鑑定。そして、とある物の予想
俺の目の前では、ネズミがちょこまかと走り回っている。
そしてそんなネズミは時折俺の方を見て「ちぅ!」と鳴くと、尻尾や手を使って「あっち!」と言わんばかりに誘導。お陰で、敵に会う事など無く森の中を進む事が出来た。
「それもそうか。敵が大量に居る場所へ案内できるんだから、全くいない場所を選ぶ事も可能だよね」
「ちぅ!」
「もちろん!」と言わんばかりに、ネズミは手を組んで「どやぁ」と言った表情を見せた。なんだろう、可愛いんだけど憎たらしいな。思わず突きたくなるよ。
「ち、ちぅぅ!」
あ、思わずどころか、どうやら無意識にネズミを捕まえて突いていた。
ネズミが「やめて!」と言わんばかりに、前足を顔の前で動かしているんだけど……ごめん、なんかグルーミングしている様にしか見えなくて、とっても可愛いんだけど。
「お前は優秀だなぁ」
そう言いながら、突くのを止めて大きな耳の合間を指の腹で撫でてみる。
あ、今度は照れたように……って、モーションが変わらないじゃないか! またもやグルーミングにしか見えないよ。
あれ? てか、何で精霊なのにこうして触れる事が出来ているのだろうか? たしか、召喚された存在は精霊だから攻撃する事が出来ないって話だったような。もしかしてそれって思い込みだったって事?
「ちぅ!」
うん、何を言いたいのか分からない。
道案内としては、ジェスチャーで何とか伝わるから大丈夫だけど、普通に会話までは出来ない……たぶん、冬川さんなら何が言いたいのか分かるんだろうけど。
「ち、ちぅ……」
あ、「残念だ……」と言わんばかりに肩を落とした。分かりやすいと言えば分かりやすいんだけどなぁ。ただ残念な事に細かな会話が出来ないんだよね。
しかしまぁ、召喚された精霊ではあるけど、その見た目とサイズもあってかどう見ても可愛らしいキャラでしかないんだよなぁ。動きもいちいち愛嬌があるし。
「っと、ネズミからプリティートラップを受けるところだった。とりあえず先に進もうか」
「ちぅ!」
ネズミが「自分の所為じゃない!」と抗議してくるけど、それは華麗にスルー。
先ほどネズミが尻尾で指示した方向へと森の中を進んで行くと、それに合わせてネズミもサっと掌から飛び降り、俺の少し先を再びちょこまかと動き始めた。
そんな感じで森の中を突き進んで行くと、ズシンズシンと地面が揺れ始める。と言う事は、ゴーレムとの距離がかなり近くなって来たと言う事だね。
「さて、ゴーレムに会わないようにしつつ、奴をチェックできる場所が有れば良いんだけど……何処か無いかな?」
「ちぅ……ちゅー!」
ネズミは少し悩んだ後に「あっち!」と、少しこの場から離れたポイントを指した。なので、その指示した方向を見る。
「なるほど、確かにあの場所なら身を隠しつつ観察できそうだね」
その場所には大きな岩が存在していて身を隠すには適している場所。
ただ、足場は大小さまざまな石が転がっている為に決して良いとは言えない。走ったら石に足を取られたり、石自体を蹴り飛ばして音が出そうなので注意しないといけないかな。
森の中からでも良くない? と思うかもしれないけど、実は森からだと鑑定の範囲外にゴーレムが居るんだよね。だから、一度森の中から外へと出ないといけないけど……これがまた、見通しが良い場所すぎるんだ。
なので、大きな岩があると言うのは実にありがたい。
「さてさて、そしたら抜き足差し足忍び足で大岩まで行って……」
「ちぅー」
「しー」と前足の指を一本立ててジェスチャーをするネズミ。本当に色々出来るなぁ……てか、今それをやらないで欲しい。思わず笑っちゃいそうになったから。
とは言え、折角なので俺もネズミにたいして「しー」とやっておく。チームワークを高めるにはこうしたやり取りも必要だからね。
そんな事をしながら、俺とネズミはゴーレムに気が付かれる事無く大岩の場所まで到着。そして其処からゴーレムに対して鑑定を試してみる。
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ゴーレム
特徴:硬い為に防御力が高い
蜘蛛と同じ存在でフィールドボスみたいなもの。倒せば新天地が広がるよ! 倒せたら……ね(^_-)-☆
特徴はそのまま。ただただ硬いんだぁ。だから、物理攻撃は一切通じないと考えた方が良いかも! 前衛だけだと全滅しちゃうかも(>_<)
魔法はソコソコ通用するけど、土属性には強いかな。もしかしたら吸収されちゃうかもぉ( *´艸`)
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いつものシステムさんありがとうございます。
しかしなるほど……とりあえず、俺達には前衛なんて居ないから大丈夫だとして、土属性がアウトなのか……となると、此方の最大戦力である秋山さんの火力が大幅にダウンしてしまうと言う事になるね。
後は弱点が判ればと思ったけど、どうやら弱点は鑑定だと分からないらしい。となると、これはリアル知識が必要と言う事かな?
