何処にいても錬金術が一番
遠征二日目。
今俺は錬金鍋の前にたって「めらめらと~」と歌っている。うん、錬金術って確立したレシピを使っていると暇すぎるんだよね。だから適当に歌ったりしているんだ。まぁ慣れたからともいう。
で、今作っているのは大量の塩。竹筒入りの塩を99個用意するつもりなんだけど、実はこの錬金術によって作られる塩の数は限られているんだ。と言うか! ぶっちゃけ、鍋に入る量が量だから、1回につき作れる塩入り竹筒は5個となっている。
あれ? 鍋に比べて作れる塩の量多くない? って感じる話だけど。うん、俺も何か多い気がしている。でも出来てしまうのだから仕方が無いよね。なのであまり考えない事にしたよ。
因みに、作れる水筒の数も5個と同数。 あれ? どうして同じ量なんだって思うけど、それはもう錬金術だからって事で、無理やり納得しこれも放置する事にする。
ともあれ、塩入り竹筒と水筒。それぞれ合わせて竹筒が10個出来上がる訳だね。
「ただ、この5個で1セットを作るのに10分ぐらい掛かっちゃうのがなぁ。随分と時間は短縮されているとは思うんだけど」
普通に塩作りをしようと思ったらもっと時間が掛かるのは当たり前。だから、5分で出来上がるとかカップ麺かよ! って話ではあるんだけども……やっぱり、錬金術と言う事を考えると長くも感じる訳で。
あぁ、もう少しスピードアップして欲しいと思うのは仕方が無いと思う。
サクッと計算すると、5個で1セット。それを99個分だから20回錬金術をやる必要がある。そして、一度の錬金術が10分だと言う事を考えると200分となり、時間換算で約3時間と20分だ。
さて、これが長いのか短いのか……色々と悩ましいけど、一日有ればできる作業かな。MP的な問題もあって休憩も必要だしね。だから、時間的にはもう少しかかるはず。
「後は、魚の解体もだけど、出来ればボムベリーとかも処理できるなら処理しておきたい処ではあるかな」
現物を作ってアイテムボックスに入れてしまった方が良い。それは何故かと言えば、ボムベリー99個・カエンタケ99個を別々でしまうよりも、焼夷筒99個しまった方が一枠空くからね。だからその分、他の素材なり道具なりを入れる事が出来る。
ただ問題は、それをやっている時間があるのか? と言う話。まぁ、少し滞在時間を延ばせば出来る話ではあるけど。
「そこは冬川さんの仕事次第かなぁ……」
素材集めがメインだと口にはしていたけど、本当のメインは情報収集。
そして、その情報収集ももっと大変な作業になる予定だったんだけどね。冬川さんの召喚魔法のお陰でかなり楽が出来ている。なので、考えていた以上に早く情報収集は終わるだろうし、その内容もかなり濃いモノとなるはずなんだけど。
……問題は、それを伝えてくれるのが冬川さんと言う事なんだよなぁ。うん、彼女との会話は解読能力が必須事項だから。
因みに、冬川さんだけを来させたらよかったのでは? とはならない。
もし戦闘になった時とか、彼女だけは流石に問題だから。なら、戦闘要員である夏目さんや秋山さんの方がと思うかもしれないけども、そこは折角こちらに来るのだから素材を集めて錬金したいよね。それに、現地で道具も作れるし、なんなら毒系の道具を作れば……ね。
春野さんについては以前に選んだ理由を語ったから割愛。
「さて、折角作った塩だから鑑定してみるか」
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海塩(低品質)
特性:食欲の向上
まだ苦みがある塩。普通に使うなら問題ないかも!! あ、でもでも、今まで使っていた塩よりは格段に美味しいわよ!! 太鼓判押しちゃう。
あ、以前と違って塩と水の量が一緒だって事に気が付いた? 以前は水5で塩が1だったのにね。
ぶっちゃけこれ、錬金のレベルが上がった為に、どれをメインで作るかで違いが出たのでした( *´艸`)
水をメインで作ったら、水が大量に出来るわよ( ´∀`)bグッ!
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わぉ、長い。今回は追記が超長い。
と言うかなるほど。何を生産のメインに据えるかで変化されると? なんかそれ、等価交換無視してない? 錬金術って等価交換が大原則だったよね。あれぇ?
