噛み付いて 食いちぎって それでもそれをなでてあげたい
久しぶりにちょっとだけ長いの投下。
基本自分語りが大半。
人は生涯に自分を引き換えにしても憎らしいやつを殺したいと思うことが何度あるのだろう。
私にはある。
私の心身を脅かした奴がどうしても心の底から許せない。
今となってはどうでもいいことが大半になったけれど、それでも許せないやつはいる。
8年近く執拗に私をいじめ続け、一度精神崩壊に追い込みかけた醜悪な顔をした虎。
善良な皮をかぶって気を許したところに肉欲目当てで半ば騙すように私に襲いかかってきたうさぎの皮をかぶった狼。
どちらも悪に違いないが、後半の狼の方がもっと深刻だろう。
滅多に気を許すことの無い私の懐の奥深くまで潜り込むくらいなのである。
おかげで私はどこか狼を疑いながらも洗脳されたかのように盲目的になっていた。
今となっては過去の私を殴り飛ばしたいくらいには碌でもない日々だったことは自覚している。
ギリギリラッキーなことに死守できて縁を切ったとはいえ、次に鉢合わせたときにはノンプレスでそこらにあるものを投げつけようと決意するくらいには、散々な過去だった。
この二匹をのこ引きにして杵ですりつぶしてしまいたいと思う衝動に駆られるくらいには今でも心に根深く残っている傷である。
まあ生憎、のこも杵も所持していない為物理的には不可能だ。
それに毎度のこと幸運に恵まれて最悪の事態をギリギリ回避できている為、偶に土地神がいる方向に向かって感謝を捧げるくらいには無事だ。
そんな人間不信気味な日々を過ごしていた私だったが、過去に一度だけ見直したヒトがいた。
それはいつもの如く、私をいじめていた中の一匹の鹿だったが、一度、心折れて私がワンワンと大泣きしたとき、鹿は人前ではあったが丁寧に私に謝った。
それで終わればそこまでの関係が多かったが、ある日私が学校で書庫番をしていると、彼が話しかけてきた。
最初はそれは淡白な返事だったかも知れない。
けれど、彼は飽きずに私に話しかけて来て次第に私は絆されていった。
あまりよく分からない話をうんうんと相槌を返すだけだったが、それでも彼は気を良くしたのか私によく話しかけてくれるようになって、不思議とそのひとときはいつも心穏やかになる時間だった。
一緒に進学できたらなぁと思いもしたが、どうやら彼は別の道を選んだらしく卒業以来めっきり疎遠になってしまったが、いつかまた出会えたら、話に相槌を打つだけでもいいのなら、もう一度思う存分語り合いたい相手ではある。
これからも、憎いあいては傷つくたびに増えていき、それこそ星の数ほど増えるかも知れない。
それでもふと、心温まる思い出があるから、完全な人間不信にはなりきれないのかも知れない。
私はこれからも人を疑い続け、そして盲目的に人をアイするのだろう。
ちょろいと言われても仕方ない。けれど噛んで、ちぎって行くのも人だけど、それをなでて慈しむのもまた人なのだから。
人が嫌いで、だけど何処か人が大好きな女の話。
ちょろくて結構。だって人だもの。