サモナーは見た~雪視点~
地精霊を召喚して、ボクは木陰に隠れる。
召喚した地精霊はネズミの姿をしていてとても小さく実に表情が豊か。……この精霊、ボクの表情筋を全てもって行ってない?
召喚した精霊はレベル1。これは精霊のレベルと言うよりランクみたいなモノみたいで、どれだけレベリングをしてもネズミのレベルは上がらなかった。固定ステータスと考えたら、割り切った上で使い分けをして行けばいいと思う。……今はこのネズミしか呼べないけど。
ただレベル1だからと言って弱い訳じゃない。当然、レベル1で召喚するメリットは存在していた。
――――――――――――――
土精霊レベル1
見た目がネズミの可愛い奴だよ。
このネズミ型土精霊は、兎に角小さくて素早い。そして、初級の土属性魔法である〝ロック〟が使える子。割と優秀よ。
精霊のレベルが1と言う事もあって、召喚コストは安く、召喚して居られる時間も長いかも(>_<)
だから索敵や奇襲要員としては使えるかもしれないわね(´ー`)
――――――――――――――
明確な召喚時間とか書かれていないけど、たぶん相当な時間召喚していられる。
だって、召喚術にスキルポイントを全振りしているから。だから、召喚術の効率はとっても良い。
――――――――――――――
召喚術(初級)
カンスト! ◆×10
サモンブックが解放されました。
召喚に使う魔力消費量が3%カットされます×3
召喚した精霊の滞在時間が5%伸びます×3
召喚した精霊の攻撃の威力が3%増えます×3
――――――――――――――
召喚術の情報がこんな感じ。カンストした際に書かれている情報が変わったんだけど、とっても分かりやすくなった。何がどれだけ強化されたか一目瞭然だから。
それに、毎回あの毒交じりだった説明が無くなったのも良い感じ。
「……ただこれ、計算式が分からない」
この、〇%が3回ずつアップして居るんだけど、これが乗算なのか、加算なのか、詳しく書かれていない。この程度なら大した問題では無いと感じるかもだけど、後々変わって来る。
例えば滞在時間。これが15%アップなのか、15.7625%アップなのか……。
もし基本の召喚時間を1時間で計算するとしたら、15%アップは9分上がると言う事になる。だけど後者だと、だいたい9分45秒と約10分近く召喚時間が増える事になる。
これ、強いモンスターを召喚した時に、威力アップがかなり響くと思う。……本当、一体どっちの計算式なんだろう。こういう所がこのシステムは不親切だ。
兎に角、今のところはそこまで問題にならないけど、将来的には解決して欲しい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
調査は順調に進んでいる。
ネズミが何の遠慮も無く相手の拠点内を走り回る。そして、その事に誰も気が付いていない。皆が皆、忙しなく動いているからと言うのもあると思うけど、やっぱり小さく素早いと言うのが素晴らしい武器になっている。
「……最初の召喚がネズミ型で良かった」
もしこれが角ウサギとかであれば、ここまで良い感じに調査をするなんて出来ないはず。
そう考えると、ネズミを100回以上たたいたボクは褒められても良いと思うんだ。これは、帰還したらご褒美を要求しないと。……勿論、ご褒美は美味しいごはんで。
それにしても。
「……あのペットは何?」
指揮を振るっている人の下に這いつくばっていて、偶にその人に座られている。いじめ?
でも何だかとっても……嬉しそう? 喜んでいるように振舞っているだけ? うん、全く分からない……未知の世界。偶にペシッと叩かれては「ありがとうございます!」って叫んでるし。叩かれてお礼を言うの? とっても変。
他にも不思議なのが一杯。
だけど、あの毒にした相手は一体どこへ行ったんだろう? 全く姿を見ていない。毒にした相手、誰だったっけ? 3人ぐらい居たと思ったけど。うん、誰だか忘れちゃった。きっとボクにとってはどうでも良い人だったんだ。
ボクにとって大切なのは、エリカ・七海・桔梗だから。あ、でも最近はもっちーもランクインしたかも。うん、それ以外はどうでもいいや。
勿論、家に帰れば家族の皆も大切だけどね。でも、この場所では会えない……思い出すと涙が出てくるから胸の奥にしまっておこう。
コシコシと目を腕で拭って……。気分を一度リセット。
「……やっぱり居ない」
どれだけ探しても、3人が居ない。
昨日は分からなかったけど、彷徨っている男子は解毒剤を求めている様だった。と言う事は、その毒で伏せている人が居る。あれ? でも、解毒剤は渡したよね。でもなんで解毒剤を求めているんだろう。落としちゃったのかな?
