次のステップ
えっと……あれ? ここに来てからどれだけ日にちが経ったっけ。
ある程度までは数えていたけど、少し前からは忙しくてばったんキューと倒れたりしていて数える暇が無かった。ただ、確か拠点を移したのが四週目に入ったぐらいの頃だったハズだから、恐らく一ヶ月と数日といったぐらいかな。
まぁ、スマホをチェックしたらすぐわかるんだけど、ついつい確認をし忘れてしまうんだよね。
「てか、もう一ヶ月たったのか。なんというかあっという間だったな」
未だに帰還する方法が見つかっていない。と言うか、そのヒントすらない。
食料は順調に集まっているし、雨季に入ったみたいだけど土地的に問題なんて無い。水は全部流れて行ってくれるからね。
雨を集める装置を作ったから、水の貯蓄も十分に確保出来る様になった。本当なら井戸を掘りたいけど、今はまだ手が出せていない。他の事が忙しいからね。
拠点内の施設も充実してきている。農地を用意して其処に芋とかを植えたし、跳ね橋もしっかりと準備出来た。
そうそう! 嬉しい事に養鶏にも着手した。鳥小屋の中では鶏が6羽ほど「コケコケ」と鳴きながら、歩き回っている。なので遂に卵もゲットだぜ! と言う事なんだけども、卵は一応鑑定しておかないといけない。
と言うのも、無精卵か有精卵で鶏達の反応が違うからね。無精卵ならとっても問題無いけど、有精卵だと……暴れ具合がヤバいんだ。それはもう、武闘派か? と問いたくなるレベルで、卵泥棒に蹴りを入れる。なんなら、あの羽で思いっきりはたかれるし、嘴で「目玉繰りぬくゾ!」と言わんばかりに突きにくる。
なので卵を回収するのは俺の仕事なんだよね。鑑定が出来るの俺だけだし。
ただ、そのお陰で美味しい卵料理を食べる事が出来る様になったのは大きいな。エネルギー源としても卵は優秀だし。
「……だけど残念」
「あー……ご飯が無いし、もしあったとしてもTKGが出来ないからな」
「望月君、よく雪の言いたい事分かったね?」
「そりゃ、卵をみてがっかりしていたからなぁ」
ヒントがたっぷりあったからね。それなら俺でも冬川さんの言いたい事は予想ぐらいつく。
卵は有っても、残念ながら日本的な処理をしていないので生で食べるのは危険なんだよな。
ポーションをぶっかけたりでもしたら大丈夫かな? とか思ったけど、それはコスト的に高くなるし、ポーションをかけた事で卵に付着してる菌が頑張る可能性もある訳で、はっきり言って怖くてできない。サルモネラが怖すぎる。
なので、もし作るなら菌を何とか出来る液体でも作るべきなんだろうね。と思いつつ、今は全く着手していない。
と言うのも。
「えっと、今のレベルが21か……結構がんばったけど、上りが悪くなってるなぁ」
「……ボク16」
「私も16で桔梗が17かな。で、エリカは……」
「ふっふっふ。私も15になったよ!」
Vサインをしながらドヤる春野さん。うん、彼女は1人だけ1桁で悔やしい思いをしていたからね。
止めを刺した俺が言うなよ! って話なんだけど、その分パーティーシステムが来てからは恐ろしいほど頑張っていた。
俺がお願いした採取もそうだけど、狩りでもネズミに対して的確にアイテムをつかってフォローをしていたのだとか。
「麻痺のシャボンボムがかなり便利みたいで良かった」
「血入りの撒き餌を使って集まって来た数でも普通に対処出来たからね。麻痺は狩りの革命だよ!」
「喜んで貰って何より。で、麻痺った奴を冬川さんは殴れたのかな?」
「……もち」
今度は冬川さんがVサインでドヤ顔。と、まぁ顔は見て無いんだけど、モーション的にドヤっているのは分かる。
「雪……普通にみたら表情が殆ど無いから」
「……む、心外」
「雪は満面の笑みのつもりみたいね。まぁ、私達には分かるのだけど」
無表情のドヤ顔ってどんな感じなんだろうね。なんかちょっと見て見たい気もするけど、顔を見るのはまだ受け付けないからなぁ。こう、地面やら空やらを見るので精いっぱいだ。あぁ、空が青くて天気が良いなぁ。
さて、話を少し変えるとして。
「で、割とみんなレベルが上がったみたいだけど、そろそろ次のステップに入れるんじゃないかな」
「そうね。次となると……」
女子達がお互いの顔を見ながら目で会話でもしているのか、彼女達は黙っている。
言うべきか言わないべきか……そんな事でも考えているのだろうか。
「あー……そろそろ塩の補充も必要かな? 海側に一度行くべきかもなぁ」
「あ! それなら護衛に私がついて行くよ!」
「エリカはヒーラーでしょう? 護衛と言うなら戦力にならないと」
「……ボク?」
「いや、ここは私が」
「……とりあえず、海の様子を見に行くだけだから、全員で行く必要はないかな。ってか、跳ね橋を操作する為にも最低一人は残って貰わないと」
とりあえず調査と言う事で、大人数で行く必要は無いからね。
なので調査に使える何かが有ると良いんだけど……さて、何かいい手段ってあったっけ?
