ゴーレムって倒せるの?
拠点へと帰還している最中。精霊のネズミは「ちぅ……」と、悲し気な表情を見せながら消えて行った。うん、稼働限界ってやつだね。冬川さんが召喚を行えばまた現れるので、そこまで悲し気な顔をする必要なんて無いんだけどなぁ。と思いながら、残りの帰路を一人で移動。
距離的には何の問題も無いのだけど、索敵からの道案内が出来る存在が居なくなったので、俺は拠点へと戻る間に数回の戦闘を行う事になってしまった。
いやはや、あのネズミって本当に優秀だったんだなと実感。
とは言え、ここらで出るモンスターは爪ネズミ達が殆どなので、油断さえしなければ何の問題も無いかな。
先制して魔法を軽くポンポンと撃ち込めば、爪ネズミ達もやられるか一目散に逃げるだけだしね。
と言う事で、俺は怪我も無く無事に拠点まで戻ってくる事が出来た。
拠点には跳ね橋があり、拠点内に入る為にはその跳ね橋を下さないといけない。なので、戻って来た知らせを女子達に行う必要がある。とまぁ、コレは以前に女子達が狩りから帰宅した時にやった事なんだけど。
だけど、どうやら俺の姿が見えると同時に女子達が降ろし始めた様で、俺が跳ね橋の前にたどり着く頃には、もう橋を渡れるようになっていた。……よく戻って来たのが分かったよね。
橋を渡ってから、皆に「ただいま」と挨拶をする。すると、春野さん・夏目さん・秋山さんは普通に「おかえり」と言ってくれた。うん、何だか気分がほっこり。
ただ、なぜか冬川さんだけが「……おちゃー!」と、お茶を要求してきた。……一体どういう事だ?
「また雪がバグってる」
「えっと、また?」
「うんっとね。お休みだからかな? 昨日のテンションもあってちょっとハイになってたみたい?」
「これは、〝おかえり〟と〝もちゃー〟が合体したようね」
「あぁそうなんだ。てっきりお茶を要求されたのかと」
「……お茶?」
「ほっと一息という意味ならお茶はベストかも。私用意してくるよ……お茶じゃなくて水だけど」
帰宅早々、不思議ワールドに巻き込まれてしまったい。なんというか、もう完全に彼女達のペースになってしまっている。……いや、正確に言うなら冬川さんワールドかな。うん、彼女のペースだ。
てか、はっきりと「お茶?」って聞いて来てるし。これ、お茶も要求したって事で良いのかな。それとも「お茶飲む?」って事なのかな。
「とりあえず、さっさと跳ね橋を上げてから広間で集合かな。報告とか対策の話もしたいし。あ、先に広間に行っておいて、ちょっと自室に行ってから合流するから」
全員納得したのか彼女達は了承の返答をし、皆で跳ね橋を上げた後、和気藹々と言った感じで広間へと向かって行った。
俺はそんな彼女達からは少し離れ、一度自室へと行き着替えやらなにやらを済ませてから広間へと向う。汗やら土埃などで服は大変な事になっていたからね。あ、後何か齧ったり飲んだりする物も用意しておこうかな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
皆が集まった広間にて。
「さて、そしたら調べて来たことなんだけど……」
そう前振りをして、俺はゴーレムの事について彼女達と情報を共有した。
「……もきゅ」
「雪、口にモノを入れながら話さない。っと、そうね……ゴーレムの弱点は分からなかったのよね?」
「……困難」
「弱点は鑑定でも発覚しなかったかな。で、もう一度言うけど物理耐性が高く、土魔法は下手をしたら吸収されるみたい」
「はぁ……そうなると私の一番得意な魔法が使えないと言う事ね」
残念そうに肩を落とす秋山さん。彼女は土術師だから仕方ないよね。
「でも、一番通用しそうなのが魔法なんだよね?」
「私も物理的な矢は使えないって事かぁ」
「……属性」
「残念ながら、どの属性が通用するかも分からなかったかな。でもこれがゲーム的に考えるなら風とかになりそうだけど」
最初に使える魔法が4つだったことを考えると、よくある4竦みな感じかな? と思えてくる。この魔法やジョブとか、ゲームみたいな設定で作られているしね。
そう考えると、安直かもしれないけど風では? って思うんだけど……果たして本当にそうなのかなぁ。なんか落とし穴とか無いよね?
