出発前のあれこれ
準備は万全! と、俺は空のアイテムボックスを背負子に乗せて背負っていく。
と言うのも、沢山の資材回収も今回の目的だからね。目指すは塩入り竹筒99個に新しい素材。あぁ、あの〝くさ草〟もそろそろ回収しておきたいかな。ついでに、ボックスフィッシュの箱も幾つか欲しいかな。アイテムボックスはいくつか欲しいしね。
「とりあえず、移動先は旧拠点付近を目指すって感じで良いかな」
「……もち」
「そうだね。あの場所もどうなったか調べておきたいしね」
因みに、最後のメンバーとして選ばれたのは春野さん。
ヒーラーという回復要員ではあるけど、どうやら支援系の魔法も覚える事が出来たらしく、彼女の魔法で若干ではあるけどスペックが向上するんだよね。
身体能力が少しあがったり、スタミナの回復量があがったり。だから、長距離の移動にはもってこいと言う事みたい。
「はは……ただ、それが分かったのってさっき振り忘れてたポイントを振ったからなんだけどね」
あぁ、春野さんの言っている事も分からなくはない。
俺の場合は記憶からすっぽ抜けていたから振り忘れたんだけど、彼女の場合はレベルアップが楽しくなっちゃって、スキルポイントの事を忘れてしまったパターンだろうなぁ。
それで、春野さんと秋山さんのどっちを選ぶかとなった時に、スキルを見て決めよう! と言う話になりスキルチェックをしたら、その振り忘れを見つけたと言う訳だね。
「……エリカはドジ」
「な!? 雪が言う? ちょ、ちょっとだけレベルアップに集中しすぎただけなんだから」
「……ボクドジじゃない」
なんだろう。この二人による、そこはかとなく不安を覚えてしまうようなやり取りは。
「一応調査に行く訳だから、集中のしすぎとか気を緩めすぎには気を付けような」
「……あい」
「う、うんそうだね。気を付けないと」
大丈夫だとは思うけど……いや、大丈夫じゃないかも? だって冬川さんは見た目に釣られ、ふらふらっと敵に近づいて行っちゃう子だし。
「……大丈夫。ネズミを囮にする」
「ちぅ!?」
「……間違えた。……ネズミに確認させる」
「ち、ちぅちぅ!!」
何やらネズミが抗議している様に見えるよ。てか、精霊なのに蛇に噛まれたりするのかな? 精霊だから実体とか関係ないはずで、ダメージを受けたりしないと思うんだけど。
しかし、この余りにも必死なネズミの姿が、なんだかとっても可愛く見えるね。
なんて事を思っていると、なにやら春野さんがブツブツと独り言を発していた。
「えっと、食料よし、杖よし、は、ハンカチは……」
どうやら最終チェックをしているみたい。
確かに数日間の移動になるだろうから色々と持っていくモノは必要なんだけど、そこまで沢山持って行く訳じゃない。
「春野さん、食料はちょっと多すぎじゃないかな? 正直現地調達も出来るから最小限で大丈夫だよ」
「あ、そっか。ウサギとかイノシシも居るんだっけ」
「……海魚」
うんうん、魚も取る予定だからね。だから食料には困らないと思う。むしろ必要なのは別の物で。
「重要なのはポーションと投擲系のアイテムかな。特に麻痺筒はたっぷりいると思う」
後は逃げるのが必要になった時の血を混ぜた肉団子。これを遠くに投げたら、敵もそっちに駆けて行くから撤退しやすくなる。当然行かない子も居るんだけど、そこは数が減っているので討伐するなり麻痺にさせるなりと、どうにでも出来るかな。
「と言う事で、筒用のホルスターはしっかりとうめておいてね」
「えっと、こっちが麻痺でこっちが肉団子で……えっと毒もあった方が良いかな?」
「長時間の戦闘を行う訳じゃないから毒はいらないかな。毒よりも焼夷筒の方が良いかも、森の中では使いにくいけど、切り札にはなるし海辺では使えるから」
「……ボクも持つ」
筒用のホルスターはベルトタイプとポーチタイプを用意した。
ベルトタイプは、ショットガンの弾みたいな感じで差し込める感じのモノで、戦闘時に直ぐ投げる事が出来る。ただ、外に露出していると言う事もあって、破損しないように注意する必要があるかな。
ポーチタイプはウェストポーチの箱版みたいなもの。ベルトタイプよりも収納が楽なんだけど、取り出すのに少し時間が掛かる。ただ、こっちはしっかりと収納されている為に破損などの可能性がぐっと減る。
