着々と
ゴーレムを狩ると言う事で、俺達は初めて全員で狩りをする事にした。
ただ全員が拠点から出てしまったら、跳ね橋を操作する人が居なくなってしまう。全員で外にでれば跳ね橋は降りたままで、無人の拠点が晒される事となってしまう。
だけど、誰かが残って跳ね橋を上げれば全員での行動と言うのは不可能に。例えその操作した人が防壁から飛び降り、共に行動をできるようになったとしても、今度は拠点内に入る事が出来なくなっちゃうからね。
と言う事で、拠点内と外を繋ぐ隠し通路を造っておいた。
普段は誰もその場所を発見出来ない様にと色々カモフラージュし、あたかも自然しかありませんよと言う風に装って。
「この地面を土魔法で移動させれば地下通路が顔を出すのよ」
「桔梗はよく場所が覚えられるね……私には周囲と全く同じにみえるよぉ」
「こんなのは割と簡単よ。空間をしっかりと把握してしまえばね」
秋山さんがメインで作った通路と言うのも理由の一つだろうね。彼女しかこの道を開け閉めする事が出来ないというのもありそう。
「俺達の土属性魔法だとレベルが足らないんだよなぁ」
「……掘って盛ってが無理。………………でも一部桔梗も盛れない」
「ん? 冬川さん何か言った?」
「……何も?」
こてんと首を傾けて何も言っていないと言う冬川さん。
俺には何を言ったか聞こえなかったんだけど……何やら秋山さんがただならぬ雰囲気を醸し出しながら冬川さんを見ていた。
「ゆぅきぃ……何か言ったかしら?」
「……何も?」
「大丈夫。怒らないから言ってみなさい? ね?」
「……既に怒ってる」
「あら、怒られるような事を言ったと自覚しているのかしら」
「……マシュマロが食べたい」
冬川さんが言うや否や、秋山さんは「無拍子か!?」と言いたくなるような動きで冬川さんの前へ移動。そこから流れるように彼女の顔面をキャッチ。
「あ、アイアンクロー!? 桔梗の奴、何時もは梅干しなのに!」
「あぁ、また雪は余計な事を言って……何時もどうなるか分かっているはずなのに。それに桔梗は普通なのにね」
「エリカが言うと、大抵の女性を敵に回すと思うわ……」
えっと、これも何時もの流れと言う奴なのですか。そうですか。
後、普通うんぬんはスルーしておこう。
「……ギブギブ」
「ギブアップの前に言う事は?」
「……それでもボクは言ってない」
「この子は!!」
おっと、アイアンクローから流れるように梅干しの体勢へ! そこから一気に二本の腕がスクリュー!! ぐりぐりと動く拳が冬川さんのこめかみへダメージを与えて行く!!
「って感じで実況したくなるね」
「望月……でも、言いたい事は良く分かる」
「夏目さん、解説とかどうかな?」
「技量不足かな。ただ、これを見ていると何時もやりたくなるよ」
「ふ、二人とも……止めなくても良いのかなぁ」
あわあわとしているのは春野さん一人。
だってねぇ……秋山さんも冬川さんも何か笑顔だし? これ、二人のコミュニケーションってやつでしょう。悪乗りとも言えるんだけど。
「ただ、こうしてみるとやっぱりお母さんと娘って感じにしかみえな……」
おっと、ここらで口を閉じておこう。何やら不穏な気配が漂いそうになったし。
ただ、どうやら春野さんと夏目さんも俺の言った事に対して、「分かる」と言わんばかりに頷いていた。やっぱりそうだよね。
秋山さんから冬川さんが解放された事で俺達は行動を再開。
冬川さんがこめかみを押さえながら「うー」と唸っているのを横目に、隠し通路の開け閉めをチェックしていく。
「うん、閉めた後は全く気が付かないレベルでカモフラージュが出来ているね」
「ここから一人か二人を拠点内へ行ってもらうって感じね。私は残ってしっかりとカモフラージュを施してから拠点へ戻ると言った感じかしら」
隠し通路の使い方を確認したら準備は終了。
これで全員で行動する事が出来る。後はどうやってゴーレムを狩るのかと言う事と、全員でいる状態での戦闘方法だよね。
「隠し通路はこれで問題無いから、次の問題は連携かな? 俺が増えて逆に弱体化しましたなんて可能性もあるし」
「んー……でも全員後衛だから、割と適当にやっても上手く行くんじゃない?」
「それは楽観視しすぎよ。後衛だけだとしてもタイミングと言うモノがあるのだから」
