ある醜い村娘の手紙
親愛なるアル へ
元気でやっていますか?
私は元気です。
あなたが王都に戻ってからも、いつも通りやってるわ。
村の人達は相変わらず醜い私を避けているけど、あなたの正体がわかってからは王子の知り合いだって変に絡んでくる人もいるの。
現金なものよね。
ああ、愚痴を聞かせてしまってごめんなさい。
やっぱり私ってひねくれ者なのよね。
…あなたは、私のことを心の綺麗な人だと言ってくれたけど。
心が綺麗なのはあなたの方だったわ。
私のこの醜い姿に、顔を背けなかったのはあなただけだった。
そうね。
初めて出会った時はあなたの方がひどい姿をしてた。
全身毛むくじゃらの服を着た豚みたいな汚れた姿で、人間達に追われて村外れの私の家の納屋に隠れていたあなたを見つけたのが、私たちの出会いだったわね。
私はあなたを匿ってあげることにした。
あなたは私にすごく感謝してくれて、一緒にいてくれた。
それはそうよね。あなたには他に行く所なんてなかったんだもの。
それでも、あなたは一度も私の顔を蔑まなかった。
私と普通に話して、一緒にご飯を食べてくれた。
あなたといる時だけは、私は自分の顔を忘れていられたわ。
ずっとあのままだったらよかったのに。
そう。
あなたがはじめて私を好きだと言ってくれてキスした瞬間、魔法が解けるまでは。
ねえ知ってる?
本当は私、あなたの呪いが解けたことを全然喜んであげられなかったの。
あなたは私のことを、容姿で人を判断しない心の美しい人だなんて言ったけど、あなたを助けたのはそんな綺麗な気持ちじゃなかった。
あなたを助けたのは、呪いにかかったあなたが私よりも醜かったから。
あなたを見下していたからよ。
そんな自分の本心に気づいて、私は心まで醜い女なんだってわかったの。
なのに、あなたは本当は美しい王子様で、心まで綺麗だった。
元の姿に戻っても、こんな私を妃に迎えると言ってくれるなんて。
こんなことを言っても、あなたは心も美しい人だから、きっと気にしないと言ってくれるでしょう。
でも、私は美しいあなたの側にいることには耐えられない。
どうか探さないで。
ごめんなさい。
さようならアルフレート王子。
醜い村娘 より