「よくある話だと、ゴーレムには文字があるから、それを削り取ると良いって内容なんだけど……文字ってあるかな?」
「ちぅ?」
ネズミと一緒に首を傾ける。
ゴーレムの隅々まで観察してみるも、文字なんて何処にも無い様に見える。
一応、まだ確認が出来ていない場所もあるけど、これ以上調べようと思ったらもっとゴーレムに近寄らなくてはいけない。……それはハイリスク過ぎる。
「ちぅ! ちぅちぅちゅー!」
「えっと、自分が近づいてみるって? 駄目だよ。それは止めた方が良いと思う」
前足をぶんぶんと振りながらアピールして来るけど、たぶんそれはやらない方が良いともう。
ゴーレムがフィールドボスと言う事なら、奴に近づいただけで戦闘になる可能性が高いからね。
「多分、今ぎりぎりの位置に居るからか、奴の視界に入っていないから大丈夫なんだろうけど、奴の領域に入ったり奴の視界に映りでもしたらアウトだと思った方が良い」
「ちぅ?」
「そうそう、ネズミのモンスターと同じでアクティブだと思うよ」
でも、これ以上の接近が無理となるともう調査出来る事が無い。
それに、そろそろ気にするべき事もある。
「君の稼働限界はどんな感じ?」
「ちぅ! ちぅちぅ……ちゅー!」
あぁ、やっぱりそろそろ不味いのか。でも、よく考えたら相当な可動範囲と時間だよね。
だってもう、何時間だろう。結構な長時間を活動して居る訳だし、拠点から近いという訳でもない場所まで来る事が出来た。そう考えると、このネズミは斥候として本当に優秀過ぎるよ。
「とりあえずだけどさ。最低限の目的であるゴーレムの鑑定は出来たから、此処は安全を考えて戻るのが一番かな」
「ちぅ!」
「帰りも道案内を頼むな」
ネズミが「任せて!」と頷いたので、俺達は再び音を立てないように歩きながら、今度は森の方へと向かって行く。あぁ、背後のゴーレムに気が付かれませんように。
しかし、こうゴロゴロと石とかが転がっていたけど、なんだか気になる色を放つ物も見えた気がした。なんかこう、赤い色をした物。てかあれ、赤錆じゃね? って思うんだけどどうなんだろう。
とは言え、それが有ったのはゴーレムが居た場所よりも奥。確認しようと思ったら、間違いなくゴーレムを倒した後になると思う。
きっと、予想が正しいならアレは鉄だと思う。ただ、おもいっきり錆びた鉄だから普通に考えたら使いにくい物ではあるんだけど……でも、そこは錬金術が有れば別だよね。
あぁ、これはゴーレム退治を行う理由がまた一つ増えたね。
もし鉄が手に入るのであれば、一気に出来る事が増える訳だし! ほら、刃物が沢山作れるよ。今まで、石斧・石槍・石包丁だったからね……これらが一気に鉄製品に出来ると思うと、夢が広がって行くよね。
ブックマークに評価などなど、ありがとうございますだ(o_ _)o))
銅に錫? そんなもの知りません。いきなり鉄製品になる可能性がスタンバイしましたよ。
続・大活躍なネズミなお話(*'ω'*)