「後は、冬川さん。水筒と間違えないようにね」
「……ドジチガウ」
なんか冬川さんがロボみたいな言い方をして来たなぁ。
いやでも、此処は念を押しておくべき内容だったからね。何気なく手にとって中身を飲んだら麻痺しました! なんて事になったら大変だし。……一応、麻痺を消すポーションは持っていくけど、これはあくまで事故防止の為だし。
「あ、焼夷筒はポーチタイプに入れておいてね。こっちは破損してしまった際の対応が厳しいから」
「了解です! 麻痺だったら確かにポーションで消せるんだよね」
「そうそう。だから、ベルトタイプには麻痺と肉団子とポーション辺りかな? 間違えて取らないように配置だけは注意してね」
「……大丈夫だもん」
そんなやり取りをしながら俺達はしっかりと準備を終わらせた。
そんな俺達を、遠くから楽し気に見ている夏目さんと秋山さんが居たのだけど、彼女達は終始こちらへ口を挟むことは無かったな。と言うか、二人だけで何か内緒話でもしていたように見えた。
「さて、そしたらそろそろ出発しようか」
「だね。これ以上やってたら出発が遅くなっちゃう」
それじゃぁ出発しようか。そうなったタイミングで夏目さん達が俺達の方へと近づいて来た。
「皆気を付けてね」
「大丈夫かしら? 雪は勝手に行動しないように。エリカはしっかりと雪を見ておくのよ」
「……むぅ」
「あはは……大丈夫だよ。うん、きっと」
「エリカ、それ大丈夫だって考えて無いよね? 断言してないし」
「……皆がいじめる」
「言われたくなければもう少し周囲を注意深く見る事! もうヘビイチゴに騙されたら駄目よ?」
「……もう覚えた」
あ、秋山さんは冬川さんのお母さんかなにかだろうか? こう、称号に〝おかん〟とかって書かれていたりするかもなぁ。
「望月君……何か失礼な事でも考えて無かったかしら?」
「いえ、何も考えておりません」
「そう? なら良いんだけど。けっして「おかんだ」とか言わないでね?」
あぁ、これは何度も言われた経験があるって事だな。特に揶揄われる感じで。
属性〝おかん〟だと思ったのは正しかった訳か。とは言え、本人はソレを誉め言葉だと思ってないようだから、ここはギュッと口を紡いでおこう。嫌がる事はしない方が絶対に良いからね。
「……ママ?」
「ゆーきぃー……アナタがボケてどうするのよ! これは肉体言語が必要かしら? いえ、折角魔法と言うモノがあるのだから、土の壁と天井で真っ暗な部屋に閉じ込めるというのも……」
「……ご、ごめんなさい!」
お? 初めて冬川さんの声に抑揚っぽいものが付いた気がしたな。なんとなくだけど、棒読み感な喋り方に変化があったよな。
「雪が珍しく感情的に……」
「雪は暗い所が苦手なんだ。ふーん」
なにやら春野さんと夏目さんも驚いている様だけど、夏目さんからはただならぬ雰囲気が……何か悪だくみでもしているのかな。
「と、とりあえず。そろそろ出発して良いかな?」
「あ、そうだったわね。望月君時間をとっちゃってごめんなさい。ほら雪! しっかりと働いてくること! そしたら、今回の事は水に流してあげるわ」
「……がんばる」
うん、絶対に口にはしない。そう心に刻み付ける光景だったけど……やっぱり秋山さんって冬川さんのお母さんだよねぇ。
彼女のお陰で、この後楽な移動になりそうだけど、少し恐怖をおぼえちゃった……って、秋山さんこっちを睨まないでください。俺はまだ何も口にしていませんから。
顔を見る事は出来なくても、視線とかその視線に込められた意図は察する事が出来るんで……。あぁ、背筋が思いっきり冷えたよ。
ブックマークに評価などなど、いつもありがとうございます(o*。_。)oペコッペッコー
実はみんなのお母さんな秋山さん。流石委員長タイプとでも言うべきでしょうか。特に雪ちゃんはお世話になっているようです。
彼女達の個性が随分と出て来ています。と言うのも、彼女達も随分と癒されたと言うか慣れたのでしょうね。景の事を他とは違うと認識しているのも大きい要因でしょう。まぁ雪ちゃんだけは常にマイペースですが。
とは言え、この地に来る前のノリやらやり取りが出来るようになったようです。もちろん景の近くでやっても大丈夫になったと言う事も理由の一つでしょうね。