ただ、落としたってなると、患者である3人は何処かに居るはずだよね。うーん、何で見つからないんだろう。
謎だ。そう思いながら、ボクはネズミに右へ行け、次は左にと指示を出す。
そして人からは一定の距離をとりつつ、物の影に隠れて話声ややっている事を調べて行くんだけど……。
「あら? 可愛いネズミちゃんが紛れ込んでいるみたいね」
ビクッとなってしまった。
召喚した精霊だから、ネズミには何かをするなんて無理なはず。だけど、その存在を感じ取られたみたいで、少し恐怖を覚えてしまった。……しっかりと隠れていたはずなのに。
「あらあら、恥ずかしがり屋さんなのかしら? そんな隅っこに隠れちゃって。まぁ良いわ……えっと、何処のどなたか知らないけれど、のぞき見は宜しくなくてよ?」
や、やっぱりバレてる。
クスクスと手を口元にもっていって笑う仕草が、この場合はとっても怖く見える。何もないときにやったら優雅とか、美人に見えるのに。
動くべき? いや、でも他の人にはバレていない。ここはゆっくりと撤退するのが一番。
「クスッ。獲って食べたりはしないから。そうね、アナタはもしかしてあの場所を放棄した人かしら? もしそうならごめんなさいね。私達の元指導者が馬鹿をしたみたいで。でも安心して? しっかりと報復はしておいたから」
何でそんな何でも知っていますみたいな事を言えるのだろう。本当に怖いとしか言えない。
「安心してと言っても信用するのは難しいわね。そうねぇ、なら一つ情報を。私がアナタに気が付いたのは、私が〝鑑定士〟だから。ネズミさん、アナタを鑑定させて貰ったわ。そしたら〝召喚された精霊〟なんて面白い情報が見えたのよ」
……自分の情報をボクに出す? なんでそんな事を。本当に信用をとりに来ているって事? 分からない。分からないから、ここは一旦撤退して皆に相談するのが良いかも。
「他にも人が居るのでしょう? それなら伝えて頂戴。私達はあなた達と敵対するつもりはないと。それぐらいなら問題無いでしょう」
……無言のまま、ボクはネズミを撤退させた。
遠ざかる際に、背後から「あら、行ってしまったわね」なんて声が聞こえたけど気にしない。これはボクの手には余る内容。
「……帰ろう。早くテントに」
エリカの顔が見たい。出来るならエリカの胸に埋もれてほっと一安心したい。
あれはボクの知らないタイプの人だ。魔女だ。何をしてくるのか全く分からない。……ただ、敵では無いと言っていた。嘘じゃないと良いけど。
「……あ、スマホを起動しよう」
ピッとスイッチを入れてスマホを叩き起こす。そしてリンクアプリを起動して、何か会話でも無いかと画面を操作していく。
「……む、ボクがこんなに頑張っているのに」
皆なんか楽しそう! ずるい! これは、今直ぐに混ざらないと!!
「……えっと、『エリカは胸を洗って待っていて』これで良し」
書き込んで満足したボクは、急いでテントへ向かって駆けた。
リンク上では皆が『何事!?』とか『雪!! どういう事、何がしたいの!?』とか『返事をして!!』と言った感じで、騒いでいたらしい。ただ、ボクがそれを知ったのは帰宅した後。
とりあえず、精神回復の為にエリカにダイブをするとしよう。
帰宅後の話。エリカへダイブして癒されたボクだけど……なんだか、もっちーがとても申し訳なさそうな顔をしながらエリカとボクから距離をとっていたけど、一体どういう事だろう? まぁいいや、今はこの至福のマシュマロを味わっておきたい。
ブックマークに評価などなど、ありがとうございます!!m(_ _"m)
自由人の雪ちゃんは仲間を混乱させる。
まぁ、突然そんな連絡が来たら吃驚しますわな。
そして何気なく優秀な女王様と、完全に染まってしまったペットさん。彼女達は色々と大丈夫なのだろうか?