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熱は伝わるモノ

 お互いに全力では無いとはいえ、その〝熱〟は見ている者達にも広がっていく。

 ただ、ここでその観戦している者達が〝普通〟の者達だったら、きっとこのお祭りは無かっただろう。


「うおぉぉ! 俺も負けてられっか!! おいそこのエルフ! 前々から思っていたが、そのイケメン顔が気に食わなかったんだ!!」

「あなたのその暑苦しさですが、私はとても辟易としていましたが?」

「おうおう! 今日こそ決着を付けようじゃないか」

「はぁ……気分は、いえ、どうやら私の頭もこの熱気にやられているようですね。かなりバグっているようです。良いでしょう! 今日はお互い倒れるまで殴り合い(かたりあい)ましょうか」


 因みに、この口撃を交わし合っている2人って実は酒場の飲み仲間らしい。そして、よくその酒場に来る女性客をナンパしているんだとか。

 そしてそんなナンパの結果なんだけど、やはりどうしても女性が誘われるように寄ってしまうのはエルフさんの方らしく、獣人の男性は少し思うところがあったらしい。……ただ、彼が全くモテ無かったのかと言えばNoらしく、逞しいのが好きな人は近寄っていくし、もふもふ愛好家には可愛がられていたのだとか。ただ、総数が負けていた事に納得がいかなかったそう。



 そして、そんな彼ら以外にも……。



「もう少し貴女は優雅にですね……」

「優雅よりも筋肉だろう? 私のこの鍛え上げられた腹筋ほど美しいものはない!」


 ヤレヤレといった表情で女エルフさんがそんな事を言えば、女獣人さん服を捲り上げ割れた腹筋を見せびらかす。すると、エルフさんの方が「だまらっしゃい! お恥ずかしい!!」なんて言いながら、その腹筋にボディーブローを打ち込み……腹筋の硬さに拳がやられたのか、涙目になりながら拳に「ふー、ふー」と息を吹きかけている。

 ただ、どうやら獣人さんの方もノーダメージという訳じゃなかったようで、膝を地面に付きながら「い、良いボディーブローじゃないか……」なんて言葉を、痛みを我慢しながら笑顔を作りつつエルフさんに投げかけている。



 いやはや……なんかもう、めちゃくちゃになってるよ。

 本当に種族関係なく入り乱れて、拳・口・酒と何でも有りの語り合いの場に観客席が変化。勿論だけど、子供達はしっかりとした者達により避難済み。こればっかりは理性ある人が居てくれてよかった。


「ヒーロー君や……なんか下が盛り上がり過ぎなんだけど」

「武器の持ち込みは禁止してたよね」


 それは一応は禁止しておいた。ただ、盾の持ち込みだけは許可したけど。

 気をつけはしていたし、実際に1度も無かった事ではあるけど、俺達の戦闘で観客席へと流れ弾が飛んでいく可能性があったからね。それに結界だって張ってあったから、大丈夫だとは思っていたけど、念の為に必要だからって事で盾は許可した。


「見慣れた光景もあるなぁ……あっちでは相撲をとってる」

「主役が変わっちゃったなぁ。楽しそうだから良いんだけど」


 なんだろう。さっきまでお互いの武器で打ち合っていたのに、なんだかもう気分が変わってしまって傍観者になってしまっている。


「ヒーロー君のお友達も、なんか相撲に参加しているっぽいよ?」

「あー……あいつかぁ。なんか獣人の人とがっつりと組み合って、って……おいおい、あいつはいつの間にそんな事を」


 なんかヒーロー君は彼の友と獣人の会話を盗み聞いた様子。そして、その内容というのはとても周りに聞かせられないような話を大声で叫び合っていたらしく、獣人の人が「俺が先に目を付けていた女に声を掛けやがって!」という叫びから始まり、ヒーロー君の友が「あいつは女じゃねぇ!! 男だ!」と返す……みたいな会話を、組合ながら延々とやっているのだとか。


 まてまて、ヒーロー君や。君、友達選びは大丈夫か? こう、桃を狙われたりしていないか心配になるんだが。いや、もしかしたらヒーロー君もそっち側……。


「待て! 俺にそんな趣味はない!! そもそも、俺には可愛い子供が居るんだぞ!!」

「いやいや、戦国武将とか、妻や子が居てもさ……ほら、戦場のアレソレや、裏切りの防止とか、慣習ってモノがあった訳で」

「今の時代にそんな慣習はない! 俺は妻子一筋だ!」

「一筋の割りには、その対象が複数有るんだよなぁ」


 少しだけヒーロー君から距離を取る。すると、そのほんの少しに気がついたのか「俺は違う!」と叫びながら躙り寄ってくる。


 距離を取る。距離を狭めてくる。距離を大きく取る。大きく取った距離を一足飛びで詰めてくる。


「行動が怪しいわ!!」

「信じてくれよ! 俺はあいつと趣味が違う!! いや、そもそもあいつも女好きだったからな! 俺にいつも怨嗟の声を上げていたからな!! あ、因みにお前もその怨嗟の対象だったぞ」


 もしかして、その念が行き過ぎた結果……そして、近くにいる念の相手の桃を付け狙うように。


「なってない! 俺は、一度も、狙われていない!!」

「じゃ、狙っていたと?」

「俺が狙っているのは嫁の桃だ!!」


 おー! きっぱりと言い切った。実に清々しいんだけどさ。その叫び……。


「皆に聞こえているよ? ほら、君の嫁さんの顔を見てみ」

「……あっ」


 1名は般若顔。1名は真っ赤になって伏せている。他は……うん、なんか腹を抱えて笑っていたりするのも居るなぁ。


「これ、説教コースじゃね?」

「あ、あぁ……間違いなく、正座で耐久コースだ」


 どうやらヒーロー君はしっかりと嫁の尻に敷かれている模様。ま、良かったんじゃないか? その狙っている桃の下敷きになるわけだし。



 ともあれ、なんか空中で膝を抱えながらガクブルしだしたヒーロー君は放置するとして、このお祭り騒ぎはいったい何時になったら終わるんだろうね? なんか、屋台まで用意され始めているし……あ、なんか神系の方々が相撲観戦をし始めている。

 これは、間違いなく夜になっても終わらないだろうなぁ。うーん、今夜のご飯は屋台飯しだろうか。ま、それはそれで美味しいから良いけど。

ブックマークや評価等ありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ♡...*゜

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― 新着の感想 ―
[一言] 闘技場でも作って獣人にプロレス技を覚えさせて、リアルタイ○ーマスクとか鉄拳のKIN○とかw
[一言] 昔も今も地雷を自ら踏みに行くスタイル… 流石我らがヒーロー君だww
[一言] どっちにしろヒーローくんにはご褒美やんけ!w
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