「システムの事を考えるとなぁ……」
「それだと最初の時に、魔法に関して弱点とかの説明がありそうだよね」
「……でもシステム」
「確かに。パーティー設定とか忘れていた事を考えると、何かやらかしていてもおかしくない」
「皆、疑心暗鬼になり過ぎていないかしら? 魔法は通用すると言うのだから、土や石に通用しそうな魔法をどんどん打ち込めばいいと思うわよ」
運良くと言えば良いのかな? 僕達は魔法が使えるジョブばかりだからね。
特化は土術師の秋山さんしかいないけど、彼女も合わせて他の属性は初級のみなら俺と冬川さんが使える。
春野さんは攻撃魔法が無いけど支援が出来るし、夏目さんは魔法弓が使えるので魔力による属性矢を撃つ事が可能。
「ただ、問題は足止めよね……今までは石壁とかを作って進路妨害をしていたのだけど、相手がゴーレムでしかも土魔法を吸収する可能性があるとなると」
「ウォール系の魔法もアウトな可能性があるって事?」
「……敵を強化」
「それ不味いじゃん……どうするのさ」
ゴーレムが相手じゃなければ一方的に攻撃も出来たよね。でも、ゴーレムだからこそ俺達にとっては防壁が無いと言う問題が発生してしまった。
進路を防ぐ度に相手が強化されるとか、どんな悪夢なんだよって話になるから。だから当然、足止めは別の方法で行う必要があるんだよね。
とは言え、そんな便利な方法が簡単に見つかる訳が無いんだよ。だってストーンウォールが便利過ぎだから。それさえあれば何とかなるレベルだったし。
なので今、あーでもないこーでもないと女子達が頭を捻って案を出している。
俺はと言うと、そんな女子の話からは一歩引いて、錬金術師として道具で何とかならないかな? って、別視点で思考中。
「……ゴーレムは石」
「石かぁ……何とかして柔らかくとか出来ないかな?」
「石は柔らかく出来ないわよ……溶かしたりは出来るのだけどね」
「溶かす……なぁ、望月が錬金術で何か作れないかな」
「錬金術何か可能性があるかもしれないわね……って、本人もそう考えているみたいよ? ほら、かなり考え込んでいるみたい。なら其方の方向は彼に任せて、私達は別の方法を考えましょう」
「そうだね。魔法でのアプローチを考えてみる? 例えば、風で削るとか水で削るとか」
「……削るばかり」
女子達の話もちらちらと聞こえない訳じゃない。
そしてどうやら、彼女達は道具を使うのは俺に任せて、魔法的な方向で考えてくれるみたい。……でも、錬金術で石をどうにかする方法って何かあるかなぁ。
たしかに、女子の会話にあった溶かすと言うのは一つの手だと思う。でもそんなケミカルな方法って、何か作れたっけ? とりあえず酸とか? コンクリートだと塩とかでも脆くなっていたような。
あ、でも、それってかなり時間が必要になるよね。普通に考えて良い手とは言えないような。それに酸性でそこまで強い物ってここら辺にあったっけ? ムクロジも中性だったはずだし。
これ、思いっきり爆破した方が手っ取り早いんじゃないかなぁ。こう、なんとかゴーレムに大量の爆弾を括り付けて。……威力的に無理かな。
何か無いかな。ゴーレムに対してダメージを与える事が出来る方法。正直、石材として錬金術を使えたら話は簡単なんだけどね。
あのゴーレムを鍋に入れてかき混ぜるとか……サイズ的に無理がありすぎるよ。
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