程のわかりやすい罠も見破れなかった力量で……その勇気はどこから出てくるのだ

確実に死ぬ、万が一にも敵勢を打倒するとは思えない

床に消えていくラーズ騎士、ついていくか


剣を抜く姿はまさに騎士、だが突入作戦はお粗末なもの

敵拠点への単騎突入など支団長にも任せない重役、俺自身も騎士団団長になって数回経験した程度

もちろん人質の安否も大事だが感情が先行すると被害が広がってしまう

俺が騎士学校で教鞭をとった時に必ず言う言葉「感情で人は救えない」

少なくともラーズ騎士は俺の授業を受けていない模様


「地下空間が広がっております…これより戦闘に移るので通信はここまで」


低腰で進む地下通路

足音を立てずに移動するのは良い事なのだが……中央を歩いたら意味がない

壁に体を預けないとただ的になるだけだぞラーズ騎士


目の前にはT字の通路

何が決め手かは知らないが迷わず右を進むラーズ騎士

そっちは敵がカードで遊んでいるぞ


「ここから音がする……子供達、今助けに行くぞ」


木の扉に手をかけるラーズ騎士

漏れ出る音は図太い男声、どう考えても誘拐した子を閉じ込める部屋ではない

誘拐した子供の部屋は一番見つかってはいけない部屋、そんな部屋で呑気に大声を出す輩などいない

子供でもわかると思うのだが、騎士は勇敢に扉を開ける


「騎士団だ!子供達を解放しろ!!」


ラーズ騎士越しに見える部屋内

円卓を囲みカードで遊ぶ男が4人こちらを向く、それ以外は酒のみ


「あぁ?騎士だと?」


「1人って……バカなのかコイツよ!!」


「だっはっは!!」


「バカだ……バカがいるぞ!!」


一斉に笑い始める犯罪者4人

数の不利、力の劣勢、ラーズ騎士が勝てる要素が一つも無い

剣を構えるラーズ騎士だが腰が引けている


「ほら来いよ騎士様」


机にかけていた斧や盾を手にする犯罪者達

何なのだこの状況は、Eクラスの魔法評議戦の方が緊張感があったぞ

ラーズ騎士の用心の無さも呆れるが敵側も相手が格下とはいえ拠点に侵入者がいるのならその壁にかかっている通信機で下に報告をした方がいい

全てにおいて稚拙……ここまで戦闘水準が落ちたのか


「誘拐した子供達はどこだ!」

「お前らが事件に関与している事はわかっている、大人しく投降しろ!!」


「状況わかってんのかお前……投降とか言ってないで」

「自分の身を案じろよ騎士様!!」


斧を振りかぶる犯罪者達

4方向からの攻撃だと言うのに剣で受けようとするラーズ騎士

もうこれ以上は見ていられない


「死ねぇ!!」


「こんな所で死んでたまるかぁ!!!」


「だはぁ!!」

「がは!!」

「どぅは!!」


「……は?」


突如として倒れる悪党


居合の斬撃

昔に剣術の師匠から享受された最速の剣戟

本来であれば首を飛ばすのだが証人は多い方がいいので峰打ちで気絶

3人が倒れ残された1人は右腕足を粉砕した


「お…お前……何をした!!」


「え…いや」


互いに状況を読めていない様子

小さくなった腕では少し速度が落ちるな、もう少し振る速さを鍛えなければ

………

少し状況が動いた、地下2階に足音が聞こえる

誰かが脱出を先導している……地下で見張り番を襲った火魔法が聞こえた

新しく誘拐されたベルターの中で火魔法を使うのはミチェルか


頼もしいがここは大人しくして欲しかった所

敵の頭目が動いてしまう、早くラーズ騎士を地下に誘導せねば


「お前……何をしたんだ!!」


「僕も知りませんよ!!」


「僕も知らないって、お前が知らないとおかしいだろ!!」

「俺らを…ふがっ!!!」


顎に横一線の居合斬り

いつまでやっているんだ君たちは

最早援護など悠長な事を言っている場合ではない、このラーズ騎士が敵を制圧した事にし俺の存在を消す作戦で行こう


「これは……指示書?」

「地下2階に子供達を閉じ込めた!?」


黒ローブにしまっておいたメモ帳を使いラーズ騎士を誘導

こんな証拠が出てくる時点で大概は気付きそうだがこの子なら気づくまい