「……ん、ボクが適任」
「雪、その心は? しっかりとした理由なのよね?」
「……召喚術」
「あぁ、雪の召喚術って解放されたのか! で、一体何が召喚出来るのよ?」
夏目さんが冬川さんに一体どんなことが出来るのか? と問うと、冬川さんが本を手にパラリとページをめくった。
「……召喚・地精霊レベル1」
冬川さんがぽつりと何か呟くと、本が光り、地面に何やら魔法陣の様なものが描かれ、その魔法陣からちょこんと小さな……ネズミ? が顔をだした。
「チゥ!」
やぁ! と言わんばかりに手を挙げるネズミ。見た目はあの爪鼠にそっくりなんだけど、表情は凶悪では無くどこかしらかわいらしさすら感じ、実にフレンドリーな態度だし、そもそも爪鼠より小さい。そしてまた、このネズミには爪など無い。
「ネズミの精霊?」
「地精霊っていってたけど、ノームじゃないんだね」
「確かに地属性と言えば普通はノームよね。でもこの子はネズミ……倒したモンスターが関係しているのかしら? 後、レベルと言うのも気になるわね」
確かにそれも気になるが、今もっと気にしないといけないのは別の事だ。なので俺はその事を冬川さんに聞いてみようと思う。
「その精霊だけど、戦闘能力と召喚時間はどんな感じ?」
「……弱い。……時間は……」
ん? と言った感じで首をかしげる冬川さん。同じように召喚されたネズミも横に頭をコテン。う、動きがシンクロしている。
「ま、まぁ。レベル1だから弱いのは当然よね。時間に関しては今から計るしかないかしら? 何となくでも分からないのよね?」
「……桔梗正解」
「でも弱いんだ。となると戦力としては数えない方が良さげ?」
「んー……でもこの子の大きさとかを考えたら、戦わせると言うよりも探索させる感じじゃないかなぁ? スパイとしては優秀だと思うよ」
「……だから、ボク」
「あぁ! そう言う事ね。確かにこの子がいるなら雪をメンバーに入れるのは最適よね」
ネズミを使って相手の陣地を調査するかぁ。確かにネズミであれば見つかっても問題はそこまで無いよな。
爪鼠ならモンスターだから大変だ! となるけど、このネズミは爪なんて無いし、動物のネズミだと誤認される可能性が高いよね。ネズミが出たって事で慌てる事は有るかもしれないけど。
「因みに、召喚した存在の情報は分かるのか?」
「……もち」
「それって視覚かしら? 聴覚? それとも感覚? どんな情報かで重要度が変わるわよ」
「……んー、五感?」
「それって全部って事? だとすると、ネズミが叩かれたら雪もやばいじゃない」
「……カット」
うーんっと、コレはアレかな? 五感全部の情報を共有出来るけど、その感覚をカットする事も可能と言う事かな。
そうなると、相当召喚術って便利だよね。あぁでも、確かに召喚術を使えるようになるまでの大変さを考えたら……それぐらい出来てもと思っちゃうかなぁ。
「もう一つ聞くけど、召喚術が解放されるまで叩いたネズミの数は?」
「……3桁」
うん、大変すぎるだろう。それなら、それだけの性能が有ってもと本当に思えてしまう。いや、もしかしたらネズミが相手だから必要数が多かっただけかもしれないけど。
「ともあれ、目と耳は手に入れた訳だから、最悪冬川さんだけでも問題は無いんだけど……保険は必要って事でもう一人にも付いて来てもらうのが良いかな」
「私は拠点の防衛に回った方が良いかな。弓を使うなら高い所からってのがセオリーだし」
「エリカか私ね……火力を求めるなら私だけど、万が一の事を考えるとエリカかしら。あと、雪のサポートはエリカが一番よね。総合的に考えると、どっちを選んでも問題無いわね」
「桔梗……雪のサポートって……」
「……遺憾」
うんまぁ、今回は調査だけだしね。なんなら、ただ塩の確保にいくだけだから! そんなに気合を入れなくても良いんだよっと、口では言っておこうかな。
ブックマークに評価などなど(人´∀`)アリガトー♪
塩の確保も大切なので当然の話なんですけど、そのついでに色々海側を調査してしまおうと言う魂胆。そしてその中にはもちろん……。
まぁ、海までの距離が距離ですからね。当然日数が掛かる事ですので、色々一気に調べてしまおう! と言う事ですね。