後衛同士と言う事で、全員が全員接近されない動きをする必要がある。
今までは秋山さんのロックウォールが有ったので問題無いと判断出来た。それは俺が彼女達に混ざってもかな。
でも今回のゴーレム戦はその壁が使えない。となれば、全員の移動が重要になって来るはずで。
「逃げる際に左側に居る人が右へ、右側に居る人が左へなんて動きをしたらお互いぶつかったりするでしょう? だから、そう言うのが無い様にしないといけないのよ」
「それなら互いに距離を取ったら良いんじゃないかな?」
「皆が声を掛けられない距離とか、目に入らないような状況は危険よ」
ジョブが斥候とか暗殺者であれば、単独で隠れて行動するのもありなんだろうけどね。もしくはそれが出来るスキルを手にしているとか。
でも、このメンバー内には誰もそう言ったスキルは無い。そしてまた、連携を取れるようなジョブもスキルも無い。となれば、お互い目視できる場所、声が届く場所に居るのが最適になる。と、秋山さんが言う。
「誰か一人指示役を決めて、右とか左って言って貰うのが良いかも」
「同じ方向へ逃げるって事?」
「単純だけどね……今後の事を考えると少しでもそう言った仕組みを作っておく方が良いと思うのよね」
指示か……恐らく一番モンスターに対して察知が早いのは、冬川さんの召喚したネズミだよね。でも、冬川さんが咄嗟に指示出来るとは思えない。とは言え、ネズミの指示では皆に伝わるまでラグタイムがあるかな。
となると、一番良いのは何だろう? 例えば……誰かにネズミと行動して貰うって事かな。うん、何だかそれが良い手の様な気がして来た。
「って事で、ネズミを誰かの頭に乗っけるのはどうだろう?」
「……もっちー」
「望月……」
「望月君、一つ聞いて良いかしら。どうして頭の上なの?」
「……いや、それは何となくというかノリと言うか」
あのネズミは、人の肩や頭に乗る行動をしていたからね。こう、ちょこちょこと人をアスレチックか何かの様にしていたし。
だからその時のイメージが強すぎて……つい、乗っけると言う事を言ってしまった。うん、ネズミに毒されたかなこれは。
「と、とりあえず。頭どうこうは横に置いて貰うとして、冬川さんにネズミを召喚して貰って、そのネズミと一緒に状況を見て貰う人が居ると良いと思うんだよね」
「確かにそうね。あの子はモンスターの動きに対して、いち早く察知する能力を持っているみたいだし」
「狩りの時も助かったな。ネズミの言う方向へ矢を射ったら、矢がモンスターに吸い込まれていったからな」
「敵に囲まれる前に移動する事も出来たしね。そう考えると、望月君の言う様な行動を取るのが良いかも」
対ゴーレム用のレーダーとして、ネズミと一緒に誰かに行動して貰う。
そんな方針で話が固まり始めると、当然だけど誰がネズミと一緒に? と言う話になってくる。
「……ボク?」
「いや、冬川さんだと皆に指示を出すのが厳しいでしょ」
「……失礼」
「コンマレベルの対応を求められるのよ? 雪に出来るかしら、それに大きな声が出せないとダメなのよ」
「……残念」
普通に考えたら、指示だしをするのはネズミを召喚する冬川さんがってなるからね。でも、彼女では無理があるのは皆も重々承知しているから、当然だけど別の人と言う話になる。
とは言え、はっきり言い過ぎたのか、冬川さんはしょんぼりと肩を落としていた。そんな冬川さんにネズミが「ちぅ」と肩に乗ってポンポンと彼女の頬を叩いている。慰めている様だ。……てか、何時の間に召喚したんだ。
「ま、全員で一度試してみましょうか。誰が一番適任かを」
「だね。折角外に来ている訳だし、このまま狩りでもしてって感じかな」
こうして俺達は、初めて全員での戦闘を行う事になった。
ただ、個人的には既に適任者に関しては、彼女が良いんじゃないかなぁ? と予想がついている。だけど、やっぱり試さない事には分からない事も有るから、此処は素直に従っておくとしようかな。
ブックマークに評価などなど、いつもありがとうございます!(o*。_。)oペコッ
着々と下準備が終わっていっております。
そしてじゃれ合っている女子二名。彼女達のキャラが固まって行きますね(まて




