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白戸さんの口から人間という言葉が出たが、その人間というのは生きているという意味の人間なのだろうか。
「え…白戸さんは幽霊じゃないってこと?だとしたらごめん…。でもなんで白戸さんに幽霊の噂が?」
いや、でも幽霊の噂がなくても…一目見たら勘違いしてしまうだろう。
きっと俺だけではないと思う…きっと。
さすがに失礼だから言わずにパクパクした口を閉じた。
「たまたま私を見た生徒が勘違いしたんでしょうね。それより…貴方、噂がなくても私は幽霊に見える。今そう思ったでしょ?」
凄い…白戸さんは人の心を読める能力があるのか?
「今、私は人の心を読める能力あるのか?って思ったでしょ?」
「ごめんなさい。」
「別に謝らなくても良いのよ。ずっと幽霊に思われるのは言われてきた事だから。心の中は貴方の顔がそう書いてただけよ。」
なるほど…ずっと思われてきたなら白戸さんの表情に納得だ。
悲しみでも怒りでもなく何かを通り越したような清々しい表情をしていた。
「これでも…小さい時は幽霊だって嫌われて、友達が出来ないままで泣いたのよ。先生はただ話を聞くだけで何も心配してくれなかったわ。私が悪いみたいな言い方もされたわね。ただ早く解決したい、面倒事は止めてくれって感じだったわ。でもそのおかげで今では一人が好きになって、だいぶひねくれた性格に育ってしまったわ。」
「白戸さんは…一人が好きなの?寂しくない?友達と遊びたくなったことない?」
あ…これは言っちゃだめだったかな…
「…1度だけあるわ。でもね、私は幽霊だから」
そう言って白戸さんはクスッと薄笑みを浮かべた。
何か言わなきゃと思った瞬間授業終了のチャイムが鳴った。
あ、チャイム鳴ったし戻ろうかな、幽霊じゃなかったし…
「そういえば貴方は仮病でここに来たの?どこも具合悪そうに見えないわね。」
「うん、誰も幽霊の正体確かめようとしないから俺がって思って。」
「そうだったのね。でも人の噂も七十五日って言うぐらいだし、そのうちみんな飽きると思ってたわ。でも全然誰1人保健室に来ないから、今貴方がいるベッド私専用だったのよ。それにしても貴方変わってるのね。幽霊って聞いたら怖くないの?」
白戸さんにも変わってるって言われてしまった。
「そりゃあね、幽霊は怖いよ。夜だったら絶対来なかったし。」
「男子で幽霊が怖いなんてもやしね。」
さっきから思っていた事なんだが白戸さんは言葉に棘がある。
でも悪びれたようには思っていない、白戸さんにとっては普通なのだろう。
「白戸さんは幽霊怖くないの?」
「私は幽霊とお友達だから」
「え…」
「嘘よ。私に霊感はないわ。演技で幽霊とお話をして皆を怖がらせてたわ。あれは凄く楽しかった、ふふふ。」
白戸さんがわからない。
「ねぇ、どうせ昼休みが終わるまでいるつもりだったのでしょう?」
「あー…うん、そのつもりだったけど…」
「だったけどって何よ。」
「います…」
白戸さんの言葉には棘があると言ったが、圧も感じられた。
仕方ない、昼飯は売店で買ってくるかな…
「これ、貴方も食べる?」
白戸さんはお弁当を手に持っていた。
「珍しく昨日遅くまで読書してたからか、朝ぼーっとしてたのね…作りすぎちゃってどうしようか迷ってたのよ。」
白戸さんも夜更かしをしていたらしい。
「白戸さんが良かったら頂こうかな。」
保健医の机を借りて昼食を取った。
そして俺は白戸さんに問いかけたんだ。