新シリーズはじめます
更新遅め予定ですが、よろしくおねがいします
男は女の胸を突いた。寝静まる夜に闇夜を照らす満月、羽をばたつかせ飛び立っていく鳥たち、夜風に吹かれ葉音を鳴らす木々、鮮やかな赤色がよく映えたカーペット。
魔女は、死んだ。
男は、床に臥せ動かなくなった女を見つめ、ゆっくりと口角をあげる。胸の底から湧き出してくる高揚感を、男は抑えきれなかった。欲望のままに、声高らかに笑う。
「これで、これで、忌まわしき魔女はいなくなった……ははっ! 呪いをかけた魔女もこんな弱っちいのか!」
細い体から発せられた声を、森中に轟かす。体を反らせ、息を吸い、手の先足の先まで酸素を循環させる。吸った空気が運んできた冷たさと、肌を刺すような風の寒さが、これは現実なんだと男に実感させる。極寒の中、男の体温は熱で上昇し、耳は赤色に染まっていた。心臓は徐々に音を打つ速度を緩め、体からは力が抜けていく。強張っていた筋肉が、弛緩する。自分の身が寒さに包まれていることを忘れてしまうほど、男は達成感と高ぶる興奮に支配されていた。
この日は雲もなく、空に浮かんだ月がよく見えた。月明かりは、男にとって、これから輝かしい未来を進むだろう自分への祝福のようだった。
目的を果たした男は、赤い液体の入った瓶を持ち、颯爽と自分の住処へ戻る。深夜は、葉が風で揺らいでいて、カラスの鳴き声がよく響いていた。