まぁたぶん。竹筒の数に合わせているのかな? もしかしたら、不必要になった分は蒸発なり魔力なりに変換されているのかも。水も塩も。
てか、そもそもの以前の比率自体もおかしかったよね。なんだよ6対1って状況だったし。海水って水に対して1割も塩分は含まれていなかったはずだよね。うーん、ここの海水は塩分濃度が恐ろしく高いのかな。いや、それでも流石に5対5は絶対に無いと思うけど。
「か、考えるだけ頭が痛くなりそう……ま、まぁ、魔法で石レンガの量を増やしたり出来ている訳だし、魔力的な何かが作用してるって考えた方が良いかもね」
科学だけで考えてはいけないんだろうね。まさにチートってやつかな。……塩は戦いに使える物ではないけど。
「えっと、気を取り直して。説明からみて塩が以前よりも美味しくなったのか……少し舐めてみようかな」
味見と言う事で竹筒から掌へ少量の塩を落とし、それをペロっと舐めてみる。
「お……確かに、以前よりも美味しい塩になってる。前のは食べれなくはないけど、雑味というか苦みがもっとあったし。無いよりマシって程度だったけど」
実際には、日本で使っていた頃の塩に比べれば、この低品質の塩もまだまだという評価になると思う。
ただ、最低品質で舌が慣れたためか、この低品質でも恐ろしく美味しく感じるモノに仕上がっていた。実は塩って、最低品質が作れた時に大量生産したから、低品質が出来る様になってからも作っていなかったんだよね。……勿体ない病を発症させず、さっさとチェンジしておけば良かったかも。
「あ、それで言ったら武器も作り変えた方が良いかも。杖も弓も最低品質のままだし」
あぁ、よく考えると必要な物って割と沢山あるみたいだね。
とりあえず、これはスマホのリンクアプリを使って要望を出しておくべきかな? いや、それとも自分で採取に行くべきかな。
……一応、何か起きて連絡が来た時、直ぐに動ける様にここで待機と言うのが俺の役目の一つなんだけど。
「うん、待機するのが仕事の一つだから、ここは自分で行くのは我慢するべきかな」
そう。我慢我慢。仲間を信じて待つのもパーティープレイには必須な事。なので、ここはさくっとリンクで要望を出しておくことにした。
「えっと……「全員の武器を更新したいので、素材の収集をお願いします」っと」
俺がそうリンクに書き込むと、直ぐにスマホから「ピコン」と通知音が響いた。なので内容をチェックしてみる。
『了解しました!』
『七海……あなたは拠点待機組でしょう? 素材を集めに行っても意味が無いわよ』
『あ、そうだった。ごっめーん……えっと、エリカか雪よろしく!!』
条件反射と言う奴かな? でも、こうして返してくれることには嬉しいとさえ思える自分がいる。うん、いるんだよなぁ。前なら何とも思わなかっただろうに。ってか、返ってくる事すらなかったな。
「とりあえず返信しておくか。「待機お疲れ様です。何か変わった事とかありましたか? こちらは、美味しい塩が出来ました」これで良いかな」
待機組は基本暇だ。何せ、拠点の壁から敵が来ないかを見張ったりするぐらいのお仕事だから。
もし彼女達が生産職であれば、仕事もあるんだけどね……まぁ、彼女達は戦闘職。だからかな? レスの早い事。
『塩のバージョンアップ!? それは皆が戻って来るのが楽しみだね!!』
『七海……塩が楽しみって言っているように聞こえるわよ』
『え? あ、も、勿論皆と再会するのが楽しみってのは事実だよ!! ただ、塩も楽しみダナーなんて』
『七海、私達よりも塩なんだね。あ、後、杖とかの素材については分かったよ。そっちの採取も行ってくるね』
『え、エリカ!? 違うからね! エリカの方が塩よりも大切なんだからぁ!!』
……リンクコントかな? まぁ、仲が良さそうで何より。
しかし、塩が楽しみかぁ。生産職冥利に尽きるってやつかな。なんだか、楽しくなってきたから錬金術が捗りそうだよ。
ブックマークに評価などなど、ありがとうございます(o*。_。)oペコッ
錬金術で作り上げる信頼関係。もはや、景にとってコミュニケーションツールでも有ったり? 錬金術で作ったモノや素材で会話を広げる事が出来ますから。
因みに、雪ちゃんが出てこないのは調査活動をしているから。彼女はしっかりとスマホの通知音を切って仕事をしています。
ちなみに裏設定。
塩と水の量が調整可能かつ、塩の量が多く取れるのは〝命に一番関わるものだから〟という事で、その手のモノを作る行為に対してテコ入れが入っているからです。
なので、当然ただ鍋などで海水を煮て作った塩や水もそこそこの量が確保出来たりします。これはある意味、少しでも生存率を上げる為にという島側からの良心と言った感じですかね。
今更ですが、景は違和感を覚えました。これは、景の心に余裕が出来たからでしょう。