強引にミチェル達に合わせ、敵頭目がきたらラーズを立たせ俺が叩く

これでいい


「待っていろ子供達、僕が助けに行ってやる」


走り出すラーズ騎士

地下へと続く階段はそっちではない

仕方がない、さらに強行策を取るしかないか


「待っていろ子供た……おわぁ!!」

「落石…危なかった」


間違った通路を走った瞬間に天井を剣で壊す、これで進路を限定する

敵は俺が倒す、手柄は君に譲る、行くのだラーズ、君はただ走るだけでいい


その後4回程天井を壊し後数回で地下通路が陥没する所であったがラーズ騎士は階段を発見

ミチェル達は誰かに追われている様子、その通路を右に曲がればミチェル達と鉢合わせ

敵は4人、初めに子供達の前にラーズ騎士を立たせて……


「待っていてくれ子供達!!」


「おい!……」


思わず声を出してしまった

ラーズ騎士は正面通路を走り去っていった

右に迫り来る気配があるのにも関わらず、それに声も聞こえる


「囲まれた!!」


右を向くと子供達の前に立つミチェルとメイアがいた

囲まれた……そうか俺は黒服に身を包んでいるから敵と認識されたか

だが見えているのは全身の黒い服と背中に背負う剣のみ、正体はわかるはずもない

声も変わっているので身元はバレない


「罠魔法を仕掛けたのはどのガキだぁ……ぶっ殺してやる!!」


向こうの通路から来る悪党


「きゃぁああ!!!」


最後尾の子供の腕を掴む悪党


「その手を離せ、私が魔法を使ったんだ」

「何かするなら私にしろよ……クソ野郎」


子供達の前に出るミチェルとメイア

ラーズ騎士は上手い事やるとするか、今は子供達を守る

ミチェルと犯罪者の距離は1m


「そうかお前か、少し痛めつけてやるよ」

「この毒石で作られた剣でな」


「ミチェル!!下がって!!!」


咄嗟にミチェルの前へ飛び出るメイア

たがメイアの手を引き再びミチェルが悪党の前に


「お前が下がってろメイア、大丈夫だ」

「痛みならもう慣れてる」


「舐めた真似しやがって」

「このクソガキがぁああ!!!」


………


「子供相手にやめないか、若者よ」


剣とミチェルの間に入り魔剣を弾く

咄嗟に出張ってしまった……どう言い訳をしようか


「てめぇは誰だ」


「俺は、とある騎士の使い魔だ」

「貴様など使い魔で十分、早々に消え失せろ」


使い魔という設定は咄嗟にしては上出来

数日前に部屋で見た魔聖まほうせいグロリアスの鳥使い魔からの引用

正直こんな使い魔を使役している騎士などいるはずもないが


「使い魔……舐めてんじゃねぇ!!」


疑う余地もなく魔剣を振りかざす犯罪者

悪人に言う言葉では無いはないがもう少し人を疑った方がいい


「死にやがれ!!」


剣筋は悪くないが当てることに注視しすぎだ

魔剣を手にすると二つの人間が生まれる、魔剣の強大な力に溺れ鍛錬を怠る者、魔剣を使いこなすために精進を重ねる者、この悪人は前者

目を瞑っていても避けるのは容易い

それに小さい体、上下左右の幅を使い避ければ当たるはずもない


「少し落ち着きたまえ」

「犯罪者」


「ふがっ……」


魔剣を避ける勢いで峰打ち

まだ敵が残っている場合は殺すより痛めつけるが有効

悲鳴の一つで加勢に来る可能性を上げる


「おいおい、大事な魔剣を簡単に落とすでない」

「毒の魔剣はさぞ高かったのだろう?」


「ひ……ひぃぃぃいいい!!!」


腰を抜かす犯罪者に武器を差し出すが受け取って貰えない様子

であれば頂こう毒の魔石は貴重だからな


「子供達を離せ犯罪者共・・・・!!」


犯罪者共?


「アルタイル騎士団ガラパ所属ラーズ・リスロラ」

「法の裁きを貴様らに与える」


目の前には我々2人に剣を向けるラーズ騎士

状況が時間を追うごとに悪化する

早くガラパ騎士の増援が来て欲しいものだ


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