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3話

「私」さんの家がなくなり退職するまでのあれそれ。

田中のストーカーっぽさが出せたなら幸い。

 監禁生活も続き、だんだん状況に適応してきたころ。私はようやく真理の一つに辿り着いた。田中は心底女の趣味が悪いと思っていたのだが。そもそも、そもそもだ。


──趣味のいいやつはそもそも人を監禁しない。


 性癖からしてとんでも無さそうなので、女の趣味が最悪でもそう言う人間なのだろう。自分が巻き込まれて居なかったら人の趣味に口出すような無粋なことは言いたくは無いが、滅茶苦茶被害を被ってるので趣味が最悪だと舌打ちしても許される。世界が許さんでも私が許す。


 ほうじ茶を淹れて、田中が持って帰ってきた最中を咀嚼する。栗が入って居たのでちょっとテンションが上がった。パッケージを見る限り、家のそばにあるちょっといいところの和菓子屋のそれだ。そこのスタンプカードなら財布に入ってるので買ったなら渡せば貯めれたのにな……と一瞬考えてしまった後でいやなんかおかしい、とは思ったのだが。せっせと貯めていたので、つい恨めしく思ってしまう。多分この最中分で絶対貯まったと思うと仕方ないところがあると思う。


「大家さんからいただいたんだよ。元気になったらまた会いにきてくれると嬉しいって」


スタンプカードへ想いを馳せて居たので、若干田中の発言を聞き逃してしまったのが、耳に入ってきた単語に顔をあげる。ん?大家さん?


ワンモアと説明を求めれば、特に迷惑そうでもなくまた話し始める。私の家の契約を解約しに行った経緯の説明に、とうとう家もなくなった現実を知る。ブラック企業勤務で疲れ果てたので療養のため田中と暮らすことにしたみたいな説明をしたらしい。突然辞めたので会社の人が訪ねてきたらしいのだが、その態度が大変気に食わなかったらしい大家としては、ブラック企業が嫌になって辞めたというのも信憑性があったらしい。私の知らない間に世界が田中の都合のいいように辻褄を合わせて伏線を回収していくのやめてほしい。


 最近帰り遅かったものね、大変な中お疲れ様、綺麗に部屋を使ってくれて嬉しかったわ。


 契約の時とたまに掃除に来ているときにする挨拶ぐらいでしか、交流のなかった大家さんの優しさに触れてホロリとすると共に、マジかよこんな説明で解約とかできるもんなんだ。印鑑とかその辺全部家にあるんだしやろうと思えばできるのか、とかそんな色々な思考が脳内を駆け巡った。

 余談ではあるが会社の退職は退職届を内容証明郵送で終わって居た。退職代行システムとかあるので印鑑とか諸々あると書類一つで退職できちゃうのをこんな状況で初めて知った。勉強にはなったが、この知識を活かせる日が来るかは謎だ。


 そもそも家から出してもらえないのに挨拶に行けるのか、とか色々言いたいことはあるのだが、大家さん的には田中が私のどういう存在に映ったのか怖い。恋人とかに思われてたらマジで心外だ。


 部屋にある私物は一部家電とかは処分し、大きめの家具とかは一旦トランクルームにしまっているらしい。今の部屋にあるものと入れ替えたいものがあったら教えてね、と現状の家具に特に不自由はしていないので、若干答えに困った。それより服や本棚の中身とかは持って帰ってきたと言う発言の方が気になる。もう下着とか見られるより、私のコレクションが田中に見られたと言う事実の方がまあまあな羞恥プレーである。グッズを集めるタイプではない為推しの抱き枕などを運ばれる悲劇は回避したが、全然薄い本は見られている。どんな顔して箱に詰めてんだと苦い顔をした。よく考えたら田中は私のフォロワーだったらしいので、私の性癖あたりはすでに知られている。いや知られていることと本棚の中身を全て見られるのはまた別じゃん!全裸見られるより嫌では!?!?全裸見られるのも嫌だけど!


 キィー!と頭に血が昇ったが、手元に無事にコレクションが戻ってきたことは喜ばしいので、部屋に置いておくねという田中の発言に曖昧に相槌を打った。見たのか……私の秘蔵コレクションの数々を……。それでも愛想を尽かさないあたり、ここ最近で一番こいつ趣味最悪だなと言う気持ちとマジで私のことが好きなのでは?という気持ちとが混ざり合い、一旦考えるのを辞めることにした。


 あ、最中別の味も入ってる。桜餡だやったー!


 三個目の最中に口の中の水分を奪われながら、全力で現実逃避をするのであった。その世界で一番愛おしいものを見る目を止めるんだ田中!!

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